世界から大勢が集まるパリコレ。
この期間、面白い展覧会が開催される。
Travel 2011.02.23
大村真理子の今週のPARIS
3月1日から9日まで開催される次回のパリコレクション。毎度のことだが、バイヤー、ジャーナリストが世界各地から集まる。パリ市内のギャラリーでファッション関係の興味深い展覧会をこの時期に観ることができるのも、年に2回のパリコレ期のことが多いのも当然だろう。
その中から、まずは『ヴィクトワール・ドゥ・カステランヌ Fleurs d'exces』展を紹介しよう。これはディオール・ジョワイユリーの新作発表ではない。彼女が彼女の名前で制約なしに創作した作品の展示である。
ホワイトゴールド、ラッカード・シルバー、ダイヤモンドが素材のブレスレット。これはスモーキークォーツのボール状の台座に納めてオブジェに。
かつてシャネルでコスチュームジュエリーをデザインしていた彼女。ディオール・ジョワイユリーでは、圧倒的なボリューム、楽しい遊び心をダイヤやエメラルドといった本物の宝石を使ってクリエイションをしている。そして新しい素材や機械仕掛けの導入などにより、ハイジュエリー界に彼女が与える影響は計りしれない。
左:「Opiom Velourosa Purpra」ルビーを使用したネックレス。右:「Extasium Ethero Coitus」ヒスイの器の中に、ふたつの指輪(雄花と雌花)。
ギャラリーでの展示は、彼女の溢れる創作欲から生まれた10点。もちろんすべてが1点ものである。リング、ネックレスといったジュエリーが休息中!というイメージで台座とともにオブジェとして展示される。買い占めたくなるファンタジー。価格が気になるが、あいにくと非公開だ。
トゥーマッチなほどの圧倒的なボリュームが特徴のヴィクトワールの創作。もしムッシュ・ディオールが生きていたら、彼女のようなジュエリーをデザインしていたのかもしれない。クリスチャン・ディオールがオートクチュール界にデビューしたときのことを思い出してみよう。
1947年春夏コレクションから、バー・スーツ。
PHOTO OBLIGATOIRE : LAZIZ HAMANI
ニュールックと呼ばれる1947年春夏コレクションだ。モデルたちのドレスは1着に70メートル以上もの布を使ったといわれるほどボリュームたっぷり。その時のショーのレポートによると、クチュールサロンで服を披露するモデルが、くるりと回転するとスカートの裾が灰皿のスタンドをなぎ倒したとか。"超"というDNAを持つメゾンなのである。
この"超"を含むメゾンのアイデンティティをたっぷり観賞できるのが、ボン・マルシェで3月26日まで開催中の『クリスチャン・ディオール』展だ。メゾンの長い歴史の中から、伝説的な作品を展示。その中には、もちろんファーストコレクションで発表されたウエストをキュッと絞ったジャケットとボリューム豊かなスカートの組みあわせのバー・スーツも。
1997年春夏コレクションから、デイオゼラ・スーツ。
PHOTO OBLIGATOIRE : LAZIZ HAMANI
ムッシュの遺産を引き継ぎ、より豊かにしているのが現在のADであるジョン・ガリアーノ。彼のクリエイションも"超"という文字が似合い、ディオールのDNAを共有する正しい跡取といえる。この展覧会で、そのふたりの繋がりを展示の服、ビデオによって再確認できる。
偶然にもディオールがらみの話題が続いたところで、もうひとつ。有名なクチュリエなので彼の作品をめぐる出版物は多数存在する。その中でも、白いシルクの優美なドレスのウエスト部分がアップで表紙を飾る1冊が美しい。1980年代に出版されたもので、カバーを含めて撮影をしたのはカメラマンのサシャである。
『マリ・クレール』誌から。20~30年前に撮影されているが、サシャのポエジー満開の写真は古びる気配なし!
奇しくも彼女の写真展もパリコレ期間中に見ることができる。オランダ出身のサシャは、1970年代から90年代にパリをベースに主にフランスの『マリ・クレール』誌のファッションページを多く手掛けた。この時期にモード関連の仕事についていた人なら、必ずやいまも記憶にとどめている彼女の写真が何点かあるはずだ。フェルメールが得意とした斜光、ゴッホが得意とした逆光。これが秘密と彼女が明かす光の美しい写真の数々を、この展覧会で観賞できる。
左:1971年の『The Sunday Times Magazine』誌。有名なモデル、パット・クリーヴランドが表紙。右:1979年の『Femme Pratique』誌の表紙。ジャンポール・ゴルチエのドレスをイラクのサマラタワーの前で撮影。
それにしても被写体となっているモデルたちのすばらしいこと。サシャは特にトップモデルを好んで撮影したわけではないと聞くが、彼女が活躍した時代は、現在の有名モデルたちとは存在感の異なるトップモデルたちの時代でもあったのだと、つくづく・・・。
彼女の仕事が気にいったなら、出版社Chèneから発売された写真集をぜひパリ土産に買って帰ろう。
Chène社から1月に出版された作品集(59.90ユーロ)。展覧会場、市内書店にて販売されている。
3月2日~26日
Gagosian Gallery
4, rue de Ponthieu 75008 Paris
Tel. 01 75 0005 92
開)11時~19時
休)日、月
http://www.gagosian.com
『Exposition Christian Dior』
2月26日~3月26日
Le Bon Marché
24, rue de Sèvres 75007 Paris
Tel. 01 44 39 80 00
開)10時~20時(月~水) 10時~21時(木、金)
休)日、祭
http://www.lebonmarche.fr
開催中~3月20日
Institut Neerlandais
121, rue de Lille 75007 Paris
Tel. 01 53 59 12 40
営)13時~19時
休)月
料金:4ユーロ
http://www.institutneerlandais.com