地球の宝物を探して。日本屈指のハイダウェイ、隠岐諸島をホッピング!【前編】

Travel 2024.07.01

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およそ600万年前の火山活動によって誕生した隠岐諸島は、島根半島北方の、日本海上に位置する群島だ。隠岐諸島を構成する大小180あまりの島々は、ダイナミックな自然と生態系、漁業や牧畑といった営みを含めて、全体が隠岐ユネスコ世界ジオパークに指定されている。土地と自然、人が織りなすユニークな風景をお目当てに、島前(中ノ島、西ノ島、知夫里島)、島後の4つの有人島を旅しよう。

ジオパークとは、地質や土地の成り立ちがユニークな地域において、その地質や景観だけでなくそこで作られた生態系や人の営みも含めて、守り、より豊かなものにする取り組みを行っているエリアを指す。なかでもユネスコの理念と審査基準に基づいて認定されたジオパークが、ユネスコ世界ジオパークだ。

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ジオパークの拠点機能も備える宿泊施設、エントウ。

地球の不思議に満ちた島々

隠岐世界ジオパーク空港から西郷港でフェリーに乗り換え、船に揺られること1時間強。島前3島の玄関口である中ノ島の菱浦港に到着する。島前の見どころは、海岸にそびえる奇岩や断崖絶壁など、火山活動と日本海の荒波や風が作り出した景観にある。まずはジオパークの拠点も兼ねる宿泊施設エントウにチェックイン、施設内にあるジオラウンジへ。ジオラウンジには隠岐諸島の成り立ちや地球の歴史を学ぶことができるジオルームディスカバリー展示室が設けられていて、隠岐諸島の成り立ちをおさらいできる。

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エントウ内のジオラウンジ。

菱浦港から、今度は3島を結ぶ内航船に乗り、お隣の西ノ島へ。リング状に並ぶ島前2島の、外海に面するエリアには、日本海の波風の影響を受けた絶景美があふれている。アーチ状に残った通天橋は、洞窟の奥行き部分が地滑りで崩落して橋のように残ったもの。波と風の侵食により形成された高さ257mの摩天崖では、絶壁に刻まれている縞模様の溶岩の層から、600万年前から現在に至るまでの噴火の様子を見て取れる。そんな荒々しい様相とは一転、崖の上では放牧された馬がのんびりと草を食んでいた。国立公園のなかにこんなのどかな営みがあることも、隠岐らしさといえるだろう。

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左:摩天崖を一望できる赤尾展望所からの眺め。右:いまにも崩れ落ちそうなアーチ橋のような奇岩、通天橋。摩天崖と通天橋を繋ぐ遊歩道も整備されている。

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エメラルドグリーンの海とダイナミックな地層・学び、どちらも楽しめる知夫里島。

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人口と同じだけの牛が暮らす島

翌日は同じ内航船に乗って知夫里島へ。3島のなかで最も人の手が入っていない知夫里島は、透明度の高い海と赤い溶岩、緑の牧草地の対比が印象的だ。ここでは、島の見どころを海から眺めるシーカヤックツアーを体験。専属ガイドの案内のもと、渡津海水浴場から無人島の島津島周辺の洞窟をシーカヤックで探検する。透き通った海はエメラルドグリーンに輝き、陸上からはアクセスできない大迫力の断崖とのコントラストも美しい。マリンアクティビティに苦手意識を持っている人も、臆せずご体験あれ。

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専属ガイドの案内のもと、シーカヤックで洞窟探検へ。シーカヤックツアー大人1名¥7,700

陸にあがったら、さっと着替えて次の目的地、シェ サワへ。築70年の古民家を改築した完全予約制のフレンチレストランで、知夫里島で水揚げされたシーフードと、イタダキファームという自家菜園産の旬野菜やハーブを、彩りも鮮やかなひと皿に仕立て提供する。メインは、シェフたちが平飼いで育てる「知夫軍鶏」。来年には食肉処理施設も設け、里野モミイチシェフが理想に掲げる、「育てて食べる」を実践する場になる予定だ。この秋には宿泊の受け入れもスタート、オーベルジュとして知夫里島の魅力を伝えていく。

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この日のコースから。左は「イサキの燻香 初夏の野菜の煮込み」。藁と島のフクギ(クロモジ)で香りづけした後、黒胡椒で燻製に仕立てたイサキと、イタダキファーム産夏野菜の煮込みをクスクスといただく。ソースは赤タマネギのドレッシングとハーブのグリーンソース、バルサミコソースの3種を用意。右:「ぎたろう軍鶏のグリル」は、こんがりとグリルしたモモ肉と胸肉に、ローストしたラディッシュ、カブ、セルウバチコの付け合わせ。マスタードソースでいただく。ランチ¥3,630〜

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里野モミイチシェフと岡田紗和オーナー。岡田さんはおもにイタダキファームでの農作業を担当している。農家のいない知夫里島でレストランを開業するにあたり、食材を調達するために開墾から取り組んだ。

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標高325mの赤ハゲ山の頂上から、島前カルデラを遠望する。

食後は知夫里島の山側を探索。シェサワから北に向かうと、広大な緑の放牧地が現れる。360度の大パノラマが広がる赤ハゲ山は、西ノ島、中ノ島(外輪山)が連なる島前カルデラ(火山性の陥没地形)を俯瞰するビュースポット。晴れた日には、島後はもちろん本州の大山までを一望できる。近くに目をやれば、車道も牧草地もおかまいなしに寝そべる牛の姿が。牛の数はおよそ600頭、島の人口とほぼ同じ。ここは牛の王国なのだ。放牧地のあちこちに残る古い石垣は、牧畑と呼ばれる隠岐ならではの農法の遺物で、島の人々の暮らしの知恵が垣間見られておもしろい。かつては土地をこのような石垣でゾーニングし、4年サイクルで放牧、アワ・ヒエ、大豆、麦を順番に栽培していたそうで、この手法により、平地が少なく土壌が痩せている知夫里島でも効率的に作物を生み出せたそう。

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火山の一部でもある赤壁の岩肌は、大地のエネルギーを写し取ったような濃い赤色。

昔の島人の知恵に感心しながら、島の西側に向かう。およそ1kmにわたって続く大断崖は赤壁(せきへき)と呼ばれる景勝地で、この断崖自体が小さな火山だとか。波風の浸食によって露わになった真っ赤な岩肌は、吹き出した溶岩が超高温で空気にさらされ、中の鉄分が酸化したため。爆発的な火山のエネルギーを留める赤壁とどこまでも牧歌的な赤ハゲ山の風景、対照的な自然美がひとつの島に共存している不思議さこそ、知夫里島の魅力なのだろう。

内航船に乗って知夫里島を後にする。西ノ島の別府港でフェリーに乗り換えて向かうのは、隠岐諸島最大の島、島後だ。

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知夫里島の来居港を後にして島後に向かう。

続きは後編へ!

隠岐諸島の観光情報はこちらから

一般社団法人隠岐ジオパーク推進機構
https://www.e-oki.net/

Entô
島根県隠岐郡海士町福井1375-1
https://ento-oki.jp

通天橋
https://www.e-oki.net/spots/5994/

摩天崖
https://www.e-oki.net/spots/5978/

シーカヤック
https://www.e-oki.net/experience/6353/

Chez SAWA
シェ サワ

島根県隠岐郡知夫村仁夫2293
営)11:30-14:00 、18:00-21:30
不定休
https://www.e-oki.net/localfood/5462/

赤壁
https://www.e-oki.net/spots/5979/

赤ハゲ山
https://www.e-oki.net/spots/5980/

photography & editing: Ryoko Kuraishi

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