モード界を刺激し続ける、マルタン・マルジェラの回顧展。

Paris 2018.04.04

ガリエラ美術館でメゾン マルジェラの創立者、マルタン・マルジェラの回顧展『Margiela / Galliera 1989-2009』が開催中だ。メゾン マルタン マルジェラ(現メゾン マルジェラ)のショーでモデルたちがよく顔を隠していたように、マルタン自身も匿名性を貫いてきた。インタビューに答えるのも彼個人ではなくデザインチームとしてだった。顔も声も知られていない彼。しかし、展覧会ではクリエーションのひとつひとつに彼の存在を感じることができる。

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展覧会のポスター。地下鉄駅によく似合う。

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マルタン・マルジェラという名前に思い浮かべるのは4本の糸? それとも「タビ」シューズ? ©Julien Vidal/ Galliera/Roger-Viollet

マルタン・マルジェラはベルギーに生まれ、アントワープの王立芸術学院でモードを学んだ。ジャン・ポール・ゴルチエのアシスタントを経て、1988年にメゾン マルタン マルジェラ(現メゾン マルジェラ)を設立した。2002年にディーゼルの創設者であるレンツォ・ロッソがプレジデントを務めるOTBグループの傘下に入り、ブランド設立20周年を迎えた翌年2009年末に、マルタン・マルジェラ自身はメゾンを去っている。この回顧展が創業の1989年から2009年まで、というのはそれゆえだ。

展覧会は130体を時代順に展示。広いスペースをうまく区切り、通路に沿って進むことで、自然に年代順に見ていける造りとなっている。ケースに収められず、しかも手に取れる近さで服を仔細に見ることができるのがうれしい。会場ではショーのビデオを流し、さらにマルタン・マルジェラという名前が大勢の記憶に残したアイテムや活動をトピックス的に紹介していくという構成。展覧会のアーティスティック・ディレクションは、マルタン・マルジェラ本人が務めている。会場構成はアニア・マルチェンコが担当した。

マルタン・マルジェラは自己のメゾンの仕事と並行して、1997〜2003年にかけてエルメスのアーティスティック・ディレクターを務め、12のコレクションを発表した。パリ市装飾芸術美術館(MAD)で、『マルジェラ、エルメス時代』展が3月22日からスタート。これはアントワープのモード美術館MOMUで昨年春に開催されたものがベースとなっている。デザインチームによるコレクションを通じて、あるいはメゾン マルジェラのクリエイティブ・ディレクターであるジョン・ガリアーノによる仕事を通じてしか、マルタン・マルジェラという人物像を知らない人も多い時代となっている。この2つの展覧会が今同時に開催されるのも、そうした背景ゆえだ。ぜひこの機会にパリで2つの展覧会をハシゴしよう。

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ガリエラ美術館。白いカーペットはトロンプ・ロイユで、会場の入り口は右手の回廊をたどって行く。1階のガラスの大窓は、白くペイントされ落書きされている。トロンプ・ロイユと白のペイントというマルタン・マルジェラの世界を構成する有名な要素のうちの2つに、会場に到着するや早速に出迎えられるのだ。

1989〜1994年、マルタン・マルジェラのマニフェスト

来場者は会場に入るや、マルタン・マルジェラの革新的クリエーションに驚かされることになる。約30年も前に遡るファーストコレクションは、いまの時代でも衝撃的なのだから。1989年から1994年の5年間に発表された最初の10コレクションに、その後の仕事に読み取れるマルタンのマニフェストがこめられているという。“デストロイ”と形容されたように服を解体した服作りをし、裏を表に出し、未完のままで……さらに巨大あるいは窮屈なほどに小さいという極端な寸法の服作り、立体ではなく平らな2Dの服というように、コンセプチュアルなアプローチでこの5年の間、服の概念を覆し続けた彼。衝撃的なクリエーションは驚きであってもチープでも下品でもなく、エレガンスとエモーションがあり、時にユーモアも感じられた。

毎シーズン、テーマを変えて発表されるのが通常だが、マルタン・マルジェラはひとつのテーマを複数シーズンかけて追求、展開。また、毎回ショー会場に彼が選んだのは、使われていない駐車場や地下鉄駅など、当時のクリエイターの誰も思いつかないような場所、というように、発表する服以外にもファッション界に新しい風をもたらしたのだ。

以下、マニフェストとなった10のコレクションを時代順に紹介しよう。

『Margiela / Galliera 1989-2009』展
会期:開催中~2018年7月15日
Palais Galliera
10, avenue Pierre 1er de Serbie
75116 Paris
開)10:00~18:00(木 21:00)
休)月、5月1日
料金:10ユーロ

réalisation:MARIKO OMURA

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