おしゃれなお宅に訪問! パリジェンヌ、ジャンヌ・ダマスが暮らす19区のアパルトマン。
Interiors 2025.05.01
古い物件や狭い空間も上手に生かして、おしゃれにインテリアを楽しむパリジェンヌ。19区のアパルトマンをリノベーションしたジャンヌ・ダマスの自宅を訪ね、家づくりで大切にしていることを聞いた。
Loft-Maison de campagne
ヴィンテージとアートが調和、ジャンヌ・ダマスの田舎風の家。
ジャンヌのお気に入り、書棚のあるコーナー。内装を手がけたのはマクシム・ブスケ。
19区にある東パリの庶民的なエリア。小さな中庭を横切り、急な階段を4階まで上ると、そこにはパラダイスが広がっている。人気ブランド、ルージュの創始者ジャンヌ・ダマスがこの空間に居を構えたのは2020年のこと。
「当時私は妊娠中で、パートナーのエドゥアールとともに、家族で住むアパルトマンを探していました。それまで別々に住んでいた私たちにとって大きなステップだったわ」と彼女は振り返る。
「蚤の市で見つけたヴィンテージ家具やベルベット、ドライフラワーに囲まれたインテリアが好きな私と、アートを配したピュアな空間を好む画商でコレクターの彼。嗜好がまったく違う私たちは、家探しを通して歩み寄ることを学んだの」
それでもふたつの点でふたりの意見は一致していた。オスマン建築より、歪でちょっと変わった物件がいい。そして、テラスが欲しい。
大きな梁のあるこの空間がジャンヌとエドゥアールの心を射止めた。
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田舎風の家との出合い。
「パリでは贅沢な注文。だから手の届きそうな19区や20区を扱う不動産屋にコンタクトしました。まったく知らなかったアヴロン地区の物件を訪ねた時、エリアの雰囲気がとても良かった。そして外見はパッとしないこの建物の最上階を見た瞬間、ふたりともすっかり気に入ってしまったんです。室内の静けさと通りの賑わいのコントラスト、木の構造が見える田舎家のような雰囲気。ちょうどオーナー夫妻の子どもたちが、火がパチパチとはぜる暖炉の前で朝ごはんを食べていて、生き生きした暮らしが感じられる場所でした」
内装建築家マクシム・ブスケに依頼し、数カ月をかけて自分たちらしいアパルトマンに改造した。
「希望どおりの物件だったけれど、インダストリアルな内装がいかにも2000年代風でした」とジャンヌ。だから、2フロアの上階へ続く金属製の階段以外はテラスも含めてすべてリフォーム。
「テラスは、床の黒いタイルを剥がしてテラコッタのタイルに変え、オリーブの木など植物をたくさん置きました。ゼリージュ(モロッコのモザイクタイル)のテーブルやストライプのソファも加えて、地中海の気分に」
テラコッタタイルの床、植物に囲まれたテラス。
「街の賑わいと我が家のコントラストが好き」。ソファ「マ ジョン」の前には、蚤の市で購入した籐のローテーブル。
ヴィンテージ家具やアートがミックスするインテリア。
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テラスに続くフロアは、仕切りのないオープンスペースになっている。
「イメージは、複数の空間で構成されたロフト。暖炉のあるダイニングは全面的に考え直しました。家族の団欒の場で、ほとんどの時間をここで過ごしているわ。前オーナーがオーダーで作らせた大テーブルと木製ベンチを真ん中に置いて、家族や友人たちと食卓を囲みます」
ダイニングテーブルはスイートホームの中心。天井から下がる照明はインゴ・マウラーのうちわランプ。暖炉のあるダイニングに、家族や友人が集まる。
ハンス・ホファーによるデザインの70年代のソファはリビングの中心。
中央のリビングではハンス・ホファーがデザインしたロッシュ・ボボアのソファ「マ ジョン」が主役。
「これはエドゥアールの祖父母が所有していた1970年代のものです。籐のローテーブルは蚤の市で150ユーロで購入。一時的なチョイスのつもりでしたが結局ふたりとも気に入ってしまい、丸くて子どもたちが怪我をする心配もないのでそのまま使っています。書棚のあるコーナーは私の夢を実現したもの。前のアパルトマンで使っていたメリディエンヌ(カウチソファ)を置き、ここに座って美しい光の中で読書します。映画鑑賞コーナーもあるし、さらに上の階にはエドゥアールの書斎も」
暖炉脇の棚には、キャンドルや花瓶、カラフなどがリズミカルに飾られている。
人をもてなすのが好きなふたりらしい空間作りに加えて、目を引くのは取り合わせのセンス。蚤の市で見つけた家具やアクセサリー、30年代や40年代のアート作品......。ジャンヌのミックスセンスは、穏やかな空気が漂う上階でさらに発揮されている。豹柄シェードのランプと大きなアンティークのタペストリーといった意外なディテールが隣り合わせに並び、床にはピンクの絨毯が敷かれている。
「これはエドゥアールのアイデア。ずっと絨毯のある場所で生活してきた彼にとって、プルーストのマドレーヌのようなもの! おかげでちょっとブドワール風の味つけになりました」
ピカビアの作品がさりげなく置かれるなど、アートとヴィンテージ家具がミックス。
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ふたりの個性とセンスが調和。
ジャンヌのいちばんのお気に入りは、寝室に続くバスルーム。
「もうひとつの浴室はエドゥアールがイタリアのグリーンのタイルで装飾したから、こちらは私の好みに。だから思い入れがあります。引っ越してきた日、服を着たままバスタブに身を横たえて、大人になった気分を感じました。広くて明るいのも気に入っています。息子のユリスをお風呂に入れる時は家族全員で集まるの。私は写真を撮るのが好きなので、エドゥアールとユリスの瞬間をたくさん撮影しています」
上階にある夫婦の寝室に隣接する、ジャンヌお気に入りのバスルーム。
どのディテールも微笑ましく、調和が感じられる家だ。
「ふたりで家造りをし、すべて一緒に決めた。このアパルトマンは、エドゥアールと私にとって、互いの違いを知るいい機会になりました」
もちろん、時には妥協する必要もあった。ジャンヌはコテージスタイルや英国風のカラフルな色使いが好きで、上階のインテリアに取り入れてみたかったけれど、衝突を避けて切り出さなかった。
「次回は挑戦してみようかしら」と彼女は笑う。一方、寝室のベッドのヘッドボードを布張りにしたのは彼女の意見。エドゥアールはいまだに納得していないが、小さな不満はあっても、ぐっすり眠れるのは間違いない。
パートナーと一緒に作り上げたパーソナルな空間。ジャンヌが選んだ布製のヘッドボードが心地良い眠りを約束。ベッドリネンはSimrane(シムラーヌ)。壁の絵画はジェラール・シュローサー『Près de Brest』(1990年)
街の雑音が入らない静かな我が家。モダンで温もりのある愛の巣で聞こえるのは、鳥のさえずりだけ。第二子が誕生したばかりの家族にとって、ここは理想のコクーンだ。
一家の女王様、愛猫シャルリー。

Jeanne Damas
モデル、女優として活躍し、2016年にファッションブランド、ルージュ設立。22年にはビューティブランドLes Filles en Rouje(レ・フィーユ・アン・ルージュ)をローンチ。2児の母。
*「フィガロジャポン」2025年3月号より抜粋
photography: Matias Indjic (Madame Figaro) styling: Noémie Barré (Madame Figaro) text: Vanessa Zocchetti (Madame Figaro)