鎌倉通に聞く、私的お気に入りアドレス。 #03 鎌倉のローカル誌編集者が、隠れ家スポットを案内。
Travel 2018.10.28
鎌倉在住で、ローカルマガジン「KAMAKURA」を発行する編集者、宮部誠二郎さん。鎌倉のショップ事情を知り尽くした彼が、プライベートで大切に通う店を厳選。
1. ザ・グッドグッティーズ
朝の一杯は、味わい深い自家焙煎コーヒーから。
鎌倉駅西口の御成通りから、一歩路地裏に入ったところに佇む小さなコーヒースタンド。次々と注文を受けて、カウンターに並んだガラスドリッパーにゆっくりとお湯を注いでいく。店内は、思わず深呼吸をしたくなるほどコーヒーのよい香りに満ちている。自家焙煎のコーヒー豆は、定番のエチオピア産や華やかな香りのアフリカ産など、季節に合わせて選ばれた7種類。カウンターに並んだマフィンやスコーン、焼き菓子との相性もバッチリだ。
丁寧にハンドドリップで淹れられていくコーヒー。内野さんのコーヒーを求めてやってくる客も多い。
「店主の内野陽平さんこだわりの本格コーヒーを飲みながら、店主や居合わせたお客さんと世間話をしたり、本を読んだりと、ちょっと隠れ家的な空間が気に入っています。鎌倉のイベントやお店のチラシもたくさん貼ってあり、ここで新たな鎌倉情報をもらっています」
店の一角はフラワースタンドになっていて、毎週金、土、日曜は、外のウッドデッキまで生花でいっぱいになる。近所にあった花屋が閉店してしまってから、商店街から花がなくなり、街としてのよさが失われてしまうような気がしてと、店主のアイデアで2年半年ほど前から店の一角をフラワースタンドにしているという。おいしいコーヒーと花。店は小さくとも、鎌倉らしい上質なゆとりに満ちた空間だ。
ハンドドリップの「オリジナルブレンド」¥421と、コーヒーシフォンケーキ¥453。ほかにグッドモーニングコーヒーS¥100〜や、バタートーストセット(ドリンク別売り)¥421なども人気。
平日のオープンは朝7時。テイクアウトするもよし、スイーツと一緒にカウンターでゆっくりコーヒーをいただくもよし。人足が絶えない人気店だ。
店内を瑞々しい空気に演出してくれる、フォトジェニックな花々。週末は外までいっぱいのフラワースタンドになる。
鎌倉市御成町10-1
tel:0467-33-5685
営)7:00〜18:00(月、火、木、金) 9:00〜18:00(土、日、祝)
休)水、最終火
www.facebook.com/THEGOODGOODIES
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2. カフェ鎌倉美学
たくさんの人が集うスペインバルは、新しい出会いまでもご馳走。
真っ赤なドアに手描きの看板、ユニークな雰囲気を醸し出すこのレストランは、宮部さんが「鎌倉のコミュニティスペース!」と語るスペインバルだ。壁に掲げられたグラスワインのメニューは常に14種という多さ。ランチタイムにも、異国情緒漂う店内のそこここでタパスをおともにワイングラスを傾ける客が多いのもうなずける。
いちばん人気のメニュー「タパス盛り合わせ」¥1,620。ペルーのポテトサラダ、ブラジルのソーセージ、チキンとキヌアのトマト煮、スペイン産のマンチェゴ(羊)チーズ、スペイン産ハモンセラーノなど、多国籍の味が楽しめるひと皿。
「店主の湊万智子さんが中心となり、お客さん同士の広がりや繋がりが深まるスペインバルです。観光客だけでなく鎌倉に住む人も多く集まり、ここでの出会いはいつもよいものになっているので、また帰ってきたくなるんです。メニューも豊富で、グリルチキンやシラスのアヒージョ、南米のスープカレーが気に入っています」と宮部さん。
かつて子育てをしながら忙しい日々を過ごしていたというオーナーの万智子さんは、当時スペイン語のCS放送局に勤務。その時に親しんだスペインや南米のローカルフードをおいしいお酒とともに提供。スパイスの使い方など、その味は本格的だ。ひとりでもふらりと入れるアットホームな雰囲気に飛び込めば、鎌倉コミュニティの仲間入りができそう。
真っ赤な壁がラテンの雰囲気を盛り上げてくれる。夜にはカウンター席もいっぱいになる。
店主の万智子さんは、たくさんの客に愛されるアイコニックな女性だ。
「カフェ鎌倉美学」は、鎌倉駅西口から徒歩5分ほど。大きな窓と異国情緒漂う外観が目印。
鎌倉市御成町8-41
tel:050-5594-1624
営)11:00〜15:00、18:00〜22:00L.O.
無休
Facebookページ:カフェ鎌倉美学
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3. 妙本寺
深い森を抜けた先に現れる寺で、静謐な時間を過ごす。
鎌倉駅東口から徒歩15分ほど。フォトジェニックな夷堂橋を渡ってお寺の幼稚園を通り過ぎると、やがて路地は深い緑に包まれる。静かな森に抱かれた参道はとても空気が澄んでいて、思わず深呼吸をしたくなる。
お参りを終えたあと、本堂の横に目を向ければ、木造の建物に切り取られた絵画のような美しい緑の景色を見ることができる。
「緑が深く、閑静さに癒やされるお寺です。お参りをしたあとに境内に腰かけていると、いつも心地よい風を感じられるんです。ここで読書をしたり、ぼーっとしたり、自分の時間をゆっくり過ごされている人もいます」
創建は文応元年(1260年)だが、もとは鎌倉幕府、源頼朝に仕えた御家人・比企能員一族が1203年に北条氏に攻められ(比企の乱)、滅ぼされた屋敷跡である。後に、比企能本公が日蓮聖人に巡り会い、一族の供養のためにお堂を建てたのが始まりだ。
緑に覆われた敷地には、春にはサクラやカイドウが咲き誇り、夏にはノウゼンカズラが鮮やかな花を見せてくれる。四季折々の美しい境内の風景と、どこまでも静謐な空間は、鎌倉本来の静けさを教えてくれる。
立派な木造の本堂とともに、境内の静けさもまた、妙本寺の魅力かもしれない。
杉の木が立ち並ぶ参道の階段を登りきると、二天門と呼ばれる朱色の美しい門が出迎えてくれる。
本堂に向かうには右回りと左回り、ふたつのルートがある。どちらも新緑に囲まれた趣の違う参道だ。
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「まちをもっと面白く」をテーマに情報誌『フリーペーパーKAMAKURA』の発行やイベント企画等を行なうchameleonの代表。10月には、最新号「夜のカマクラ」を発行。2019年で10周年を迎える。
http://chameleon-kamakura.com/webkamakura/
photos : MAYUKO EBINA, réalisation : MIKI SUKA