単一食材プログラム 10周年を迎え、クリュッグの未来を見つめる。
Gourmet 2024.12.19
2015年からスタートした「クリュッグ × 単一食材プログラム」。毎年ひとつの食材にフォーカスし、至高のペアリングを追求して10年目を迎えた。6代目当主のオリヴィエ・クリュッグに、プログラムの意義を聞いた。
ブドウ畑の区画ひとつひとつに向き合い、その個性を見極め、アッサンブラージュ(ブレンド)。日々変わる自然と対峙しながらも、毎年完璧な味わいを生み出すシャンパーニュ、クリュッグ。
「ある時シェフたちと話す場で、『こんなことをやってみたらおもしろいんじゃない?』と盛り上がり、突き詰めた結果生まれたのが『クリュッグ×単一食材プログラム』です」と誕生秘話を語るのはオリヴィエ・クリュッグ。メゾンの6代目当主を務め、世界にクリュッグの哲学を発信し続ける伝道師でもある。
"PLAN"ではなく"PLAY"、つまり遊び心から始まった企画。取り組むのはセラーマスターのジュリー・カヴィルと世界のトップシェフたち。1回目のお題はポテトだった。その後エッグ、マッシュルーム......と続き、10年目となる2024年はフラワーが選ばれた。キャビアやトリュフといった高級品ではなく、身近ゆえに見過ごされてきた食材。だからこそ料理に与える影響は大きい。オリヴィエには、料理人とのセッションを重ねる中で記憶に残るストーリーがある。
「22年のテーマであるライスは日本を舞台に各国のシェフが集結しました。長らくクリュッグアンバサダーシェフを務める日本料理 かんだの神田裕行さんも参画していたのですが、彼が水田ごとの土をボトルに入れて見せてくれて。その違いが非常に興味深かったです。農薬を使っていないサステイナブルな水田の土は、私たちのブドウ畑とそっくりだったんです。神田さんが大切に思うのは米、私の場合はブドウですが、どちらもそのオリジンは土です。テロワールについて熱く語るきっかけとなりました」
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24年のテーマ、フラワーでは、3ツ星を獲得して間もないフレンチレストラン、セザンのダニエル・カルバートも2年連続で参画している。
「ダニエルの料理は、緻密で強さがあります。とても豊かな味わいだけれど、それを押し出しすぎず、爽やかにまとめています。何かが突出することなく、全体でのハーモニーを大切にするメゾンのシャンパーニュ造りの姿勢と見事に重なります」
ひとつの食材に向き合うことで生まれる料理は、クリュッグが生まれる過程と通ずる。小さな遊び心から始まったプログラムは、たくさんのトップシェフたちのクリエイティビティを刺激し、引き寄せ、大真面目な"遊び"に昇華した。
History
2015年
ポテト
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2016年
エッグ
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2017年
マッシュルーム
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2018年
フィッシュ
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2019年
ペッパー
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2020年
ワールド・オブ・クラフト
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2021年
オニオン
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2022年
ライス
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2023年
レモン
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2024年
フラワー
Olivier Krug
クリュッグ家6代目当主、メゾンディレクター。1990年代、日本に2年間駐在した経験があり、日本の食材にも精通。手にしている絵画は、創業者のヨーゼフ・クリュッグを描いたもの。
*「フィガロジャポン」2025年2月号より抜粋
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