スウェーデンの大自然を楽しめるふたつのホテル。
Travel 2024.05.24
ボルボの新型EV「EX30」の試乗会がスウェーデンにて開催された。氷上ドライブのほかスウェーデンの自然や風習を体感できるホテルステイも今回のツアーの魅力のひとつ。スウェーデン在住のライター兼コーディネーター、神咲子が感動した人気ホテルの魅力を紐解く。
Arctic Bath
アークティック・バス
ウェルネスを堪能できるホテルで季節の移ろいを感じて。
水面に浮かぶように佇むホテル「アークティック・バス」の外観。
今回のボルボ試乗ツアーの目的地はスウェーデン最北の地、ラップランド。滑らかな走行を楽しみながらまず向かったのは、全長461km、ノルウェーの国境沿いからスウェーデンの4州をまたがって流れるルーレ川沿いにあるホテル・レストラン・スパ「アークティック・バス」。夏は沈まない太陽の中で川泳ぎをし、冬は氷上に立ってオーロラをも眺めることが出来る、まさにウェルネスの地。
流木が積み上げられたようなサークル状の外観が目を引く。このデザインは、かつてこの川の流れを使って材木を運んだ歴史に由来しているという。交通手段が車に移行する以前、1800年代から1924年までの重要な役割を果たしたことへのトリビュートでもある。
このホテルのアクティビティのひとつでもあるコールドバスセラピーのプール。
ここは冷水浴(コールドバスセラピー)で有名なホテルでサウナでこれでもかというぐらいまで身体を温めた後に、プールの冷水に身を沈める。これはラップランド特有の伝統的なサウナへの入り方で、北欧の人々の間ではサウナに入り湖に飛び込むなどこの冷水浴とサウナを繰り返す健康法がポピュラーだ。私は結構この冷たい水に入ることが好きなので、氷点下の水の中を頭まで浸かったが、殆どの参加者は腰あたりまで。中にはパスした参加者さえも。一旦慣れれば病みつき間違いなし!最初は冷たい水に入ることに躊躇するが身も心もスッキリするとはまさにこのことであろう。
マジックショーでも見ているかのような幻想的な夕日。ピンクから焼けるようなオレンジ色までと、スウェーデン、特に北部地方の夕日の色は言葉にし尽くし難い。
丘側に背を向けたスイートは、2階の天井まで続くガラス張りの大きな窓を目前に、ゆったりとソファにくつろぎながらルーレ川に沈む夕日を楽しむ事が出来る。また広々としたロフトにある寝室では白樺をはじめとする北欧の自然を彷彿させる内装の中、まさに静寂に包まれながら眠りに落ちたのだった。
メインコースの地元の牛肉のステーキ。付け合わせは燻製された菊芋のピュレにキングオイスターキノコ、ケール。トッピングの赤いパウダーはリンゴンベリー。
マッシュルームと名付けられたデザートの正体はミルクとダークのチョコレートムース。松の実とシーバックソーンのソース(オレンジ色)が散りばめられている。更にはスモーキーな演出も加わり、朝靄に包まれた森の中のキノコ発見!という感じだ。
Arctic Bath
Ramdalsvägen 10, 961 78 Harads, Sweden
tel:+46 928 703040
https://arcticbath.se
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TreeHotel
ツリーホテル
森林に突如現れる、不思議なホテル。
2日目の宿泊先は、国内外で人気が高いツリーホテル。森林の中に浮かんでいるような8つの異なる不思議な建物達。木登り感覚で部屋に入るなんてまるで子供の頃にかえるようだ。自分の部屋はUFO? 巣箱? ワクワクドキドキ感がまたたまらない!チェックインを済ませると自分の部屋探しの散歩が始まる。
Rintala Eggertsson Architects が手がけたドラゴンフライと呼ばれる建物。デザインは空中でのバランスを配慮し、まわりの森林とコミュニケートする色合いやマテリアルを使ったという。大きい窓からは遠くを流れるルーレ川まで見渡せる。
心地よくモダンなデザインとエキサイティングなアドベンチャーを組み合わせたツリーホテル。7組の建築家がこの大自然の中でのユニークな経験ができるよう、さまざまな部屋をデザイン。各部屋、ユーモアと自由かつワイルドなセンスがあふれつつ、自然と対話できるようなつくりが魅力。
なかでも、「ミラーキューブ」は全面が反射鏡になっており、周りの木々が映り込み景色に溶け込んでいるため、目を凝らさないとツリールームがあるのがわからないほど。また2022年に出来た最新のツリールームのひとつ「ビオスフィアー」(生物圏)は、手掛けた建築グループが鳥やコウモリなども人間と一体になって居住できる場所をと、350に及ぶ巣箱を外観に施している。
この部屋は「ブルーコーン」(青い円錐)といって、名前と真逆の外観が真っ赤なとんがり屋根のとてもかわいい部屋。
右_ホテル内、全部屋のトイレが環境を考えた「水不要・高熱燃焼トイレ」。左_「バーズ ネスト」(鳥の巣)の部屋は梯子をよじ登るとたどり着く強者の部屋だ。シャワーなしでポンプ式の給水設備がある。
このツリーホテルはサステナビリティにも力を入れており、飲用水と手洗い水として、各部屋にポンプ式の小さい給水タンクが設備されており、随時使用分を調整することができる。トイレは以前「世界は愉快、本気でエコ生活」でも紹介した「水不要・高熱燃焼トイレ」を使用。
オーナーが建築家側への依頼時に一番大事にするよう伝えた、自然や周りの木々を壊さずにできる建物を、という意向も踏まえ、上記に挙げたトイレや水の配給設備以外にも、建てる際には木を切り落とすことはせず、また、環境への影響を最小限にした素材や方法で建てている。また床暖房をはじめとする電気は地元のルーレ川などを利用したハイドロエレクトリックパワー(水力発電)だ。
建築だけではなく、施設で提供する料理ももちろん地産地消、またゼロ・ウェイストを目指し、一切の無駄を無くすように残り物や廃棄物をコンポストにしている。
ノンアルブルーベリードリンクや地元特産のアロニアベリーのカクテルなどをはじめ十二分にラップランドを味わった。
今回の旅で一番美味しかった一皿。アークティック チャー(北極イワナ)に白ワインのソース。色鮮やかなニンジンのピクルスとグリルした根菜。写真の左側はスウェーデンの数少ない原産地呼称保護製品のひとつとして、スウェーデンのキャビアと呼ばれる高級魚卵「Kalix Löjrom」(カーリックス・ルイロム)。
よりどりみどりの朝食も北欧感満載だ。各種ベリー類のジュースやブースター、地元のチーズやトナカイのサラミなどすべて試して欲しい。
Treehotel
Edeforsväg 2A, 961 78 Harads, Sweden
tel:+46 (0)928 10300
https://treehotel.se
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運が良ければオーロラも!
オーロラを部屋から眺めることも出来たが、せっかくだから! とすぐさま外に駆け出し、もっとよく見える方へと夜の森の中、オーロラ追っかけ隊になったのだ。
ここラップランド地方はオーロラが見られる確率が高い事でも知られている。はっきり言って運次第だが、「アークティック・バス」も「ツリーホテル」も周りには何も遮るものがなく、部屋によっては室内にいながら大きな窓からオーロラの様子を眺められる。今回はとても運がよくトナカイ、そしてオーロラにも巡り会えた。明かりが溢れる街中と違い真っ暗な大自然の中から見上げるオーロラは格段に美しい。
3日間に渡りすべてが順風満帆だった今回のツアー。自然と一体化する、環境に配慮したボルボならではの旅の提案で、自然を大切にしてクルマづくりを発展させていくブランドらしさを体感した素晴らしい勉強の場にもなった。
スウェーデンに移住して24年だが、改めてこの北欧の自然やライフスタイルに魅力を感じた旅にもなった。
text: Sakiko Jin