川村明子のコペンハーゲン滞在記。#04 デンマークの屋内蚤の市と国立美術館。
Travel 2020.03.01
「パリ街歩き、おいしい寄り道」を連載中のパリ在住フードライター、川村明子がデンマークの首都コペンハーゲンへ。第4回では気になっていた屋内蚤の市や、楽しみにしていたハマスホイの絵画を観に国立美術館へ。デンマークのオープンサンド、スモーブローも最後に!
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DAY4
コペンハーゲンに行くと決めた時に、ホテルよりも先にまず調べたのは蚤の市情報だ。
そうしたら、週末に開催される青空蚤の市は4月から10月の開催とわかり、早々にがっかりすることとなった。
ただ暖かい季節のそういった蚤の市は、“観光客目当て”とフランスのガイド本で読んで、逆によかったかもしれないな、と安心もした。
1カ所、週末だけオープンの「Den Blå Hal」という屋内蚤の市があるらしいことがわかった。
ただ、検索しても名前と住所と地図に表示される場所が一致せず、実際に存在するのか確認できない。
それでも、開催場所の名前と住所と最寄駅を控えていたら、2日前に会ったリサさんが「数年前に行ったことがあるけどいまもあるんじゃないかなぁ」と調べてくれた。
すると、すぐにサイトを見つけてその週末もオープンすることがわかった。
やはり現地の言葉で調べると、こんなにも早く見つかるものなのだなぁ。
その日は予定が空いている、というリサさんと一緒に行けることになった。
フランスだと、クリスマス前の時期の古物市では、カトラリーや大人数分揃った食器など、クリスマスシーンに需要のありそうなものが増える。
コペンハーゲンでも何かしらあるのではないかと期待した。
滞在中、朝は身支度をしたらホテルの1階にPCを持って降り、コーヒーを飲みながら少し仕事をした。
ロビーの一角に、快適な仕事スペースがあって、すっかり気に入った。
屋内蚤の市へは地下鉄で行くことにした。ホテルからいちばん近いNørreport駅からM2線に乗れば1本で行ける。
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リサさんとは、蚤の市の最寄り駅Lergravsparkenで待ち合わせをした。
そこから歩いて15分くらい。
周りには商店とおぼしきものが何もないところに、屋内蚤の市の建物はあった。
白い平屋で控えめに水色の看板が付いている。
入り口に小さな窓口があり、入場料10クローネを払って中に入る。
廊下の右と左に古着ばかりの部屋、道具ばかりの部屋などがあり、突き当たりを左に折れると、壁一面に時計がかかっていてサンタ家族がいた。
そこからもう私の頭の中では「大きな古時計」がしばらくループすることになった。
その通路を抜けると……
一気に開けた間には、どこから手をつけたらよいのかわからないくらいにさまざまなものが積まれていた。
ぐわっと盛り上がった気持ちを落ち着け、まずは手前から見ていこうとすぐ左手の棚を見ることにする。
子どもの頃よくイチゴをよそって食べていたパイレックスのガラスの器や、ガラスの蓋が付いている懐かしい鍋、
用途がわからなかった、受け皿のくっついているステンレスのボウルなど、興味を引くものがあまりにたくさんで、スーツケースで運べる量、という制限がある状況でよかった、と心底思った。じゃなかったら、きっと大変なことになる。
そして食器のコーナー……
こんなにもおびただしい数の食器が揃う蚤の市は初めてだ。
ロイヤル コペンハーゲンのヴィンテージものは、食器コーナーの端にまとめてあり、少し特別扱いされているようだった。
大きなカップがあったら欲しいと思っていたのに、想定外の食器の品揃えに、その中から気に入ったものをどうにか見つけたい!という気持ちが強まって、ロイヤル コペンハーゲンは、今回は探さないことにした。
消去法で絞っていかなかったら、とても見きれない。
お皿には値段がついていなかった。
だから、その都度尋ねるしかないのだけれど、値段を把握している(というか、値段を決められる)のは年配のマダムひとりのようだった。
ただ、そのマダムは、英語を話さない。
それで、最初はリサさんにお願いして聞いてもらった。
これは、もし次回ひとりで来るとしたらなかなかハードルが高いぞ、と思っていたら、若い女性スタッフがひとりいて、彼女は英語が話せた。
厳選に厳選を重ねた結果、買うことに決めた3種の皿はどれもドイツ製の1930〜40年のもの。
聞いてから、デンマークやスウェーデンなど北欧ものだけでなく、ドイツの陶器メーカーのものもストックの中には相当数含まれていそうだと気付いた。
ドイツのものは持っていない。うれしいなぁ。
遠くから来た転校生がクラスメートとして加わるような感じだ。
私の家になじむといいな、と包んでくれるのを見ながら思った。
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選ぶのに集中力を使ったからかお腹が空いた。
歩いて行けるところにブランチのできるお店「Wulff & Konstali」があるというので、戦利品を抱えて、行くことにした。
「Lille Bakery」もそうだったけれど、立て看板があるだけで、目立つように店名が書かれていない。
だから、外観がすっきりしているよなぁ。
ショーケースを見ると、食べたことのないデンマーク版ハンバーグがあった。
チキンバーグ、フィッシュバーグ、ベジバーグと、具が違うらしい。
ブランチメニューよりもそれを食べてみたくて、サンドウィッチとサラダも一緒に取ることにした。
天井の高い空間に、入り口から奥まで続く長いテーブルが置かれていて、週末のお昼過ぎらしいゆったりとした空気の中、どの人も寛いで見える。
フレッシュな野菜ジュースと、豆とニンジンがたっぷりのサラダで久々にビタミンをとった気がした。
Lergravsvej 57, 2300 København S
tel:+45-3254-8181
営)7時~19時(月~金) 8時~18時(土、日)※ブランチ提供時間:9時~15時
無休
www.wogk.dk/en/home
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おしゃべりに花を咲かせ、気付いたらすっかり夕方で、あと1カ所、行きたいと思っていたところ、デザインミュージアムへ向かうことにした。
行きに待ち合わせをした駅でリサさんと別れ、朝とは逆の方向の地下鉄に乗る。
3駅目のKongens Nytorv駅で降りて、M3という開通したばかりの山手線のような路線(市内を一周している)に乗り換え、ひとつ目のMarble Churchで降りたかったのだが、一応確認と思って乗り換え駅で路線図を見たら、Marble Churchという駅名がない。
おそらく、路線図に書かれた駅名Marmorkirkenはデンマーク語なのだろうと思いつつ、駅員さんに聞いてみると、「Marble Churchは次の駅だよ、こっちのホームに来る電車に乗ってね」と親切に教えてくれた。
コペンハーゲンの人は、何か尋ねると、みんな立ち止まってとても親切に教えてくれる。
閉館時間間際だったけれど、ミュージアムショップにだけ行きたいと伝えると入れてもらえた。
パリのポンピドゥー・センターで素敵だなと思ったスケジュール帳がデンマークのメーカーのものだったので、コペンハーゲンのデザインミュージアムならば、ほかにもっとデンマークデザインの手帳がいろいろとあるかもしれない、と思っていたのだけれど、残念ながらなかった。
本当は展示も観たかったし、ここのカフェでもゆっくり過ごしたかったのだ。
でも、またの機会の楽しみができた。
Bredgade 68, 1260 København K
tel:+45-3318-5656
開)10時~18時(火、木~土) 10時~19時(水)
休)月
https://designmuseum.dk
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検索したら、ホテルまでは2.2kmと出たので、歩いて帰ることにした。
ミュージアムを左に出てまっすぐ歩いて行ったら、クリスマスマーケットが出ていた。
ここにもトナカイのイルミネーションがいた。
でも、どこもかしこもライティングされているわけではなく、控えめだ。
さらに歩いていくとまた別のクリスマスマーケットに行き当たった。
このほかにも、ホテルまでの帰り道にもうひとつあった。
ニットやルームシューズ、アクセサリーなどプレゼントになるようなものを売るスタンドに、ホットワインや、ソーセージを勢いよく焼いている屋台なんかも出ていて、どこも賑わっていた。
歩行者天国のメインストリート、ストロイエを歩いていたら「Illum」というよさそうなデパートがあったので、思うところがあり、入ってみることにした。
見たかったのは、家で使う魔法瓶。
北欧だったら、シンプルで素敵なデザインのしっかり保温できるものがあるのではないかと思ったのだ。
予想は当たった。
気に入るのが見つかった。
おまけに、レジに持って行ったら50%オフだった。
ホクホクしながらホテルに戻った。
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DAY5
さて最終日。
飛行機は17時発なので、半日時間がある。
この日にお楽しみを取っておいた。
国立美術館のカフェテリアで朝ごはんを食べて、
ハマスホイをゆっくり観る。
ホテルからは歩いて20分弱で着いた。
日曜の朝だからか、人がほとんどいない。
楽しみにしていたこのカフェテリア自家製の天然酵母パンで朝ごはん。
卵は2個、付いてきた。
とてもシンプルながら、しっかりお腹は満たされた。
コペンハーゲンには、おいしいコーヒー屋さんがたくさんで、毎日おいしいコーヒーを飲めて、気持ちも満たされた。
展示室は2階。
階段の途中で、美術館の1階ホールにこんなソファが置いてある光景って初めて見たかも、と思った。
1750〜1900年のデンマークと北欧美術の展示室へ。
椅子も、椅子の配置も、いいなぁ。
展示室に入ろうとしたところで、鑑賞用の持ち運びできる椅子を発見。
入ってすぐ左にあったジュリアン・マリー(Juliane Marie)皇太后のポートレート。
そのドレスの袖の美しさに目が釘付けになった(写真、ぜひ拡大してみてください!)。
裾も。思わず手に取ってしまいそうになる絵だった。
ウィギリウス・エリクセン(Vigilius Eriksen)というデンマーク人画家の1776年の作品。
王妃の全体像を観るには格好の椅子もまたいい。
作品を観ながら、展示室によって異なる椅子にも興味津々。
フォークとナイフに目が奪われて、いつの作品だろうと思って見てみたら、1866年。
こういうナイフ、ブロカントで買って、持ってるなぁ。
私のは、もうすこし後に製造されたものだけれど、大事にしよう。
19世紀後半のサーディン工場を描いた作品。
これだけの女性が外に出て働いていたのか、と少し驚いた。
サーディンといえばポルトガルに結びついて、北国はニシンという思い込みがあったから、北欧でサーディン、ということにも、意外な驚きがあった。
北欧らしい湖畔の絵。
観て歩くうちに、「ノーマ」での食事が思い出された。
自然に触れられる地域にもいつか足を延ばしたい。
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ドローイングルームの棚も、椅子の置き方も、いいなぁ。
この椅子はとても座りやすかった。
ハマスホイ作品だけの展示室があった。
椅子に腰掛けて心ゆくまで堪能。
湖畔の絵と、このとんがり屋根の絵がとても好きだった。
これはヨハン・トマス・ロンビュー(Johan Thomas Lundbye)というデンマーク人画家の1837年の作品。
フランス絵画の展示室もあり、ピカソやマチスも観たけれど、この北欧とデンマーク絵画の展示コーナーがものすごい見応えがあり、一度出たのに戻って、また観て回ったほどだ。
風景の中にも人が描かれている作品や、街中の日常のひとコマを描いた作品もあり、当時の様子がうかがえて、とても興味深かった。
1階のエントランスホールを抜けると別のホールがあった。
椅子だけじゃなくて、照明の配置の仕方も好きだなぁ。
彫刻は帽子を被っていました。
お手洗いにもお茶目な仕掛けが。
こんなふうにゴミ箱が並んでいるのも、いいなぁ。
マチスのほうが人気なの?
Sølvgade 48-50, 1307 København K
tel:+45-3374-8494
開)10時~18時(火、木~日) 10時~20時(水)
休)月、1/1、12/24、25、31
www.smk.dk
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大充実の美術館時間を過ごして向かったのは、美術館からほど近いところにあるスモーブロー(デンマークのオープンサンド)専門のデリ、「Aamanns」。
結局一度もスモーブローを食べずに最終日になってしまったので、空港で食べようと、買いに寄ることにしたのだ。
Øster Farimagsgade 10, 2100 København Ø
tel:+45-2080-5201
営)11時~19時L.O.
無休
https://aamanns.dk
雨上がりの道を、スモーブローを抱えてホテルまで戻った。
筆で描いたような雲をところどころに携えた淡いブルーの空と、パステルの街並みをギリギリまで楽しんだ。
帰りは、空港まで地下鉄で行った。
お腹もいい具合に空いて、楽しみにしていたスモーブローを。
カレー風味のニシンのスモーブローと、クリスマススパイス(ミックススパイス)風味の豚の蒸し焼きのスモーブローのふたつ。
いくつもの味の要素があるのにプラスして、味付けもしっかりで、お酒と一緒に食べたくなるサンドウィッチだった。
パンは薄くて、お皿代わりになっている感じだ。
最後においしいコーヒーをまた飲んで、空港での待ち時間も、すっかり満喫した。
今回の旅行で買ったお皿。とても使いやすく、すでに活躍している。
デパートで見つけた保温ポットはこれ。
パン屋さん「Juno the Bakery」で買ったジンジャークッキーは、薄くて、キリッとスパイスが利いていた。
今度は夏に、また訪れたいと思っています。
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川村明子の連載「パリ街歩き、おいしい寄り道」
photos et texte : AKIKO KAWAMURA