店頭に牡蠣開けたちが登場するパリの冬。
RECHでフランス的魚料理を味わう。
Gourmet 2012.11.14
大村真理子の今週のPARIS
冬、パリならではの街角の風景。それはレストラン(主にブラッスリー)の前に並ぶ牡蠣の露店だ。バン・ドゥ・レカイエといって店内の客が注文した牡蠣をこじあけて盛り合わせたり、あるいはテイクアウト客の注文に応じたりという場所である。
パリにあって、海辺の気分が味わえるレストランRECH
17区のテルヌ通り62番地にレッシュRECH という魚のレストランがあり、冬となれば、夏はテラス席だった店の前にこの牡蠣あけ場 が出現する。ここは2007年からアラン・デュカスがオーナーだが、開店は1925年とアールデコの時代に遡る魚料理の老舗。創業者のアドリアン・レッシュはアルザス・ロレーヌ地方の出身だそうだ。19世紀後半にフランスが普仏戦争で負けた際にドイツの領土となったこの地方からは、パリに上京してブラッスリーを開く人が多い。レッシュ氏も遅まきながら、というわけであろう。開店と同時に17区民、パリッ子に愛され、親しまれ、そして今日に至っている。
アラカルトでも食事ができるが、ランチ32ユーロ、ディナー54ユーロのコースもあり。また、ジャック・マキシマンのベスト料理コースは昼・夜ともに68ユーロ。牡蠣は6個16ユーロから。海の幸の盛り合わせは35ユーロから。
この夏、レストランの内部が改装された。以前はどちらかというと暖色系でビストロ風だった内装が、今では、海辺のレストランを連想させる白を基調にした明るく爽やかな内装に変身した。パリらしく、今流行のジャパニーズタッチがそこにプラスされている。最近では、ユズ、アズキといった食材に始まり、弁当もそのままベントーと呼ばれるパリ。このレストランではメニューではなく、インテリアの解説に"ギョタク"という日本語がそのまま使われているのが面白い。魚拓。これはフランスの釣り人たちの習慣にはないものなので、興味を惹かれるらしい。魚拓風の素朴な魚のデッサンがあしらわれた和紙の皿が、レストランの壁に並べられている。
左・ジャン・ピエール・ギユロンによる魚拓の絵皿が壁に飾られている。右・白でまとめられた店内。提灯風の照明が壁、天井に。
左・名物カマンベール。10ユーロ。右・ジャンポエクレア。カフェとチョコレート味がある。各14ユーロ。
photos Pierre Monetta
62, Avenue des Ternes
75017 Paris
tel 01 45 72 29 47
ランチ:12時〜14時
ディナー:19時〜22時
休: 日・月