ビフォーアフター! 時代遅れな内装のアパルトマンが、心地よいモダン空間へと生まれ変わった。

Interiors 2026.04.10

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インテリア設計スタジオ Carminの創設者トリスタン・ドイ率いるチームは、1960年代に建てられたパリのアパルトマンを全面的に再構築し、再デザインした。その結果、リビングが空間の中心となる、コンテンポラリーな住まいが誕生した。ニューアキテーヌ地方の「オテル・デュ・ラック」、パリの「オテル・セギュール・エッフェル」、アングレームのレストラン「ル・ルーフトップ」など、Carminの手がけたプロジェクトは、フランス各地の洗練された空間で目にすることができる。

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リビングルームが床面積の50%を占めるように間取りを再構成。photography: Carmin

2016年に設立されたこのインテリア設計事務所は、商業施設だけでなく住宅プロジェクトにも取り組んでいる。
創設者のトリスタン・ドイは、エコール・ブールとミラノ工科大学で学び、ミラノの建築家・デザイナーであるセルジオ・カラトローニのもとで経験を積んだ人物だ。今回は、1960年代に建てられたパリのアパルトマンが、アート性と現代性を兼ね備えた空間へと見事に再生された様子を、彼が語ってくれた。



出発点

「パリ12区のドーメニル通りに位置するこの78平米のアパルトマンに、クライアントはすぐに大きな可能性を見出しました。とりわけ、オスマン様式の物件を選ぶよりも、1960年代に建てられたこのアパルトマンに投資することで、よりクオリティの高い空間を、かつ現実的な予算で手に入れられると理解していたのです。この時代の建築は、柱と梁を中心に構造が成り立っており、1980年代以降はあまり見られなくなった高度な技術によって支えられています。そのため、構造壁に阻まれる心配が少なく、内部をスケルトン化できるのが特徴です。つまり、間取りを自由に再構成しやすい。それは、私たちにとっては大きな利点でした。そこで既存の間仕切り壁はすべて取り払い、3本の柱と1本の梁だけを残しました。それらを軸に空間全体のプランニングを行っています。まさに白紙の状態からのスタートとなったので、インテリア建築に関心が高く、アートをこよなく愛するクライアントの個性を存分に反映することができました。18世紀、19世紀、20世紀の絵画コレクションも多くお持ちで、それらを活かすことも大切なポイントです。プロジェクトは終始スムーズに進みました。事前に入念な準備をしていたこともあり、物件購入の翌日から工事に着手。結果として、施工期間はわずか3カ月半で完了しています。」

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リビング

「クライアントは、リビングの中にキッチンを設置することを望んでいました。そこで私たちは、古いキッチンをワークスペースへ変え、新たなキッチンを南向きのリビングに設けました。この空間はドーメニル通りの並木を見渡すことができ、3階という高さもあり視界が広く心地よさがあります。春には木々に葉に囲まれるような空間になるのも魅力です。

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明るくゆとりのある空間ながら、どこか時代を感じさせる雰囲気。photography: photo presse

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空間を再構成。リビングにキッチンを設置。photography: Carmin

キッチンは2つの要素で構成しました。ひとつは、空間に入り込むように設計した白いレジン仕上げの大きな収納ユニットです。その裏側にはバスルームがあります。もうひとつは、奥行きを通常の60〜65cmではなく50cmに抑えたキャビネットで、視覚的なインパクトを軽減しています。こちらには、塗装したオーク材の化粧板と花崗岩といった上質な素材を用いました。そして、この2つの要素が生み出す空間にに、ダイニングスペースを配置しています。照明には、軽やかでグラフィカルなフォルムのフォレスティエ社の「グラヴィティ」を採用しました。」

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リビングでは、デザイン家具を配したラウンジが、キッチン兼ダイニングと向かい合うレイアウトに。photography: Carmin

「窓側には、空間に沿って連続する造作家具をデザインしました。キャスター付きの食器棚を設け、この家具はテレビ収納を兼ねており、ダイニングとリビングの中央へと移動させることで、どちらのスペースからも視聴できるようになっています。そのため、床にはあらかじめ電源を設けました。
キッチンの正面、リビングの反対側にはラウンジスペースがあります。壁は白で統一し、ザノッタのソファなど、クライアントが所有していたコンテンポラリーな家具を活かしました。そこに、家族から受け継いだ古い絵画と現代写真を組み合わせ、時代のコントラストを楽しんでいます。さらにこの空間で印象的なのが、エントランスから続く装飾的な天井の存在です。エントランスには、壁と同じブルーでラッカー仕上げを施したオーダーメイドの書棚が設けられており、リビングまで連続しています。この下がり天井は、実は構造上の制約への対応から生まれたもので、位置のよくない梁を隠す役割を担いながら、コーニスのような効果を生み出し、エントランスとリビングに視覚的な連続性と整合性をもたらしています。天井には、日本のヤクザのタトゥーからインスパイアされた、ジャン=ポール・ゴルチエが手がけた壁紙を採用しています。」


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主寝室

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やや古びた印象の寝室。photography: photo presse

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ナイトブルーで包み込むように仕上げた、コクーンのようなコンパクトな寝室。photography: Carmin

「寝室はあえてコンパクトに設計しています。というのも、クライアントはアパルトマン全体の約50%をリビングの空間に使うことを優先したいと考えていました。そのため、主寝室も子ども部屋も、それぞれ9㎡ほどに抑えています。あくまでも眠るための場所です。そこで私たちは、この空間にコクーンな心地よさを生み出しました。とても静かで落ち着いた部屋にするため、安らぎをもたらすような深いブルーを選んでいます。収納には、ミラーが前面にあるイケアで選んだクローゼットを設置。これにより、視覚的な広がりが生まれています。またここでもリビングと同じように、異なる時代のアートを組み合わせています。19世紀のバルビゾン派の絵画と現代写真を飾りました。

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バスルーム

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機能的ではあるものの、個性に欠けるバスルーム。photography: photo presse

After

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繊細な色合いでまとめたバスルーム。photography: Carmin

「広さは以前のバスルームとほぼ同程度ですが、使い勝手を見直し、バスタブではなく広いシャワースペースを優先しました。また、この空間にトイレを新たに設けています(アパルトマン内には別にもトイレがあります)。やわらかな雰囲気にするために、パウダーピンクのタイルと石調のタイルを組み合わせました。」

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子ども部屋

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ひと昔前の印象が残るインテリア。photography: photo presse

After

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ジャン=ポール・ゴルチエがLelièvreのために手がけた壁紙を用いた、楽しい子ども部屋。photography: Carmin

「主寝室と同じ広さのこの部屋は、2人の子どものための空間です。アパルトマン全体の基調となっているブルーに呼応するように、イエローのアクセントを効かせ、明るく躍動感のある雰囲気に仕上げています。また、エントランスの天井と呼応するように、グラフィカルな壁紙を採用しました。クジラなどをモチーフにしたこのデザインは、ジャン=ポール・ゴルチエのスケッチをもとに、Casélioが制作したものです。」


From madameFIGARO.fr

text: Vanessa Zocchetti (madame.lefigaro.fr)

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