日本酒好きなら、いや、お酒好きなら「IWA(イワ)」と聞いてピンとくるはず。
ドン ペリニヨンで5代目醸造最高責任者として28年活躍していたリシャール・ジョフロワが、引退後にネクストステージとして選んだのが日本酒業界への参入。2020年に日本酒ブランドIWAを立ち上げた。
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お披露目の舞台となったのは、京都吉兆 嵐山本店。親日家で知られるジョフロワは、もちろん京都にも精通。徳岡邦夫総料理長とも親交があったことから、この場所が選ばれた。
(※京都吉兆のきちの字は土に口)
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向附、煮物椀と続く料理に合わせ、「IWA 5 アッサンブラージュ5」が供される。突出しすぎない爽やかなフルーティな香り。するすると身体に染み入る美しくピュアな味わい。20種以上の原酒をアッサンブラージュ、23年6月から瓶内熟成した一本は、口に含むと綺麗な球体が生まれるような感覚に。同時に頭の中に「ハーモニー」という言葉が自然と浮かぶ。
京都吉兆の料理とのペアリングは言わずもがな。驚きだったのが向附や強肴に登場したキャビアとの組み合わせ。なんとこのキャビア、天然醸造醤油と利尻昆布で熟成させたオシェトラキャビアで、京都吉兆のオリジナル。とろりとした食感の中から醤油の旨味と出汁の風味があふれる。この旨味をさらに引き立て、余韻を残してくれるのは、日本酒ならではだ。ジョフロワは「ワインだとどうしても、ワインが前に出てしまうけれど、IWA 5は20種以上の原酒をアッサンブラージュし熟成させることにより、キャビアとまったく同じ位置で引き立て合う」と、その卓越したマリアージュを説明する。
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2021年にリリースされた「IWA 5 アッサンブラージュ2」に関しては、「熟成により最高の状態を迎えた」とジョフロワも太鼓判。冷酒、ひやもおすすめだがお燗、それも55度がベストと、こちらもテイスティング。立ち上がるような香りとじんわり広がる米の旨味が、食欲をそそる。熱々の石にさっと焼き付け、京都吉兆オリジナルキャビア醤油を添えて食べる伊勢エビやイカは、温度の同調もあって特にマッチ。その後に登場した華やかな八寸とも絶妙なマリアージュをみせた。
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年々異なる魅力を伝えてくれるIWAと素晴らしい料理とのマリアージュ。IWAは単体でも、温度や飲み方の違いでさまざまな表情を見せてくれるが、料理と合わせるとさらに進化することを実感。
「2020年のリリースから、ここまでやれたのは"日本への愛"です。リッチでありながら飲みやすさも追求してきましたが、何よりも"調和"が大切。IWAにとっても、世界にとっても」とジョフロワは締め括った。
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ハーモニー(調和)を感じさせてくれるIWA 5は、新しい年を迎えるのにふさわしい日本酒。一年の始まりを、きっと美しく彩ってくれるはず。
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幼少期よりアジア、欧米、太平洋の島々などを旅し、モンゴルの羊鍋からフランスのエスカルゴまで現地の料理を食べ歩く。特に香港は、多い時で年4回のペースで通うほどの“香港迷”。食べ過ぎ飲みすぎがたたり、28歳で逆流性胃腸炎を発症。2021年にJ.S.A.認定ワインエキスパートを取得。