ウイルスと闘う世界のいま。#18 ロックダウン緩和後のイギリスで、人々が夢中なことって?

Travel 2020.05.23

文・坂本みゆき(在イギリスライター)

連日、いまだに数千人もの新たな感染者が報告されて不安が続いています。

ご存知のようにイギリスはイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4つから成る連合国。ウイルスに対するロックダウンなどの政策は各国ごとに異なっています(野党の労働党は、「4つの国が足並みを揃えて困難に立ち向かうべき」ともしていますが)。

スコットランドは5月25日からロックダウン緩和というニュースが流れました。ウェールズも近々、と報道されています。北アイルランドは正常化へのステップを5段階に分け、5月18日より第1段階の実践を始めました。

そのなかでイングランドは、他の3つの国に先立って5月10日に緩和を発表しました。在宅可能な仕事の場合はできる限りリモートワークというルールはそのままですが、建設業や工場勤務など、リモートが不可能な場合は仕事になるべく行くようにとしています。また、余暇の過ごし方は少しだけリラックスしたものとなりました。

私は当初、時期尚早なのではないかと戸惑いを感じていました。しかし1カ月を超える外出制限で自由を制限された人々は、そろそろ我慢の限界だったのかもしれません。現在は心配を抱えながらも注意深く行動し、緩和をありがたく受け止めているように思います。

以前は公園の散歩はOKでも、ゆっくりとベンチに腰掛けることはNGでした。いまは堂々とベンチを利用できるし、さらには同居していないひとりとならば2メートル以上離れていることを条件に外で会っておしゃべりできます。

また、一部の屋外スポーツも新たに設けられたルールを守ればプレーできるようになりました。

たとえばテニス。屋外コートだけが使用を許されていて(私の知る限りイギリスでは屋内コートは稀です)、試合はシングルスのみ。ダブルスはプレイヤー4人全員が同じ家に暮らしている場合のみ可能です。

コートに入る前後には必ず手を洗う。試合前後、試合中は必ず対戦相手と2メートル以上離れていること。握手やハイタッチは禁止。

ラケット、ボールなどは自分のものだけ使って共有しないこと。ボールには各自の名前やイニシャルを書いて所有者を明確にして、自分のもの以外には触らないこと。

そんな決まりを各自守りながら楽しんでいるようです。そのほか、ゴルフや釣りも同様のルールを守れば可能となっています。

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解禁以降、毎日のようにテニスをしている息子のテニスボール。彼のイニシャルを書き込んでいました。

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しかし、食料品や薬などの最低限の必需品を売る店舗以外はいまだ閉まったままです。カフェやパブ、レストランはソーシャルディスタンシングが難しいため、おそらく再開は最も遅いと見込まれています。

歩道からハイストリートに並ぶお店の閉じられた扉の奥をのぞくと、床に埃がたまっていることも。2カ月近く無人のままなのだから仕方ないのですが、やはりとても寂しい気持ちになります。

そのなかで他に先駆けて18日から営業が可能となったお店があります。それはガーデンセンターです。

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私のうちのそばのガーデンセンター。のびのびと育つ緑が元気をくれます。

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入り口にはこんな注意書きも。「購入するもの以外は手に取らないように」「スタッフとは2メートルの距離を取って」「支払いは現金以外で」「18歳以下は入店禁止」などと書いてあります。

植物を扱う関係上、店舗の大部分が屋外というのが大きな理由のようですが、庭仕事好きの国民性が現れているようにも感じます。また植物を尊び自然に触れるガーデニングは肉体的にも精神的にも良く、いまのような困難な時には特に効果的という声も。

長い在宅時間を利用して、たとえ庭がなくてもベランダや窓辺で野菜やハーブを育ててみたら、それが心を癒やしてくれると気が付いた人も多いのでしょう。また、ロックダウン開始前後にスーパーから食品が一時的になくなったことを経験したいま、少しでも日々の糧を自分で作れたら安心に繋がると考える人も少なくないようです。

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ガーデンセンターで咲いていたバラ。その優美さは、厳しいいまを一瞬だけ忘れさせてくれます。

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園芸用の土は売り切れが続き、王立園芸協会のサイトの「コンポストの作り方」のページへのアクセスは、昨年比500%アップしたとか。野菜の種や苗が入手困難にもなっているところも少なくありません。

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野菜の種売り場。白い札だけになっている箇所は売り切れ。キャベツ、ビーツなど、苦手な人が多い野菜が主に売れ残っているようなのは気のせい…

私も先日、近所のガーデンセンターを訪れてみました。いまはちょうどバラが咲き始める季節。たくさんのバラを集めたコーナーは特に素敵で、ゆっくりと回って「お花見」してきました。そのうちのひとつを買って帰り、庭に置いて毎日眺めたり香りを嗅いだりして楽しんでいます。

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購入したJacques Cartier(ジャック・カルティエ)というオールドローズは1868年からある品種だそう。蕾から満開まで違った表情を持ち、その一瞬一瞬がとても美しいです。

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texte : MIYUKI SAKAMOTO, title photo : alamy/amanaimages

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