Nature Retreat|自然に帰る旅。 瀬戸内海に浮かぶ「神の島」大三島で、自然と古民家に癒される旅を。

Travel 2022.04.29

穏やかな海と山を擁し、レモンをはじめ柑橘類が豊富な瀬戸内。昨年、生口島に注目の宿アズミセトダが開業。土地の歴史を受け継ぐ宿を拠点に、生口島、向島、大三島の恩恵を満喫したい。


【愛媛県】大三島

生口島から多々羅大橋を渡ると、愛媛県今治市の大三島へ入る。日本総鎮守とされる大山祇神社があることから、もとは「御島」と呼ばれ「神の島」とされてきた。大山祇神社には壮大な樹齢を経た楠が群生し、神聖な空気が漂う。特に、境内中央に立つ樹齢約2600年の御神木の存在感は圧巻だ。錚々たる武具を保存する宝物館もあり、多くの国宝を所蔵する。源頼朝、源義経が奉納した鎧も展示し、甲冑の所蔵は全国一。「国宝の島」とも呼ばれる所以はここにある。

“神の島で紡がれた歴史とともに、生命のパワーを実感”

島にはパワースポットとして人気の「生樹の御門」という樹齢約3000年の楠も。巨樹がそびえ立つ姿は神秘的で力強い。

大三島の風を感じたいなら、今治市伊東豊雄建築ミュージアムへ。展示棟のスティールハットは独特の存在感を放ち、大三島環状線からの遠景も美しい。展示はもちろんだが、ここは伊東の意思により、みなに開放された場所。図書閲覧スペースのあるシルバーハットは、ミカン畑とその先に海と島を望む気持ちのいいスペースだ。5月にはミカンの花が咲く。花の白色と、風に乗って香る柑橘の香りが、瀬戸内の景色に彩りを添えるだろう。

ここ数年、大山祇神社が繋いできた島の歴史に、移住者による新しい風が吹き込んで、この島は魅力を増している。ミカン、イヨカン、ハッサク、レモンなどさまざまな柑橘が名産。移住者により柑橘やフルーツを使ったお酒が造られ、リキュール、ビール、ワインとなって楽しませてくれる。神の島として漁場が保護されてきたことから天然の魚介類も豊かだ。島内でいただく海鮮丼やお刺し身は、身が引き締まり食べごたえ満点。島に初めてのフレンチレストランも誕生した。新しいものと古いものが共存し、この島の未来を作ってゆくのだろう。

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大山祇神社|Oyamadumi Shrine

天照大神の兄神、大山積神を御本社御祭神とする大山祇神社は、およそ2600年前に始まったとされる。楠が多く育ち、社殿後方にはかつて神体山とされた鷲ヶ頭山、安神山、小見山がある。総檜造りの総門をくぐり境内へ進むと樹齢約2600年の御神木「乎知命御手植の楠」がそびえ、歴史の重みを感じさせる。

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荘厳な拝殿から本殿を望む。拝殿は切妻造りで素木、本殿は三間社造りで胡粉に朱塗り。ともに屋根は檜皮葺。

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南門近くにある楠。境内の楠群は国の天然記念物に指定され、指定樹は38本、そのほかに200本もの楠が群生している。

大山祇神社|Oyamadumi Shrine
愛媛県今治市大三島町宮浦3327
tel:0897-82-0032
開)日の出頃~17:00
https://oomishimagu.jp

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生樹の御門|IKIKI no GOMON

奥の院手前にそびえる、樹齢約3000年の楠。圧倒的な巨樹の幹の根元には、トンネルのようにぽっかりと空いた空間があり、いにしえよりそこを門に見立てて奥の院へ参拝していた。石段を上り幹をくぐれば老樹の神秘的な力が身体中に漲るよう。早朝の清らかな時間に訪れたい。

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“生きた樹でできた門”。根回りは約31mにも及び、愛媛県の天然記念物に指定されている。ここには長寿信仰があったそう。

生樹の御門|IKIKI no GOMON
愛媛県今治市大三島町宮浦
tel:0897-82-0500
(今治市大三島支所住居サービス課)

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今治市伊東豊雄建築ミュージアム|TIMA IMABARI

もともとミカン畑だった地に、建築家・伊東豊雄のミュージアムが開館したのは2011年。展示を中心とするスティールハットと、かつて伊東の自邸だった建物を再生したシルバーハットの2棟からなる。若手の建築家を育てたいという思いから実現したシルバーハットには伊東の図面や書籍が収蔵され、誰でも自由に出入りできる無料の閲覧スペースとなっている。その脇の屋外エリアでは、ワークショップやイベントなども開催している。

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存在感を放つスティールハットは4種の多面体が連なった独特の構造。朝から夕方にかけて刻々と色を変える凪いだ海は、どこか神秘的でもある。海の向こうには瀬戸内海の島々が浮かぶ。

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シルバーハットのワークショップスペースには椅子が設置された絶景スポット。お天気の日にはお弁当を食べながら読書したり、日がな一日過ごすのも贅沢。

今治市伊東豊雄建築ミュージアム|TIMA IMABARI
愛媛県今治市大三島町浦戸2418
tel:0897-74-7220
開)9:00~17:00
休)月、12/27~31
料:一般¥840
www.tima-imabari.jp

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大三島の柑橘を極上のお酒で、島の食材はフレンチで舌鼓。

大三島リモーネ|Omishima Limone

無農薬の柑橘でお酒を造りたい、と東京から移住し柑橘農園をスタート。レモンをはじめ、ライム、ブラッドオレンジなど有機・無農薬で育て、旬な柑橘を使ったオリジナルの製品を届けてくれる。自社の工房でひとつずつ手造りするリキュールは絶品で、醤油やドレッシングなどの調味料、ケーキやクッキーも並ぶ。レモンにまつわる雑貨も可愛い。

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白と青の可愛らしい店。

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一押しはリモンチェッロ。青いビターな秋レモンの新酒、大三島リモンチェッロ¥2,100(左)と、島カラマンシーのリキュール¥2,300(右)

大三島リモーネ|Omishima Limone
愛媛県今治市上浦町瀬戸2342
tel:0897-87-2131
営)11:00~17:00頃
休)火、金
www.limone2.com

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大三島ブリュワリー|Omishima Brewery

大山祇神社の参道で2018年からスタートしたクラフトビール店。醸造スペースも併設し、店主の高橋さんが作業をする姿も。仕込みは月に3回ほど。スタンダードなブロンドエールやホワイトエールなど、常時4種類のビールを楽しめる。持ち帰り用のボトル缶(520ml)もある。島民にも旅人にも愛されるブリュワリーへ、ぜひ。

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カカオを使った濃厚なカカオブラック(左)。無農薬の甘夏を使ったフルーティなホワイトエール。ともにハーフ各¥600

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オレンジの明るい壁が印象的な外観。

大三島ブリュワリー|Omishima Brewery
愛媛県今治市大三島町宮浦5589
tel:0897-72-9248
営)12:00~19:30
休)火、水
Instagram:@omishimabrewery

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大三島みんなのワイナリー|OMISHIMA MINNANO WINERY

耕作放棄されたミカン畑を2015年から醸造用のブドウ畑に切り替えて、ワイン造りに夢を抱くメンバーが集いワイナリーがスタート。現在20ほどの畑を擁し、シャルドネ、ピオニエ、ピノグリ、アルバリーニョ、マスカットベーリーA、メルローなどの品種を揃える。穏やかな海は塩害もなく、瀬戸内の海風と太陽と真砂土がブドウを育む。

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伊東豊雄の呼びかけで始まったワイナリー。販売所は大山祇神社の参道に。試飲してお気に入りを選びたい。

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樽熟成のシャルドネ「島白」。価格未定、5月から販売。

大三島みんなのワイナリー|OMISHIMA MINNANO WINERY
愛媛県今治市大三島町宮浦5562
tel:0897-72-9377
営)10:00~16:00
休)月
http://ohmishimawine.com

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しまなみフレンチ フィレール|Shimanami French Filer

2021年7月、大三島に初のフレンチレストランがオープン。フランスでの勤務経験もある伊藤博史シェフが、島の人たちに本格的なフレンチを食べてほしい、と東京から移住して始めた。今治産の野菜や魚、島で獲れるイノシシ、大三島産レモンなど、素材を生かした味に仕上げる。王道でありつつ、大三島の薫り漂う料理が楽しめる。

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¥2,750(3月現在)のランチコースから「舌平目のデュグレレ」。タマネギ、パセリ、トマトを白ワインで煮詰め魚の出汁を加えたソースはバターたっぷりで濃厚。茹でたジャガイモと一緒に。

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希望があればディナーで「イノシシのポワレ」を提供。芽キャベツ、ネギ、ヤーコン、サトイモを付け合わせに赤ワインソースで。臭みはなくやわらかで美味。

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ランチコースから、大三島産レモンをたっぷり使った「レモンのデザート2種盛り」。ムースとケーキをイチゴのソースと一緒に。ワインは大三島みんなのワイナリーのものがいただける。

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1週間ごとに替わる床の間の生け込みは、店への大切な「いざない」。レモンの木とビワの木が大胆に生けられて。

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築90年の古民家を改装。すりガラスから差し込む光は柔らかく、ゆったりとした時間が流れる。

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和風の外観もいい。店は基本ランチのみ。夜は予約があれば営業し、好みや予算に合わせてメニューを提案してくれる。

しまなみフレンチ フィレール|Shimanami French Filer
愛媛県今治市上浦町甘崎1572
tel:0897-87-2344
営)11:30~14:00L.O. 
※夜は要相談
休)月、火、第3日曜
https://shimanami-filer.com

●掲載店や施設の営業時間、定休日、価格、料理などは、取材時から変更になる可能性があります。
●取材・撮影時はコロナ対策に十分配慮し、換気に注意のうえ少人数で行っています。
●写真でマスクを外している場合がありますが、通常スタッフはマスク着用のうえ感染対策を行っています。

*「フィガロジャポン」2022年5月号より抜粋

photography: Mitsugu Uehara

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