【フィガロジャポン35周年企画】 生物多様性、自然体なワインを目指すボルドーへ......ソムリエ・松本有佑子が感動した次世代の生産者たち!
Gourmet 2025.08.20
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伝統にとらわれることなく、新しい試みにも積極的に挑戦する次世代の造り手たち。環境問題にも敏感な彼らのなかには、サステナブルやオーガニックなど自然や生態系への負荷を最小限に抑えたブドウ栽培、ワイン醸造に取り組む者も多い。そうしたいまのボルドーの魅力を、前回に続きソムリエの松本有佑子がレポートする。

確実にフランスのワイン産地に影響を及ぼしている気候変動。ボルドーもその例外ではない。気温の上昇ばかりでなく、大雨や干ばつ、遅霜に雹害、カビ系の病気の発生などさまざまな形で災厄を招く。2019年に暑さに強い外来品種や病気に強い交配品種がボルドーで認められたのは、こうした気候変動への対応だ。
気候変動の大きな要因は環境破壊。ボルドーが今後も銘醸ワイン産地としてあり続けるためには、環境への負荷を抑え、生物多様性を促し、省エネや脱炭素を意識することが大事。大西洋に面しているため湿気の影響を受けやすいボルドー地方でオーガニック栽培を実践することは決して簡単ではないけれど、果敢に挑戦し、EUのオーガニック認証を取得したシャトーもある。また、国のサステイナブル認証であるHVEレベル3(高度環境価値レベル3)を取得するシャトーは毎年増え続けている。
ナチュラルな考え方はワインのスタイルとも結びつき、肩肘張らない自然体のワインを生み出す。松本さんは次世代の造り手との邂逅を求め、シャトー・カンカルノンに向かった。
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「BBQやピザに合わせて楽しめる軽やかな赤ワインも」|シャトー・カンカルノン
甘口貴腐ワインの産地として知られるソーテルヌのエリアにあり、AOC(※後述)ソーテルヌのほかAOCグラーヴの赤ワインも手がけるシャトー・カンカルノン。ところが、グラーヴ赤の「ウイ・デュ・シャトー・カンカルノン」はこのエリアの従来の赤ワインとは一線を画すと、松本は言う。
「色が濃いからきっと重厚で、アルコール度数も高めのワインだろうと思って口に入れたら全然違いました。寝かせなくても、いま開けてすぐに楽しめる、華やかな感じのワインです」

造っているのはマチルドとガブリエルのアゼレット姉弟。マチルドはパリでマーケティングの仕事に就き、ガブリエルは保険会社に勤めていた。ボルドーのシャトーは母方の実家で、ペルー出身の父が母を追いかけて80年代後半にフランスに移住し、祖父からワイン造りを学んでシャトーを引き継いだ。数年前に世代交代の時期と考えたマチルドは、弟をカフェに呼び出し意見を求めると、むしろガブリエルのほうが乗り気だったという。
「マチルドさんが言ってましたが、フランスでもいまどきの若い人は重い赤は飲まない。BBQやピザに合わせて楽しめる軽やかな赤ワインを求めているそうです」

そうして生まれたのがこの「ウイ」なのだ。彼女たちはソーテルヌも造っているが、甘味がずしんと重くなく軽やかな仕上がり。2023年からはロゼワインも造り始めた。
サステナビリティへの関心も高く、ボトルは再生ガラスを使ったもので、リサイクル、リユースを信条として、ボトルの回収までしている。
ラベルもウィットに富み、2018年ヴィンテージのそれにはステッキをもつ気取った雄鶏の絵。雄鶏はいうまでもなく、フランスの象徴である。「Oui(ウイ)」の下には英語で「French Elegance in every sips(ひと口ごとにフランスのエレガンスが漂う)」とある。
新たな世代が新しい感覚のボルドーワインを生み出している。

ウイ・デュ・シャトー・カンカルノン 2018|AOP Graves
750ml ¥2,640/恵比寿ワインマート
※AOC...「Appellation d'Origine Controlee」の略で、直訳すると「原産地統制呼称」。 フランスの「産地名」を名乗るワインをつくる場合、使用するブドウ品種やアルコール度数など、決められた基準をクリアすることが定められている。「地方>地区>村名」の順に規定が厳しく、該当するワインが規定のどこに属するかを指す時に「アペラシオンは〇〇」と呼び習わすことも。アペラシオンについて詳しく知りたい方はこちら。
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90年代に「シンデレラワイン」と呼ばれた革新派が、さらなる飛躍。|ドメーヌ・ヴィルジニー・テュヌヴァン
90年代、ジャン・リュック・テュヌヴァンは、ガレージワイン「シャトー・ヴァランドロー」により、10年足らずでワイン界にその名を知られる人物となった。2006年、彼は娘のヴィルジニー・テュヌヴァンと、ラランド・ド・フロンサックに位置するドメーヌ・ヴィルジニー・テュヌヴァンを購入。ブドウ園、収穫、醸造はサンテミリオンのシャトー・ヴァランドーが監督し、高品質なワインを生み出している。

本家のシャトー・ヴァランドローもさらなる品質向上を目指して手を緩めず、次世代型の醸造施設に刷新。そのサステナビリティに配慮した設計に松本も感心した。
「コンクリートを使わない石積みの外壁もすごいと思いましたが、中を案内されてさらに驚きました。樽熟成庫は遮熱効果の高い設計で、真夏でも涼しくエアコンがほとんど要りません。それに半地下の構造は自然光を取り入れることができるので、昼間は照明が不要というエコロジカルな配慮がとられています」

さて、テュヌヴァンのワインでセレクション50に選ばれたのが、AOCボルドー・ブランの「ヴィルジニー・テュヌヴァン 2023」。セミヨン70%、ソーヴィニヨン・ブラン30%の辛口白ワインだ。

「クリスプでミネラルも感じられ、それに続くように滑らかで丸みのある味合い。白ワインは若手女性醸造家のマリオンさんが造っていますが、女性らしい繊細さがワインにも宿っていると感じました」と松本。
「ここでは『バッド・ガール』という白ワインも試飲しましたが、華やかでフローラルなアロマ。名前のわりに優しい味わい。テュヌヴァンさんが奥様をイメージして造ったワインだそうです。きっと優しい方なのでしょうね」

ヴィルジニー・テュヌヴァン 2021|AOP Bordeaux
750ml ¥4,840/ピーロート・ジャパン
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広大なブドウ畑と多様な品種でオーガニック栽培に挑戦。|シャトー・ローデュック
「広い! ブドウ畑も醸造施設もとにかく広くて、どこまで歩けばいいんだろうと取材中に思いました」と、松本がその規模の大きさに驚かされたのがシャトー・ローデュック。ブドウ畑の面積はじつに100ha。東京ドーム22個分の広さがある。100haのうち60haをオーガニック栽培。ブドウ品種はおなじみのカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロ、ソーヴィニヨン・ブランやセミヨンのほか、マルベック、コロンバールも栽培。商品化しているアイテムも、数えきれないほどたくさんの種類があるらしい。

「このシャトーはボルドー市内にある100以上のショップやレストランと直接取り引きをしていて、バスク地方にも卸しているそうです。どのワインもフルーティでバランスよく、いま飲んで素直においしく感じられるタイプ。価格的には日本でも2000~3000円台で売れる、比較的リーズナブルなワインばかりなのもうれしいですね」

このシャトーでセレクション50ボルドー2025に選ばれたワインは「ランヴァンシブル」。フランス語で「無敵」という意味の名前だ。ブドウ品種はメルロ100%。酸化防止剤の亜硫酸を添加せずに醸造している。
「完熟したブドウを丸かじりしたような、みずみずしい味わいの赤ワインです。あれこれ難しいことを考えずに、気軽に開けて飲みたいですね」
温度やグラスなど細かいことは気にせず、それこそ水飲み用のゴブレットに無造作に注いで飲んでもよさそうだ。

「それからこのシャトーで気に入ったのが濃いめのロゼのクレレ。とてもおいしいワインでしたが、日本に未輸入なのが残念です」
真夏の焼肉やBBQなど、ボルドー・クレレが活躍する場面は意外と多いもの。ぜひ日本にも入ってきてほしいアイテムだ。

ランヴァンシブル シャトー・ローデュック 2022|AOP Bordeaux
750ml ¥2,200/都光
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ランド産の羊とともに、サステナビリティを重要視するブドウ栽培へ。|ドメーヌ・ファーブル
「ここはランド産の羊をブドウ畑に放してるんです」
写真を見るとふむふむなるほど、毛を刈り取られたばかりの羊が群れをなしている。羊はブドウ畑の不要な雑草を喰んでくれるので、除草剤に頼らずに済む。また糞も堆肥になるから化学肥料は不要。自然環境に配慮したブドウ栽培ができる。じつはランド産の羊は絶滅の危機にあり、羊の放牧はこの種の減少を食い止め、繁殖を促す目的もある。

AOCマルゴーとAOCオー・メドックにブドウ畑をもち、2017年から国のサステイナブル認証であるHVEレベル3を取得しているドメーヌ・ファーブル。メラニーとジャン=ユベール・ファーブルの若い姉弟が家業に参画し、新たなフェーズに突入した。
スローガンは「反抗と自由」。ワインのラインナップを見ると、AOCマルゴーの「シャトー・ベルヴュー・ド・タヤック」やAOCオー・メドックの「シャトー・ラモット・シサック」などクラシックなワインもある一方、「自然による反抗」と銘打ったアイテムがラベルの斬新さもあいまって目を引く。

セレクション50ボルドー2025に選ばれた「ファーブル・オン・ザ・ロック」も同じ系列の、伝統にとらわれないスタイルに仕上げられたワインのひとつ。石灰岩の小石が散らばる区画のマルベック100%から造られている。
「とても軽やかでジューシーなワインです」と松本。
「ワイン名の"オン・ザ・ロック"は、石灰岩の土壌を表すと同時に、氷を入れて"オン・ザ・ロック"で飲んでもよしという二重の意味が込められています」

醸造を担当したジャン=ユベールから松本が聞いた話によれば、初ヴィンテージの2020年はマルベック本来の熟期まで待って収穫したところ、とてもアルコールの高いワインに。その反省に、翌年からは早めに収穫してアルコール度数を12.5%に抑えることに成功したという。
ジャン=ユベールはオーストラリアなど外国のワイン造りを見聞してからボルドーに戻ってきた。多様な視点がボルドーワインに新たな息吹を与えるに違いない。

ファーブル・オン・ザ・ロックス 2021|AOP Haut-Médoc
750ml ¥3,586、¥3,630/ボニリジャパン、恵比寿ワインマート
ボルドーワインの多様性、楽しさ、奥深さ、サステイナビリティ、そしてコストパフォーマンスの良さ......。「Join the Bordeaux Crew」のコンセプトを映すワインから、松本ソムリエを含む、日本を代表するワインの専門家がラベルを見ずにテイスティング。新時代のボルドーを表現する50本のセレクションをチェックして。
松本ソムリエが訪れたシャトーのワイン5本セットを10名さまにプレゼント!
今回訪れたボルドーの11のシャトーから、セレクション 50に選ばれたクレマン・ド・ボルドー(泡)、赤ワイン、白ワインが含まれる5本セットを10名さまにプレゼント! 多様なボルドーの世界観を味わってみて。

ムートン・カデ × ナタン|AOP Bordeaux
750ml ¥2,200/エノテカ
「味わいは教科書通りの、グラッシーでレモンの皮、フレッシュミント、ジャスミンの花の香りが鼻一杯に飛び込む。口に含むとさらっとすっきりしていてタイトな酸味、少しピリッとするような辛みがあり、それでも液体の柔らかさや軽さのおかげで飲みつかれることがない......なんともテーブルフォワードな一本。日本に帰ってみて、こちらを自宅で楽しんでみましたが、お勧めなのは魚介を使ったパスタに少しこのワインを入れて、そして完成したらそのパスタと一緒に合わせて飲む方法。レモンやガーリックを利かせて、さらにムートンカデも冷蔵庫で冷やしておけば気分はまたボルドーに戻ってきたかのようなディナーを過ごすことができました」

オー・ムレール|AOP Crémant de Bordeaux
750ml ¥2,750/マルカイコーポレーション
国内外の知人にこちらの施設に見学に行かせていただいたことを報告すると、とても驚かれます。というのも従来の私たちの頭の中にあるシャトーや小さな家族経営のワイナリーとは正反対にある近代的な大型施設だから。カジュアルなタイプのクレマンやノンアルコール用の醸造設備がある、ボルドートップのワイナリー。こちらでは醸造、ティラージュ、ルミュアージュから配達販路、また長期熟成まですべての工程をひとつの場所で勉強することが出来ました。大型施設だからこそのクオリティの高さとコストパフォーマンスの高さに驚かされるばかりで、濃厚なのにバランスが良い、寝かさずに飲むのにも最適、またクレマンに関してもほかに引けを取らないクオリティです。
【注意事項】
●応募締切は8月26日(火)23:59までとさせていただきます。
●当選の発表は賞品の発送をもって代えさせていただきます。 商品の発送は8月28日ごろ、冷蔵便にて予定しております。
●プレゼント商品の組み合わせは複数を予定していますが、応募時にセレクトはできません。何卒ご了承ください。
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text: Tadayuki Yanagi