ヴァンドーム広場から
舞踏会のジュエリーが生まれる。

Travel 2011.08.17

icon_paris.jpg 大村真理子の今週のPARIS

装丁も内容もおしゃれな本を出版しつづけているアスリーヌ出版社。最近、分厚くて重いけれど、ぜひとも入手したい1冊が発売された。タイトルは『舞踏会(Bals)』(130ユーロ)。20世紀に開催されたグラマラス&ゴージャスで有名なプライヴェートパーティや仮装舞踏会をいくつも紹介している。

本文は英語なのだが、特に文字を読まなくても、よくぞここまで集めた!と讃えたくなるほどの珍しい写真の数々にうっとり。それらを見ると、オートクチュールのドレス、ハイジュエリーを、いかに王室や社交界、そしてセレブな女性たちが舞踏会のために必要としていたか、そして今も必要としているのかがよくわかる。煌めくシャンデリアの下、着飾った男女は舞踏会にあってはエキセントリックであるほど強い輝きを見せている。庶民には夢物語としか思えない桁外れの別世界だが、その美しいこと! 


110817paris_01.JPG表紙は1972年に開催された「シュールレアリストの舞踏会」でのロスチャイルド男爵夫妻。

オートクチュールのショーが開催された初夏のパリ。この本の出版と連動してヴァンドーム広場のジュエラー、ヴァン クリーフ&アーペルは本でも紹介されている5つの伝説的な舞踏会にインスパイアされたハイジュエリーのコレクションを発表した。チャーミングな舞姫が舞踏会の案内役、という発想からデザインされたのは、ハートシェイプ・ダイヤモンドを顔にあしらった美しいダンサーたちのクリップだ。では、以下に舞踏会を時代順に紹介しよう。

1903年にサンクトぺテルブルグで開かれた"冬宮殿の舞踏会"。テーマ「17世紀のロシア宮廷」にのっとり、女性たちは毛皮で縁取られ刺繍で飾られたロシアの民族衣装を身につけて参加した。どの衣装にも無数の宝石がきらきら!! というのも、この舞踏会のために、女性たちは手持ちのジュエリーから宝石をはずして、衣装に縫いつけたのだ。これが帝政ロシア最後の豪華絢爛な舞踏会となるとは夢にも思わず・・・。


110817paris_02new.jpg上奥左、上奥右:サンクトペテルブルグの壮麗な冬宮殿にて。 上中左、上中右、上:テーマ「冬宮殿の舞踏会」から。舞踏会へと誘うダイヤモンドのバレリーナは、チュチュのしなやかさを感じさせるすばらしい技術に脱帽だ。指輪「プロヴィダンス」の中央に輝くのは20.13カラットのコロンビア産シュガーローフカット・エメラルド。 ©Archives Maison Boucheron-photo Yanni ck Le Merlus

時は流れ、1951年。"世紀の舞踏会"がヴェニスを舞台に開催された。超富豪シャルル・ドゥ・ベステギがヴェニスに捧げたこの仮面舞踏会の招待客は、誰もが趣向をこらした衣装で出席。そうした人々の到着をヴェニス市民が見ることができるようにと、ベステギは宮殿の裏手の広場に仮設スタンドを設けたとか。


110817paris_03.jpg上奥左、上奥右:会場となったラビア宮殿にゴンドラで乗り付けるゲストたち。この一夜のために衣装だけでなく、それに合わせた帆船も仕立てさせたという客も! ©Rue des Archives/Agip 上中右、上左、上右:テーマ「世紀の舞踏会」から。上左は紫色のサファイアが美しい羽のスカートが開閉するブローチ。上右のピンクサファイアとダイヤモンドの扇のブローチも開閉する。開催地ヴェニスらしく、仮面をモチーフにしたジュエリーも多い。

舞踏会というとヨーロッパのイメージが強いが、1966年にニューヨークで催された"黒と白の舞踏会"も、語り継がれる話題の持ち主である。『冷血』がベストセラーとなった作家トルーマン・カポーティが、"アメリカで最も有名な人物"である自分の成功を祝してのものだ。黒と白がドレスコード。アメリカのハイ・ソサエティーとヨーロッパのジェットセッター、それにハリウッドのセレブたちなど500名を彼は"世界で最も著名な人々"として招待した。となると招待されなかった人々はあわててNYを留守にしたり、出席を装ってヘアドレッサーに予約をいれたりといった、さまざまなエピソードが残っている。


110817paris_04.jpg上奥:ニューヨークのプラザホテルのボールルームを埋め尽くすのは、ドレスコードに則り白と黒の装いで身を包んだ紳士淑女。 ©Eliott Erwitt/Magnum Photos 上中左、上中右、上:テーマ「黒と白の舞踏会」から。 上中左はアールデコスタイルのブローチ。このテーマのジュエリーには白いダイヤモオンドと黒いオニキスが多く使われている。

大勢を敵に回す結果になったカポーティーと異なり、常にパーティを成功させていた名ホストはアレクシス・ドゥ・ルデ男爵である。現在はロスチャイルド家が暮らすパリのサン・ルイ島に建つランベール館が、彼のかつての屋敷住居で、有名な1969年の"オリエントの舞踏会"もこの館で繰り広げられた。屋敷を赤の装飾で東洋的にまとめ、館の入り口の左右には巨大な張りぼての象。いつもながら、ゲストが到着する前にブーケというブーケに香水を吹き付けて・・。
 

110817paris_05.jpg上奥:1969年12月5日、パリのランベール館にて開催された。 ©ADGP Paris 2011 上中左、上中右、上左、上右:テーマ「オリエントの舞踏会」から。オリエンタル・ダンサーのブローチをはじめ、ジュエリーはとてもカラフル。

5つめの舞踏会は、1971年にパリから25キロほど離れたロスチャイルド家所有のフェリエール城での"プルーストの舞踏会"だ。これは作家マルセル・プルーストの生誕100年を祝うもので、ウィンザー公爵夫妻、女優マリサ・ベレンソン、エリザベス・テイラーなどゲストは800名。それぞれに『失われた時を求めて』にアイデアを求めた豪奢な装いで、幻想的な森の中に19世紀に建てられた城でうたかたの時間を過ごした。


110817paris_06.jpg上奥:招待客のひとりである女優マリサ・ベレンソンは、プルーストの同時代の人物でエキセントリックなことで知られたカザティ侯爵夫人に扮して。 ©Cecil Beaton/Conde Nast/Corbis 上中左、上中右、上左、上右:テーマ「プルーストの舞踏会」から。ダンサーは「失われた時を求めて」に登場するロズモンド。ベルエポックのエレガンスを感じさせるロマンティックなジュエリーの数々。

この本の中でもヴァン クリーフ&アーペルのジュエリーをつけたデイジー・フェローズやエレーヌ・ロシャスなどが紹介されているように、1906年の創業以来、舞踏会に招待される女性たちの夢を叶えるジェラーなのだ。

この新しいハイジュエリーのコレクションは、伝説の舞踏会へ捧げるオマージュ。20.12カラットのコロンビア産ダイヤモンドや17.92カラットの天然パールといった世界中から集められた稀少な石が、職人たちの素晴らしい技術によって洗練を極めた眩いジュエリーへと仕上げられている。

Van Cleef & Arpels

22, place Vendôme 75001 Paris

Tel. 01 42 86 00 25


Assouline
35, rue Bonaparte 75006 Paris
Tel. 01 43 29 23 20
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