XXXLサイズTシャツから生まれたプア・オートクチュール。
Paris 2018.07.10
パリ市立モード美術館館長のポストを去り、J.M.ウエストンのアーティスティック・ディレクターに就任したオリヴィエ・サイヤール。モード史家の彼はスタジオ・オリヴィエ・サイヤール(略してSOS)から、自身の活動を発信し続けている。この7月のオートクチュール週間には、初のオートクチュール・コレクションを発表した。
モデルの着付けをするオリヴィエ・サイヤール、モデルは彼が過去に開催したモードのプレゼンテーションでもおなじみのひとり、アクセル・ドゥエ。
題してModa Povera(モーダ・ポーヴェラ)。プア・モードである。舞台裏も丸見えの小規模なスペースで発表されたのは、どれもXXXLサイズなどのTシャツ……なのだが、ドレープ、プリーツ、タックといったフランスのオートクチュールで用いられるサヴォワール・フェールを生かし、どれも巧みな手法で見事なクチュール・ピースへと変身させられている。黒、白、グレー、グリーン、ボルドー、ブルーマリンといったベーシックな色に、ときどき赤、オレンジ、ピンクが混じり……さらに紺とグリーンの2枚重ねなども。発表されたのは30点弱。黒いリボン結び以外、刺繍もなければ羽もなく、クチュール的装飾はゼロ。布そのものがサヴォワール・フェールによって装飾的様相を呈している。
photos:Giovanni Giannini
オートクチュールとは何?と考えさせる一方で、ショーはまるでかつてのクチュールサロンで行われるショーのように、プライベートな雰囲気。そして、その昔、番号札を持ってモデルが会場を歩いたことを思わせるような、数字のポシェットというアイデアもひねりが効いていて面白い。目の前をふたりのモデルが交互に、ときには共にスペースを歩き……モデルのスマイルつきで、至近距離で特別に服を見ることができるという贅沢な時間であった。オリヴィエのクリエイティヴィティ、知識、視線……次はいったい何をどう料理するのだろうと、早くも来年1月のクチュールショーに大きな期待が。
このコレクションにおいてオリヴィエのクリエーションを助けたのはマダム・グレのスタジオでドレープを長年担当していたマルティーヌ・ルノワール、そしてマダム・グレ他のクチュールメゾンでモデルを務めていたアクセル・ドゥエの動きだそうだ。
photos:Giovanni Giannoni
réalisation:MARIKO OMURA