パリ、サントノーレ通りにオープンした
Moynat(モアナ)とは?
Travel 2012.02.15
大村真理子の今週のPARIS
サントノーレ通り348番地。忽然とという感じに、実に立派な構えのブティック、モアナが昨年末にオープンした。耳慣れない名前だが、その歴史は1849年に遡る。サヴォワ出身のポーリーヌ・モアナがパリにやってきて、旅行用トランク・鞄を製造するアトリエと組んで仕事を始めたのがこの年。そして1869年に彼女はモアナの名前でフランス座広場の5番地にブティックを開くのだ。といっても、今やこの住所は存在しない。というのも、これはまだオペラ座も完成していず、オペラ通りも存在しない時代のことだったから。
昨年11月、サントノーレ通り48番地にオープンしたモアナ。
19世紀末に開店したモアナは、パリの紳士淑女で賑わっていた。
1875年完成のオペラ座とサントノーレ通りを結ぶオペラ通りが開かれたことで、1878年からブティックの住所はオペラ通り1番地に(1976年閉店)。イギリス式トランクが売りもので、上がカーブした、堅牢だが軽いトランクがモアナの評判の品。早い時期から防水加工についての特許を有し、長い歴史のなかで、その他画期的な品をさまざま開発した革新的なメゾンだった。
古いトランクはメゾンの財産。モアナ・コレクションより、1909年から1912年の車用トランク。
新しいサントノーレ通りのブティックで販売されている品に復刻品はないが、どのバッグにも職人技と過去のクリエイションのエスプリが盛り込まれている。メゾンの再開にあたって、ブルゴーニュにアトリエが設けられ、腕の立つ優秀な職人が集められたそうだ。新作のひとつには、創業者へのオマージュでポーリーヌの名が捧げられた。彼女、どんなワンダーウーマンだったのか。写真が残されていないのが残念だ。ブティックの2階では、モアナのイニシャルMをあしらったバッグが販売されている。これは1920年代からトワルのトランクに使われていたロゴ。そのモチーフを復活したバッグは、麻をベースにシルバーをあしらった素材で、Mの文字に3D効果を施してあるのが、新しい。
ポーリーヌと命名されたバッグ。
なお2階には過去のトランクも展示。1925年にパリで開催されたアールデコ展に出品され、複数の賞に輝いたという鋲が模様を描く赤い革のトランクをみることができる。輝かしい歴史をもつメゾンのルネッサンス。オーナーはベルナール・アルノー氏だ。
エントランスの吹き抜けを利用し、新旧のクリエイションを美しく展示している。
348, rue Saint Honoré 75001 Paris
Tel. 01 47 03 83 90