日常に寄り添う、韓国のうつわ探し。
Travel 2023.09.23
静謐で、洗練されていて、趣のある韓国のうつわたち。目利きで知られるザ・コンランショップ代表の中原慎⼀郎が推薦する店で見つけた、注目作家のうつわに触れて。
“隙”のない韓国のうつわに魅せられて。
木くずと薬品を混ぜた液体に漬けることでこの独特な色合いを表現。銅製の花器400,000ウォン。薄くて軽い3つの皿は99.9%シルバー素材。酒器にも◎(大)600,000ウォン、(中)400,000ウォン、(小)250,000ウォン
ご近所とはいえ、日本と韓国のうつわはやっぱりどこか違う。「歪みや割れにも愛嬌があり、完全な左右対称や正円にはあまりとらわれない日本のうつわに対して、韓国のうつわはストイックだと思います。ピシッとクールで、隙が許されない。物体として、アートとして、使うだけでなく鑑賞品として成立するところも魅力です。韓国は食事の際に小さいうつわをたくさん使う文化。だからこそ、人をもてなすことが目的のうつわの種類が豊富で、選びがいがある。韓国の伝統文化を色濃く反映したものと、生活にすっとなじむモダンなもの。どちらも実際に見て触って、その魅力を体感してみてください」
中原慎一郎
Shinichiro Nakahara/1971年、鹿児島県生まれ。
2000年に家具や雑貨の製造販売を手がけるランドスケーププロダクツを設立。2022年にザ・コンランショップの代表に就任し、アジアの作り手やデザインにフォーカスした代官山店を今年オープン。韓国作家の商品も今後続々展開される予定。www.conranshop.jp
阿園工房
アウォンゴンバン
아원공방
家族で営む工房の温もりあふれる金属工芸。
金属工芸があまり一般的ではなかった1983年に、6人姉妹で始めた金属工房。10年前に仁寺洞から北村に店を移し、現在は姉妹のひとりであるノ・イナとその子どもたちを中心に一族で制作に励んでいる。武骨なイメージの金属工芸だが、ノ・イナのデザインは木や植物など、自然をインスピレーション源に制作したどこか温かみのある作品が印象的。「愛らしさのあるものもあればシャープなものもあって、見ていて飽きないワクワクする店」(中原)
枝や葉をモチーフにした柄がキュートなスプーン50,000ウォン〜
아원공방
종로구 북촌로 5가길 3
3 Bukchon-ro, 5ga-gil, Jongno-gu
tel:02-735-3482
Ⓜ︎ 安国(328)1番出口
営)10:00〜19:00
休)月
@ahwoncraft
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Monoha Hannam
モノハ ハンナム
모노하 한남
余白のある空間で“モノ”を見定める。
白磁の茶器や陶芸などシンプルで落ち着いたうつわのセレクトが特徴のギャラリー&ショップ。最大の魅力は綿密に考え抜かれた展示スタイル。ホワイトキューブの中に、うつわひとつひとつが主役として生きるように配されており、オブジェのような展示が美しい。「新旧のアイテムを組み合わせた空間構成や、モノをゆったり見せる配置の仕方は、見習いたい」(中原)。日本の工芸品が展示されたり、空間デザイナーとして真喜志奈美が参加したり、日本とも縁が深い。
「本場でしか出し得ない洗練された薄い青みのある白磁が魅力的」(中原)。現代白磁の第一人者とされるイ・キジョの高台皿176,500ウォン。面の仕上がりやディテールが美しいと評される若手作家イ・ヨリョンの小皿各28,000ウォン。
3階窓辺にはさまざまな素材のティートレイや急須、カップなど、茶器を中心に展示。
모노하 한남
용산구 독서당로 36
36 Dokseodang-ro,Yongsan-gu
tel:02-1577-5307
Ⓜ︎ 漢南(K113)1番出口
営)11:00~19:30
休)月
@monoha_official
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食器匠
チョン ソヨン エシッキジャン
정소영의식기장
個性あふれる一点ものの手仕事が集結。
3年前にモダンな建物へとリニューアルした人気食器店。クラフト作家だったオーナーのチョン・ソヨンが、唯一無二の個性がある作家を選び抜き、彼らとともに店オリジナルの商品を作り上げていくスタイル。陶芸、ガラス、木工など素材もさまざまだ。「どの作家のものかわからなくなるほど、商品が棚にびっしり。何だかんだいちばん買い物しちゃう店(笑)。私の周りの料理研究家や飲食店の人も通っています」(中原)
色とりどりの足の部分にゴールドやシルバーをあしらった異素材グラス。右から、225,000ウォン、205,000ウォン、225,000ウォン。
チョン・ソヨン(右)と、このグラスの作家であるチョ・ヒョンソン。
中央の棚はテーブルセッティングをイメージして商品を配置。棚の下段をチェックするのもお忘れなく。
정소영의식기장
강남구 삼성로 141길 9
9 Samseong-ro, 141-gil, Gangnam-gu
tel:02-541-6480
Ⓜ︎ 清潭(729)8番出口
営)10:30〜12:00、13:00〜19:00
休)日
@sikijang2005
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Lkate Gallery
エルケイトゥゲロリ
엘케이트갤러리
モダン家具と調和する、凛としたうつわたち。
中原が「いまソウルでいちばん行きたい場所」だと言うこちらは、3フロアに分かれたアート&クラフトギャラリー。右の写真のうつわ作家のキム・サンインの個展は庭を備えた自然光がたっぷり入る3階で開催された。広々とした空間にはオーナーがセレクトした自前のモダン家具が配され、日常生活とうつわの関係がイメージできる展示スタイルになっていることも魅力。
朝鮮時代の白磁を日常使いしやすく、現代風に再解釈して制作するキム・サンインの急須500,000ウォン、茶器50,000ウォン。キム・サンインの個展はすでに終了しているため、購入希望の方は日常餘百へ。
ミッドセンチュリーのインテリアやアートにも注目。
엘케이트갤러리
성북구 성북로 189
189 Seongbuk-ro, Seongbuk-gu
tel:02-744-8880
Ⓜ︎ 漢城大入口(419)6番出口よりタクシーで10分
営)10:00~18:00
休)月 ※展示期間のみ運営、詳細はインスタグラムに掲載
@lkategallery
【キム・サンインの作品購入はこちら】
日常餘百 イルサンヨベッ 일상여백
西村 종로구 자하문로 17길 12-15
12-15 Jahamun-ro, 17-gil, Jongno-gu
tel:02-743-7001
Ⓜ︎ 景福宮(327)2番出口
営)10:00~19:00
休)月
www.isyb.kr
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澄光オンギ
ジングァンオンギ
징광옹기
老舗窯元が生む、ぽってり素朴なオンギ。
キムチや味噌、醤など、発酵食品を保存する壺として古くから親しまれているオンギの老舗。「クラシックなものは現代陶芸にはない素朴さがあって可愛いですよね。僕が生まれた鹿児島県には朝鮮由来の窯元が多くて、こんな雰囲気のものを身近に見ていたから、親しみが湧くんです。昔は、白磁のような白いうつわは高貴な人が、オンギのような黒い土物は民衆が使っていた白黒文化があると思うのですが、だからこそ使いやすさ、実用性も信頼できます」(中原)
釉薬を使わず、自然素材のみで作られたオンギ45,000ウォン、小皿13,000ウォン。オンギの蓋にある突起は蓮の花の蕾を表しており、蕾のないフラットな蓋のオンギも人気だ。土素材なので風通しがよく、呼吸するうつわと言われている。茶葉を入れる際は紙を入れて湿度調整を。
サイズさまざまなオンギや皿が並ぶ、こぢんまりとした店内。金魚が泳ぐ、巨大なオンギものぞいてみて。
징광옹기
종로구 윤보선길 26
26 Yunboseon-gil, Jongno-gu
tel:02-722-3409
Ⓜ︎ 安国(328)1番出口
営)11:00〜19:00
休)日
www.jingkwang.co.kr
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*「フィガロジャポン」2023年9月号より抜粋
photography: Yuka Uesawa coodination: Ja-Kyung Jung, Min Young Kim, Jung Mi Yang