日常の食卓に愉しみをもたらす、ジアンの陶器。
Interiors 2024.09.19
王侯貴族たちから広まったフランスのテーブルウェアには長い歴史を誇るブランドがあり、現在も当時のモチーフが残る。その源泉を辿り、製法やデザイン、魅力を解き明かしてみよう。普段使いの食器からロイヤルシリーズまで、ジアンの陶器は幅広いラインナップで、日常の食卓に愉しみを与え続けている。
GIEN
ジアン
フランス内陸部、ロワール河岸の街ジアンに1821年設立された陶器工房。創業当時は日常生活品を中心に製造を行っていたが、17〜18世紀にヨーロッパ各地の名窯からインスピレーションを得て技術を発達させた。1889年、パリ万博に出展し金賞を受賞すると世界各国の王侯貴族から注目され、家紋を刻印したオーダーメイドのテーブルウェアが好評を博す。
さらに原材料や塗料、型や絵柄の開発に力を注ぎ、鮮やかなロイヤルブルーから深みのあるナイトブルーまでさまざまなニュアンスのブルーを中心に、華やかな色彩を取り入れた花や動物のモチーフなどを制作。ノエルといったシーズンやシチュエーションに合わせた豊富なラインナップも魅力だ。1989年にはフランスの高級ブランド約70社が加盟するコルベール委員会に所属し、国を代表するテーブルウェアブランドとして展開している。
OISEAUX DE PARADIS
極楽鳥や花へのポエムや讃歌を描いた「オワゾパラディ」は、ジアンのシグネチャーアイテム。このデザインはジアン創業以前の1738年から存在しており、1865年頃にインスピレーションを受けた当時のデザイナーによって、より鮮やかな色が加えられ復刻した。色彩豊かな魔法の世界を呼び起こす同シリーズは、古くは王室のテーブルを彩り、現在も多くの人々に愛される不朽の名作。貝殻をモチーフにしたクラシックデザインに、ハンドペイントのブルーのラインが映え、食卓を明るく彩る。
LES FILETS
フランスの伝統的な陶磁器であるファイヤンス焼を継承するモデル。貝殻をモチーフに職人が一点一点ブルーのラインを描く。手描きならではの柔らかいタッチ、色の濃淡と線の揺らぎは転写やプリントでは出せない温かみがある。シンプルで飽きのこないデザインは普段使いにぴったり。
PONT AUX CHOUX
米粒のデザインが施されたシリーズは、1748年にパリで創業した同名の陶器工房がオリジナル。18世紀にジアン陶器工房の創設者が買収し、1819年に有名な米粒模様を復刻した。
*「フィガロジャポン」2024年9月号より抜粋
text: Junko Kubodera