温泉だけじゃない。別府の街中で、アートなそぞろ歩きはいかが?
Travel 2024.11.15
別府駅から延びるメインストリートを歩くと、レトロなビルに描かれた鮮やかな花のイラストが目に飛び込んでくる。マイケル・リンの『温泉花ブーケ束』だ。さらに市内を歩くと、路地裏には壁画、海沿いの公園にはカラフルなウォータータンクのオブジェと、いたるところにアート作品が展示されている。「この角を曲がるとどんなアートが現れるんだろう」、そんなワクワク感が旅人を刺激する。
大分の別府といえば、日本有数の温泉地。湯けむりのイメージはあっても、"アート"とはなかなか結びつかない。しかし別府は年々、アートシティとしての発展を続けている。そのきっかけを作ったのが、アートNPO、ベッププロジェクトの発起人であり初代代表の山出淳也だ。欧米でアーティストとして活動をしていたが地元大分に戻り、芸術祭『混浴温泉世界』を発起したのは2005年だった。国内外のアーティストが別府を訪れ、滞在し、制作、展示をする。市民を巻き込んで制作するアーティストもいた。住民たちも年々関心を持つようになり、いまでは県や市、文化庁からも協力を得る。別府はもともと、居住者が日々温泉に通い、自然に裸の付き合いをする町湯文化。古くからの港町なので、地元の人々の多くは「来るもの拒まず去るもの追わず」の精神。アートシティとしての発展は、そういった気風も関係しているのかもしれない。
アートをもっと日常に根付かせるために近年強化するのが、アーティストへの支援。アトリエと住居を格安で貸し出す清島アパートの運営や、アート制作者向けの相談所を設置、芸術文化イベントに対する補助制度もある。将来的に別府市人口の1パーセントがアーティストやクリエイターになることを目指している。『アートフェアベップ』や、『オルタナティブ・ステート』もスタート。レガシーとして作品を残していこうと、半年ごとにアートピースが生まれている。パリで活躍するアーティスト、サルキスによる光のアート『別府の天使』や、持ち寄った植物を住民みなで育てる、栗林隆による植物園型作品『植物元気炉』がその一例。開かれたアートで市民を巻き込みながら、別府は訪れる人の感性を日々刺激している。
会期:会期終了
別府国際観光港、旧フェリーさんふらわあ乗り場 、BEPPU STUDIO 01、清島アパート
開催時間:11:00~18:00 ※21日のみ13:00~18:00
料)¥1,500(前売)、¥2,000(当日)
0977-22-3560
https://artfairbeppu.com/
ガレリア御堂原
Galleria Midobaru
作品に囲まれて、美術館気分でステイ。
アート探索の拠点にぴったりなのがガレリア御堂原。高台から望む湯けむり街×海の景色もさることながら、館内にある70以上のアート作品は必見。別府の写真をコラージュした西野壮平の作品や、大巻伸嗣の球形オブジェなど、すべてオーダーメイド。館内アートツアーに参加した後は半露天風呂へ。絶景とアートに囲まれ温泉に浸かる至福のひとときを。
Galleria Midobaru
大分県別府市堀田6組
0977-76-5305
全35室 全室温泉付き スタンダード¥44,000~、デラックス¥49,500~
※別途入湯税1人¥150 朝食¥4,840
https://beppu-galleria-midobaru.jp/
*「フィガロジャポン」2024年11月号より抜粋
photography: Yuichiro Hirakawa