リースリングの爽やかな逆襲。 #04 上質なシャンパーニュのように繊細なリースリング。

Travel 2016.09.15

ラインヘッセン最後の訪問先はヴァイングート・ヴィンターというワイナリー。ヴィンターはWinterと綴るので、英語の冬を思わせますが、経営者の苗字です。余計な装飾をいっさい排除したモダンなデザインのワイナリーはレセプションエリアの奥がガラス張りになっていて、ブドウ畑という舞台を望む劇場のようです。

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ゼクトの柔らかな泡が迎えてくれました。
 

リースリングのゼクト(スパークリングワイン)でわれわれを迎えてくれたのはシュテファン・ヴィンターさん。ゼクトは酸がきれいでリフレッシング。泡も味わいも繊細で柔らか、いつまでも飲んでいたいと思わせるワインでした。シュテファンさんは36歳。「ジェネレーション・リースリング」のメンバーでしたが、同会は35歳になると“卒業”しなければならない決まりなので、現在はOBということになります。代々ブドウ栽培をしてきたヴィンター家ですが、自分たちで造ったワインをボトル詰めして売るようになったのはシュテファンさんの祖父の代から。

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シュテファンさんは町のサッカーチームに所属。
 

若くして家業のワイン造りを任されたシュテファンさんは、12ヘクタールある先祖伝来のブドウ畑と向き合い、1ヘクタールずつ改良を加えていきました。認証は取得していませんが、畑では有機栽培を実践しています。彼が目指すのは「冷涼な気候を生かしたエレガントで低アルコールのワインを造ること」。彼の奮闘と、その結果であるワインはすぐに高い評価を受けるようになり、2014年にはフランスの「ゴーミョー」誌に「無名だったディッテルスハイム−ヘスロー(彼のワイナリーのある地区の名前)の名をたったひとりの奮闘でワイン地図に載せさせた」と書かれました。

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畑の中にウサギ発見!
 

ヴァイングート・ヴィンターのワインをテイスティングしてみましょう。まずはグラウブルグンダー2015。グラウブルグンダーはピノグリのこと。ハチミツと白い花のピュアな香りに芝草のようなトーンが交じります。口の中では緻密さとテンションを感じます。一見親しみやすいけれど、飲むと、意外に奥深さがあって驚く、そういうワイン。

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試飲中のジャーナリストたち。
 

次は、樹齢20年以上の、人間でいうと分別をわきまえた年齢に達した樹の果実で造られたディッテルスハイム・リースリング2014。糠っぽいイースト香に土やハーブのトーンが交じって複雑。熟成した上質のシャンパーニュを思わせる風味があります。野菜や木の実、魚介類など良質の素材にデリケートなフレーバーを加味した上品な料理に合わせてみたくなります。

シュテファンさんのワインに通じるのは、清潔感と繊細さ。こういうワインは、畑でもセラーでも、面倒な作業を厭わず、淡々と続けた人だけが創り出せるものだと思います。

次回は、ドイツ第2のワイン産地、ファルツに移ります。

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単一畑のブドウによるトップレンジのリースリング。
 

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ワインの中のハチミツ香はミツバチの仕業?
 

*#03「思わず笑みがこぼれる、日向夏の香りのリースリング。」はこちら
*#05「リースリングは嫌い!?な造り手の自慢のワインとは。」はこちら

浮田泰幸 Yasuyuki Ukita
ライター、ワイン・ジャーナリスト、編集者

ワイン・ジャーナリストとして、これまで取材したワイン産地は11カ国30地域以上、訪問したワイナリーは約500軒に及ぶ。ワインと観光要素を結びつけた「ワイン・ツーリズム」の紹介に重点を置いている。各誌ワイン特集の企画・監修・ワインセレクトを担当することも。

吉田パンダ Panda Yoshida
フォトグラファー

世界の犬とおいしいものを、こよなく愛するフォトグラファー。スタジオ勤務を経て、2000年よりパリに拠点を移す。愛犬は黒いトイプードル。雑誌・広告媒体では吉田タイスケとして、旅、ライフスタイルを中心に幅広く活動。

texte: YASUYUKI UKITA, photos: PANDA YOSHIDA, collaboration: WINES OF GERMANY

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