受け継がれる洗練、クリストフルのシルバーウェア。
Interiors 2024.09.20
王侯貴族たちから広まったフランスのテーブルウェアには長い歴史を誇るブランドがあり、現在も当時のモチーフが残る。その源泉を辿り、製法やデザイン、魅力を解き明かしてみよう。正統なフランス料理に欠かせない、クリストフルの格調高いシルバーウェア。老舗メゾンが培ってきたサヴォワールフェールを、現代のライフスタイルにアレンジして取り入れたい。
Christofle
クリストフル
17世紀から18世紀、純銀のオブジェや銀器は王侯貴族の間で豊かさの象徴だった。1830年、創業当時宝石商だったシャルル・クリストフルは美的センスに優れていたばかりでなく技術革新にも強い意欲を持ち、貴重で高価な純銀の銀製品に電気分解で金銀メッキを行う技術の特許を取得。彼の名を一躍有名にしたのは55年にパリ万博でナポレオン3世が公式レセプションのために注文した銀製品だった。その技術と芸術性は高く評価され、金賞を受賞。
一方、現在メゾンのアイコンとなっているカトラリーセット「ムード」は、洗練と機能性を備えたコレクションだ。人間工学に基づいて計算されたカトラリーが収められた卵形のケースは、現代のライフスタイルに合わせた斬新なデザイン。オブジェに見立てたり、あえてセッティングせずラフな演出をしたりすることも可能だ。
MALMAISON
1967年以来、最も高貴なラインとして君臨し続ける「マルメゾン」は、ナポレオン1世時代にそのルーツを遡る。当時流行したエンパイア様式を取り入れ、ヤシ科のシュロの葉や蓮の花、鷲などがシンメトリックに縁取られている。皇妃ジョゼフィーヌ(下)が過ごした城にちなんで名付けられた。クラシカルな魅力はいまも色褪せない。
ALBI
ローマ帝国によって建設された南仏の司教都市、アルビ。街にあるサント=セシル大聖堂(下左)の丸天井に描かれたルネサンス様式の装飾ラインに着想を得て1968年に誕生したのが「アルビ」だ。カトラリーのラインナップが最も豊富で、どんなインテリアにもマッチするデザインが人気の秘訣。
VERTIGO
フランスが誇るクリエイター、アンドレ・プットマンが2000年に制作。優美でアシメトリーなリングのモチーフは、プットマンが思い描く現代女性を表現。
*「フィガロジャポン」2024年9月号より抜粋
text: Junko Kubodera