深遠なる静寂が広がる、世界の音の絶景10!
Travel 2021.08.08
文/キャスリーン・レリハン(トラベルライター)
火山の山頂、熱帯雨林、自然保護区、原生林......。世界にまだ残る「本物の静寂」が味わえる10カ所を紹介。
「静寂は心のシンクタンクだ」と、音響生態学者ゴードン・ヘンプトンは言う。彼が共同設立した非営利組織クワイエット・パークス・インターナショナル(QPI)は世界各地で消滅の危機にある静かな空間を認定・保護し、私たちの健康と幸福、そして環境も守っている。ヘンプトンおすすめの「音の絶景」を紹介しよう。
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01. ハレアカラ国立公園
マウイ島(米ハワイ州)
標高約3000メートルのハレアカラ火山の山頂にある巨大な噴火口は「地球上で最も静寂な場所」だ。周囲の騒音レベルが屋外では観測史上最も低く、じっとしていると自分の心臓の鼓動や神経系の発する信号音が聞こえてきそうだと、ヘンプトンは言う。
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02. ホー・レインフォレスト
オリンピック半島(米ワシントン州)
オリンピック国立公園内の温帯雨林の静けさを守るため、2005年、その一画を「静寂の1平方インチ」と名付けたのがQPIの活動の原点だ。「世界一高い森を覆うドレープ状の苔が音を吸収して独特の音響を生み、アメリカアカシカの咆哮がフルートのように聞こえる」。残念ながら近くの米海軍航空基地からの騒音が悪化し、クワイエットパークには認定されていない。
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03. グラスランズ国立公園
サスカチワン州(カナダ)
グラスランズ国立公園は、ヘンプトンによれば、北米で「大地の音に耳を澄ますのに最高のスポット」の1つ。遮るもののない広大な大草原のなか、風が吹き抜けていく音が聞こえる。
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04. アメリカン・プレーリー・リザーブ
米モンタナ州
自然保護団体が設立・管理する広大な保護区。「北温帯にしては意外なほど生物多様性に富み、上空の騒音に悩まされることもめったにない」、ヘンプトンおすすめの「必聴スポット」だ。「春の夜明けには、何kmもかなたからのアメリカバイソンのうなるような鳴き声と鳥たちの美しいさえずりを聞くこともできる」
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05. デザート・マウンテン・トレールズ
スコッツデール(米アリゾナ州)
フェニックスの北に位置する全長30㎞余りのループ状のトレールコース。ボランティア団体デザート・マウンテン・デスペラドスが設置し、整備している。現代社会の喧騒からしばし離れて、トント国有林沿いのソノラ砂漠の大自然の中でひとり静けさに浸ろう。
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06. サバロ川
エクアドル
2019年4月、QPIによって世界初のウィルダネス・クワイエットパーク(自然の静寂な公園)に認定された。アマゾン熱帯雨林の奥にあるサバロ川流域は特に生物多様性に富み、世界で最も騒音公害の少ない地域のひとつだ。先住民族コファンの人々がツアーガイドを務めており、その収入は彼らの静寂の聖地の維持費に充てられる。
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07. ナミブランド自然保護区
ナミビア
ナミブ砂漠南西部に広がる面積約20万ヘクタールの民間の自然保護区。星空保護区にも認定され、ヘンプトンによれば、太古の砂漠らしい「音景」と「騒音の少ない、深遠な自然の静寂」に満ちている。環境への負荷の少ない観光は、この保護区固有の生物多様性の維持にとって有用だ。
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08. ビャウォビエジャの森
ポーランド
ベラルーシとの国境にまたがるユネスコ(国連教育科学文化機関)世界遺産。ヨーロッパに残る最大の落葉樹の原生林にして最大のヨーロッパバイソン生息地でもある。音景スポットとしては「春には鳥たちの素晴らしいさえずりを大聖堂のような音響」で楽しめるという。
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09. ユダルスコーゲン自然保護区
ストックホルム(スウェーデン)
ストックホルムで最初にして最大の自然保護区。トレールコースのスタート地点では市内を行き交う車の騒音が、遠く離れた山中の小川のせせらぎくらいに聞こえるだろう。だが針葉樹林の奥や湖の辺りまで行けば、耳に入るのは自分の足音だけだ。
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10. 陽明山国家公園
台湾
人口約700万の過密都市、台北都市圏にある公園は2020年に世界初のアーバン・クワイエットパーク(都市の静寂な公園)に認定された。約1万1000ヘクタールの園内には山岳トレールコースと温泉が点在。水生シダ類の希少種である台湾ミズニラが生息し、台湾固有種のカエルの合唱が聞こえる。
文:キャスリーン・レリハン(トラベルライター)