築50年、パリのアパルトマンをフルリノベした結果、光あふれる空間に生まれ変わった!
Interiors 2025.12.01

――官能性・丸み・静けさ――
この3つの言葉は、ステュディオ・カスティーユが手がけた104㎡ のアパルトマンの空間デザインを見事に表している。依頼主の要望に応じ、チームは1970 年代特有の直線的で角張った建築の印象を消し去り、優しい曲線を取り入れながら、光が空間を流れるように設計した。

ステュディオ・カスティーユは、古びたリビング空間の中にキッチンを新たに設け、温もりと落ち着きを感じられる部屋へと生まれ変わらせた。photography: CASSANDRE FAVARO
1970年代のアパートには、間違いなく大きな可能性がある。ステュディオ・カスティーユは、このリノベーションでそのことを見事に証明してみせた。改装前のアパルトマンは、古いカーペットにサーモンピンクの壁紙、レトロなカントリー調のキッチンに加え、配管も電気設備も手つかずのままだった。けれど、このアパルトマンには光がたっぷりと差し込み、広いテラスも備わっていたのだ。
「クライアントは子どもを持つご夫婦で、"このアパルトマンをモダンかつ家庭の温かみが感じられ、機能性を備えた魅力的な空間にしたい"と希望していました。」と話すのは、ステュディオ・カスティーユをフランス・ルプートルとともに創業したマチルド・アビール。この要望に応えるべく、チームはキッチンをリビングへ移動し、旧キッチンには新しいバスルームを設け、寝室のひとつをワークスペースに作り替えるなど、全体を抜本的にリノベーション。特に、空間の角を丸く仕上げることで、柔らかな光と空気が流れるような印象に仕上げた。
玄関
Before

玄関にはサーモンピンクの壁紙と、存在感のありすぎる大型クローゼット。photography: Studio Castille
「この玄関は、リビングルームや書斎へとつながり、さらに廊下を通じて寝室やバスルームへもアクセスできるようになっています。シンプルながらも機能的で、このアパルトマン全体のトーンを決定づける空間です。実際、この建築プロジェクトは曲線とアーチを中心に構想されています。玄関からは、オーダーメイドで設えられた複数のアーチ型の扉を見通すことができ、やわらかな連続性を感じさせます。また、玄関とリビングの間はあえて仕切らず、開放的にしました。以前あったガラス扉を取り外し、代わりにアーチ型の開口を設けています。もともとあった重々しい印象の大きな造り付けクローゼットは、木製のより控えめなデザインに置き換え、キッチンの収納とも呼応する仕上がりにしました。床には、アパルトマン全体に敷き詰めた美しい寄せ木張りのフローリングを採用し、空間に明るさと柔らかさを添えています。」
After

柔らかな印象に生まれ変わった玄関。リビングへと開かれ、クローゼットも控えめなデザインに。photography: CASSANDRE FAVARO
---fadeinpager---
リビング
Before

古びたカーペットが敷かれた居間の一角。photography: Studio Castille

モダンなアップデートが必要だったダイニングスペース。photography: Studio Castille
「このリビングスペースでは、リビング、ダイニング、そしてもともとは独立していたキッチンをひとつにまとめることが目標でした。そのため、空間全体を大胆に再構成。旧キッチンとリビング横の寝室の一部を取り込むことで、約4㎡の広さを新たに確保しました。この寝室は現在、書斎として使われています。1970年代の建物は構造上、耐力壁が少ないため、仕切り壁の移動が比較的容易です。私たちはこの特性を活かし、全体のバランスを崩さずに空間を再配置しました。キッチンは、玄関から入って左側、リビングの壁面沿いに設置。両側を収納棚の柱で囲み、中央には大型のアイランドキッチン台を配置し、そこにコンロを組み込むことで、ダイニングとの境界を自然に描き出しています。
ダイニングエリアには大きなテーブルと椅子を設置。調理中も食事中もテラスの景色をしっかりと楽しめるように、というアイデアを実現しました。リビング側では、特に収納のデザインにこだわりました。壁一面にオーダーメイドの棚を設け、壁面のくぼみと下部の収納を組み合わせて、装飾性と実用性を両立。棚の一角には引き込み式扉のキャビネットを仕込み、小型家電や生活感の出やすいものを収納できるようにしています。この工夫で、空間はすっきりと整いながらも、日常の道具は手の届きやすい場所に。このシステムは動線を妨げることなく、快適に過ごせるよう配慮されています。リビング・ダイニング・キッチン一体のこの空間は、ニュートラルなトーンを基調に木の素材感を活かし、穏やかで落ち着いた雰囲気を演出しています。」
After

心地よいキッチン。ガラス扉はアーチ型の開口に置き換えられ、反対側には工夫を凝らした棚を備えた新しいリビングコーナーが誕生。photography: CASSANDRE FAVARO

キッチンとつながった、明るく開放的なダイニングルーム。photography: CASSANDRE FAVARO
---fadeinpager---
バスルーム
Before

老朽化したキッチン。photography: Studio Castille
「キッチンをリビング側へ移動したことで、もとのキッチンの場所は自然と新しいバスルームになりました。クライアントのご夫婦は"どうしても浴槽を残したい"という希望をお持ちでした。幸い十分な広さがあったため、大きな収納を設け、その中に洗濯機を隠すことでランドリースペースも兼ね備えています。このバスルームはとても明るく、洗面台下の収納には木材を使用することで温かみをプラス。タイルは80×80cmの大判サイズを採用し、目地を少なくすることで清潔感とすっきりとした印象を与えています。」
After

光あふれるバスルームへと変身。photography: CASSANDRE FAVARO
---fadeinpager---
子ども部屋
Before

物が多く雑然とした机のある寝室。photography: Studio Castille

アップデートが必要だった古い寝室。photography: Studio Castille
「この子ども部屋は、色使いや壁紙の面で私たちが少し遊び心を取り入れた、唯一の空間です! バスルームの向かいに位置しています。もともとは古い造りのクローゼットがあり、とても重たい印象の部屋でしたが、それを取り払い、ナチュラルウッドを基調にすっきりと整えました。そこに、柔らかなグレイッシュグリーンの小さな波を思わせる模様をあしらい、家全体に見られるアーチや丸みを帯びた扉のデザインとも呼応させています。さらに、森をモチーフにした詩的な雰囲気の壁紙を貼り、穏やかで夢のある空間に仕上げました。」
After

可愛らしく整えられた子ども部屋。photography: CASSANDRE FAVARO

機能的で温かみのある子ども部屋に。photography: CASSANDRE FAVARO
---fadeinpager---
ベッドルーム
Before

圧迫感のあるベッド上収納。photography: Studio Castille

収納がなく、全面的な見直しが必要だった寝室。photography: Studio Castille
「この寝室には、かつて大きくて圧迫感のあるベッド上収納が設置されていました! もちろん、それはすぐに撤去。そのおかげで少しスペースを取り戻すことができ、ベッドの向かい側に木製扉の大きなクローゼットを新たに設けました。全体の色調は明るくナチュラルに整え、クライアントご夫婦の好みに合わせて柔らかく穏やかな雰囲気に仕上げています。この寝室は、直線的で硬い印象のあったアパルトマンを"丸みと優しさのある空間"へ変えたいというクライアントの希望を、まさに体現する仕上がりとなりました。」
After

心地よい寝室へ。photography: CASSANDRE FAVARO

木製の大きなクローゼットを新設し、快適で機能的な寝室に。photography: CASSANDRE FAVARO
「また、隣には小さなバスルームがありましたが、あまり魅力的と言えるものではなかったため、そこも全面的に再設計。浴槽をシャワーに置き換え、洗面下には木製のキャビネットを設置。ベージュトーンの石目調タイルを床と壁に採用し、水栓には真鍮を選びました。その結果、空間はより明るく、機能的で、そして心地よい雰囲気へと生まれ変わりました。」
Before

暗く狭いバスルーム。photography: Studio Castille

時代遅れのタイル張り。photography: Studio Castille
After

見違えるほど明るく生まれ変わった空間。photography: CASSANDRE FAVARO

シンプルで現代的なバスルームへ。photography: CASSANDRE FAVARO
From madameFIGARO.fr
text: Vanessa Zocchetti







