花薫る光のシャワーを浴びるような、カルティエの香り。
Paris 2018.10.25
カルティエから新しいオードパルファムが発表された。その名はCarat(キャラ)。ダイヤモンドの計量単位で、1カラットは0.2gだ。宝飾メゾンの香水にこれほどピッタリの名前が、これまで使われていなかったとは少々意外では?
ホログラムの輝きにも似た香りを収めるボトルはシンプルなアールデコスタイル。バゲットダイヤを思わせ、いかにもカルティエ!
20世紀初頭、カルティエの顧客にプリンセス・ビベスコなる女性がいた。エドゥアール・ヴィヤールや貴族の肖像画を得意とするジョヴァンニ・ボルディーニたちが描いたとても優雅で美しい女性である彼女が、カルティエのハイジュエリー部門の責任者でパンテール・ジュエリーの生みの親であるジャンヌ・トゥーサンに会ったときにこう言ったそうだ。「あなたは誰なの? ダイヤモンドの香りがするあなたって」と。この言葉に導かれ、カルティエの専属調香師マチルド・ローランがダイヤモンドの放つ輝きを香水で表現したのがキャラである。屈折率の高いダイヤモンドは石の中で光が反射し、その光が別の面にあたって屈折して反射して……と、きらきら美しい輝きを放つ。屈折角度の違いで、ダイヤモンドにあたった光は虹さながらに7色の光となることから、マチルドは7種の花を原料に用いてピュアな白い香りを創り、ダイヤモンドの輝きを表現したのだ。香りによる光へのオード、と彼女は新作を表現。
赤、橙、黄色、緑、青、藍、紫。レインボーに香る花は、スミレ、アイリス、ヒヤシンス、イランイラン、水仙、シェーヴルフォイユ、チューリップ。これがひとつにまとまり、ダイヤモンドのような白い輝きの香りとなる。限定ブティックに設けられたキャビンで香りを体感できる。
花々の芳しいグリーンっぽい匂いに、思い浮かべる花の名は人それぞれ。癖のないピュアな芳香は、さまざまなタイプの女性、あらゆる年齢の女性に好まれそうだが、あいにく当分日本では発売予定がないという。パリではマレ地区でこの香りの限定ブティックが11月4日まで開かれていて、ミル・ファセットと命名されたキャビンの中でキャラを色と音で体験できる。ダイヤモンドの輝きをイメージした店内の中央に並ぶ香水が入った大きな3本のアンプルは、香水のラボではボンボンと呼ばれるものだという。携帯用の小さな容器にこのボンボンから香りを詰めて、香水の購入者にプレゼントされるというのも心がくすぐられる。
遠くからでも、すぐに所在地がわかるポップアップストアの外観。
白くまとめられた店内に入るや、キャラの輝きに包まれる。
店内の“ボンボン”の中の香りを詰めた携帯ボトルが、ロット番号を記した証書と共に購入者に贈られる。
会期:開催中〜2018年11月4日
121, rue Vielle du Temple
75003 Paris
営)11:00(金土 10:00)〜20:00
休)日
réalisation:MARIKO OMURA