こんにちは、吉田パンダです。突然ですが昨秋引っ越しをして、20年近く住んだパリを離れました。理由はいろいろあるんですけど、以前から庭のある家に暮らしてみたかったのと、長年パリで借りていた部屋をオーナーが売却するというので、ちょうどいいタイミングかなと。場所はパリからセーヌ川に沿って西に1時間、ノルマンディー地方はモネの庭で有名なジヴェルニー、、ではなくて、そのお隣のヴェルノンという町です。
やはり印象派に愛された場所で、モネがジヴェルニーに落ち着いた頃、ヴェルノンにはその友人でもあるピエール・ボナールが暮らしていました。なぜヴェルノンを選んだかといえば、彼ら印象派に憧れたわけではなく(実はボナールのことは住んでから知りました、はい)、「ご縁があったから」でしょうか。まあ、ご縁と言ってもインターネットで探したんですけどネ(←お手軽だな)。いくつか物件候補があった中でここだけ話が驚くほどスムーズに進んだので、呼ばれていたのかなと。
で、なぜこのブログを書こうと思ったかなんですが、自分が庭に関する知識、経験がまるでなく(実家に小さな庭はありましたが、種ひとつ植えたことも、枝一本切ったこともありません。イチジクをつまみ食いしたくらい)、そんな状態での庭づくり、田舎暮らしの苦労を笑っていただこうかと。「人と自然が調和することの大切さ、エコライフ、心を豊かにするヒントがたっぷりのブログです♫」なんていう旗を挙げるつもりもなくて、もっと等身大な田舎暮らしレポートみたいな感じです。相変わらず、撮影がなければ家から出ないことも多い引きこもり。でも、ドアを一歩出るとそこに庭があるっていうのがいいんです。出ないけど(←オイ!)。夜はパリでは見られない、満天の星空が天井ですよ。
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というわけで、初回は庭を含めた我が家のスタメンをご紹介しましょう。まず、こちらが門からの入り口です。せまいっ!!車一台がギリギリ通れる幅。もちろん引っ越しトラックなどは入れませんので、門からひたすら運ぶことに、、。
狭い門からの小道を通ると、ノルマンディ地方の古い家に多く見られるコロンバージュ(木骨造)のシャトー・ド・パンダが見えてきました←シャトーじゃないし。画面中央、奥に見える石造りの館はウチではありません。いまは空き家のお隣さん。また、写真ではよくわかりませんが、家まではなだらかな下り坂になっています。庭の広さは120坪ほど。
写真中央に写っていた、青白キャラバン。アウトドア生活に憧れて、2017年に中古で購入しました。1970年、ベルギー製のヴィンテージキャラバンです。買って以来、一度も使ってません(←でました)。いや、言い訳がありまして、、、買ってすぐに牽引車との接続部をロックする鍵を探すため、キャラバン用品店に立ち寄ったのですが、このキャラバンを見てもらったところ、シャーシ(土台)が脆くなっていて長時間走行は危険だから、スクラップにした方がいいとアドバイスされました。そう言われても、引き取ったものをすぐにスクラップにするのも気が引けます。駐車場に置きっぱなしになっていたのですが、今回引っ越しを機に東屋として復活することに!
「東屋プロジェクト」はよかったんですが、この庭に置くまでが大変だったよ700kg。なぜなら、あの門からの小道を車で牽引しては入れなかったからです(狭すぎて曲がって入れない)。一度外で切り離し、人力で押しました。人力と言っても友達もいませんから嫁とふたりで挑戦したところ、これが動かない。道路もふさいでしまうし、手を離したら坂道を下りそうだし(ハンドブレーキの効きもあやしい)、もうどうしようもない。後ろからはクラクション。なんだよオイ、ジャン・クロード・ヴァンダムか誰か出てきて手伝ってくれよ、と筋肉の神様にお祈りしていたら、後ろでクラクションを鳴らしていたおばちゃんが出てきて、一緒に押してくれました。おばちゃんえらい、おばちゃんメルシー、おばちゃんヴァンダム! なんとか小道の途中までおばちゃんと押しましたが、庭の坂道はもう無理。後日力のありそうな若者2名を調達し、やっと、やっと設置できました。やれやれ。庭づくりする前からもう疲れているんですけど。早くも初回でギブアップ。
そんな苦労を乗り越えた49歳キャラバン、デュ・ロエック(メーカー名)。どうぞ中に入ってみてください。
ジャジャーン。この内装を見て、ひと目惚れしたんです。クッションカバーやカーテンまで、すべてオリジナルのまま。収納部の曲線やスカイ(合成皮革)の色使いも言うことなし。ここにいると、馬車とか往年の食堂車か何かに乗っているような(乗ったことないけど)、そんな気分になれます。電源も使えるし、晴れた日はここでコーヒーでも飲みながら、読書会はいかがでしょう。引っ越してから数カ月、まだ一度もそんな日はありませんが。だって寒いし、、。
トイレ、冷蔵庫はありませんが、キッチンとシンクはあります。一度も使ったことないけど(←もういいから)。
入ってすぐ右手にもソファベッドがあり、向かいと合わせて3人ここで寝られます。ご希望の方は編集部までご連絡ください(?)。
プラスチックの窓から眺める風景は、まるで涙でにじんでいるようだわ、と君は言ったね(妄想)。
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唐突ですが、こちらは道路側に住むお隣、マルセルおじいちゃんの庭。それはもう綺麗に整地して、トマトにアスパラまで作っているんです。ここまでキッチリとするつもりはありませんが、ハーブは植えてみたいですねえ。
庭には元から大きな樹が2本あって、ガレージ横にあるのはハシバミの樹。ノワゼットですね。「これはノワゼットの樹ですよ」と聞いた時は、ナッツ好きとしてうれしかったんですが、後日拾って食べたらおいしくありませんでした(笑)。グリルしてなんとか食べられる感じ。巷で売ってるノワゼットは丸々としているのに、ウチのはなぜか見た目ドングリ、、。枝がありすぎるのか、ノワゼットの味については要研究です。
樹の上には、誰かが巣を作っていました。そういえば、最近鳥を飼い始めたんです。「錦華鳥」という、ネコのように鳴く鳥。こちらもいずれご紹介します。
もう1本の大きな樹は桜です。不動産屋には山桜と言われたので、そうなのかも。サクランボのような実がなっていたので、来年食べてみます(←チャレンジャー)。
家の角にはピンクのバラ。いまは実になっていますが。だいぶ長く放っておかれていたはずですが、最初に家を見に来た時は元気に咲いていました。
窓にはフランスらしい鉄細工。この家を建てたオーナーこだわりの一品らしく、窓枠も18世紀のものをどこかから探してきて嵌めてあるとドヤ顔で話していました。いや、隙間風と虫喰いがひどいからね。見た目18世紀で、機能は20世紀にしてほしかったよ。さて、以上簡単ですが、現在の庭と家をご紹介しました。最近はもう、庭はこのままでいいかなと思ったりもするのですが(←ブログ終わる!)、果たして花やハーブを植えられるのか、土は耕せるのか、庭でバーベキューの夢は叶うのか、次回以降もどうぞチャンネルはそのままで。
photos et texte : PANDA YOSHIDA

写真家。長年住んだパリを離れ、現在フランスはノルマンディー地方にて、犬猫ハリネズミと暮らしている。庭づくりは挫折中。木漏れ日とワインが好きで夢想家、趣味はピアノ。著書に『いぬパリ』(CCCメディアハウス刊)がある。instagramは@taisukeyoshida