ソウルバンド「WONK」のボーカルであり、料理人としても活動する長塚健斗。
東京・清澄白河にあるナチュラルワインバー「WINESTAND TEO」のオーナーでもある彼が、ワインの向こうに浮かぶ風景や、その余韻をーー料理と音楽、そして言葉で描いていく。一本のワインから立ち上る感覚をたどりながら、ひと皿と、それに寄り添う5曲のプレイリストを届けていく連載、長塚健斗の「酔いと余韻」。今月は、トスカーナのサンジョヴェーゼを使った、夏に寄り添うロゼワインから。
トスカーナ南部の陽光を浴びた、紅茶のような色合いのロゼ。
グラスに注いだ瞬間、軽やかな赤かと思った。でも香りを吸い込んだら、その印象はすぐに変わった。ふくよかで、芯がある。酸がきれいに立っていて、タンニンはおだやか。
なんだか、声を荒げないタイプの情熱を感じる。この酸には、タコが合うと思った。ただのカルパッチョでもいいけど、できることなら炭火で焼き目をつけたいものだ。ぶつ切りにして、まだ温かいジャガイモと一緒に。レモンを少しだけ強く絞って、ニンニクとオイル、そしてハーブや少量のスパイスを重ねていく。
少し、アンチョビのコクも加えて。イモの甘さとねっとり感が、酸とハーブの立ち上がりを受け止めてくれる。そしてタコの弾力とオイルの香りが、そのまま余韻にスライドする。そんなイメージが湧いてきて、こんなレシピを考えた。
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太陽の下でロゼと合わせたい、タコのガリシア風。
【材料】2〜3人分
• 茹でダコ(脚の部分) 100g
• ジャガイモ(メークイン中サイズ) 4個
• フェンネルシード 1.5g
• アンチョビフィレ 2枚
• ニンニク 1/2片
• イタリアンパセリ 少々
• レモン果汁 3/4個分
• レモンの皮(表面を削ったもの) 1/4個分
• 赤ワインビネガー 15ccほど。好みで調整してください。
• エクストラバージンオリーブオイル 適量
・塩・黒胡椒 各適量
【作り方】
1.下準備
タコは下茹で(炭火があればぜひ焼いてみて)して、冷めたら薄切りにしておく。市販の茹でダコでもOKだが、温める程度に軽く塩茹でするのもあり。
じゃがいもは皮ごと茹でるか、ラップをして電子レンジで柔らかく火を入れる。串がすっと通ればオッケー。粗熱が取れたら皮をむき、食べやすい大きさにカットする。アンチョビは包丁で細かく刻み、ペースト状にする。
2.香りの準備
ニンニクをすりおろす。フェンネルシードはフライパンで軽く乾煎りし、香りが立ったら粗く刻む。パセリも細かく刻む。
3.全体を和える
タコとじゃがいもを温かいうちにボウルに入れ、赤ワインビネガーをふりかけてなじませる。
刻んだアンチョビ、すりおろしニンニク、刻んだフェンネル、パセリ、レモン果汁、レモンの皮を加え、全体をよく和える。
たっぷりのエクストラバージンオリーブオイルを回しかけ、さらに混ぜる。
4.仕上げ
塩と黒胡椒で味を整える。ポイントは、ビネガーとレモンの酸味をしっかり効かせること、それに負けないだけの塩気とアンチョビのコクを重ねること。
【ポイント】
良質なタコを選ぶことで、仕上がりのおいしさが格段に変わります。ジャガイモはホクっとしつつも煮崩れしにくいメークインがおすすめ。
「トスカーナの海風」を感じる、爽やかで奥行きのあるおつまみに仕上げてください。山で生まれたこのロゼと海をイメージした、このおつまみでトスカーナを感じてください。
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ワインが導く、季節と感情の余韻。
ペアリングって、「組み合わせ」じゃなくて「行き先」なんだな、って思う。このロゼは、キンと冷えてるときの緊張感もいいけど、少し温度が上がってからのほうが、花のような甘やかさがふわっと立ち上がる。
その一瞬が、なんとも艶っぽい。白でもない、赤でもない。ちょうどその中間にあるワインが見せる、揺らぎのようなニュアンス。それが夏の夕方の光と、タコのやさしい塩気に、すごく似合っていた。「紅茶煮なんかもいいな」とふと思った。
やさしく発酵した茶葉のような香り、軽い苦味、穏やかな渋み。真鯛の昆布締めなんかも合いそうだけど、
この日はただ、縁側みたいな場所で、のんびりタコをつまみたかった。ワインが導いてくれる食材の向こうには、季節と感情の余韻がある。
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今回のプレイリスト:
WINESTAND TEO
ナチュラルワイン専門ショップ&バー
東京都江東区常盤1-4-9
(清澄白河駅 徒歩8分/ 森下駅 徒歩9分)
営)17:00〜01:30 L.O.(金)
15:00〜01:30 L.O.(土・祝前日)
15:00〜22:30 L.O.(日、祝)
休)月〜木、祝後日 ほか不定休あり
※年末年始、大型連休は営業時間変更となる場合がございます。
店舗公式Instagram(@winestandteo)をご確認ください。
※予約(貸切除く)・DM・現金支払いは受け付けておりません。
※貸切のお問い合わせはメールにて
Instagram

1990年東京都生まれ。4人組ソウルバンド「WONK」のボーカリスト。料理人としての一面も持ち、大学在学中よりイタリアンやフレンチの有名店出身のシェフの下で本格的に修行を開始、都内ビストロの立ち上げに料理長として携わる。現在も商品開発やイベントを開催し、CHEF-1グランプリ2023にも出場。所属レーベルEPISTROPH では「winestand TEO」「Bar phase」2つの飲食店をプロデュース。
instagram: winestand.teo