ヴェルサイユ宮殿、ふたりの王妃とひとりの寵妃の物語。

Paris 2019.05.16

ヴェルサイユ宮殿では「女性たちの時間」と題した新しい見学コースを、4月16日から提案。これを巡ることで、ヴェルサイユ宮殿を人生の舞台とした3人の女性たちの運命に出合える。これからの季節、庭の散歩も快適なので、この機会に久々にヴェルサイユ宮殿に足を伸ばしてみては?

改装終了。王妃の居殿はマリー・アントワネットが去ったまま。

2016年4月からの工事で閉ざされていた王妃の居殿。改修工事が終わり、見学が再開した。 防災設備、室温調整など新しい技術で城を守るために必要な大工事だったが、見学者の目を邪魔するもののない見事な仕上がりだ。

ルイ14世の夢を満載したヴェルサイユ宮殿が完成し、最初にこの居殿を使ったのは王妃マリー・テレーズである。彼女のために設けられた居殿だが、23才の若さで亡くなってしまったため1682年からたった1年暮らしただけだった。その後、王太子、そしてルイ15世妃マリー・レクザンスカ、ルイ16世王妃のマリー・アントワネットが使用した。寝室では出産も行われ、未来のルイ17世も含め王家の家族19名が生まれたそうだ。1789年10月6日、ヴェルサイユ宮殿に乱入した暴徒から逃げるべく、マリー・アントワネットが抜け出した扉は寝台脇の小さな左の扉からである。

壁の装飾など、現在見学する部屋で見られる内装は建築当時ではなく、主にマリー・レクザンスカの時代のもの。“夏仕様”の内装なのは、マリー・アントワネットがここを去ったところで居殿の歴史が止まったゆえである。

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王妃の寝室。嬰児取り替えなどの危険防止のため、王妃たちは大勢に見守られてここで出産しなければならなかった。© Château de Versailles, Thomas Garnier

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修復された寝室の天井。© Château de Versailles, Thomas Garnier

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いかにも女性の寝室らしい壁布のモチーフ。© Château de Versailles, Thomas Garnier

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王妃が謁見を行った貴人の間。© Château de Versailles, Thomas Garnier

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王妃に謁見をする人々の待合室だった大会食の間。エリザベート・ヴィジエ・ルブランが描いた有名な絵画『マリー・アントワネットと子供たち』が右の壁にかけられている。© Château de Versailles, Thomas Garnier

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王妃の護衛の間。暖炉の右側の扉は王太子の居殿への階段に通じている。© Château de Versailles, Thomas Garnier

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王妃ながら日陰の存在的マリー・レクザンスカ。

マリー・アントワネットの在位は19年。それに比べてルイ15世妃マリー・レクザンスカ(1703〜1768年)は王妃として43年間君臨したにもかかわらず、彼女の知名度はマリー・アントワネットに比べるととても低い。ルイ15世にまつわる女性として名がすぐに挙がるのは、美しい才女ポンパドゥール侯爵夫人であるが彼女は愛妾である。ルイ15世の妃は7歳年上のポーランドの王女マリー・レクザンスカで、1725年に結婚した。その2年後から1937年までの間に、ふたりは10人の子どもを授かる。その後、奔放な王から離れた場所に身を置いて暮らすことになるのは、繰り返しの出産で彼女の健康が危ぶまれたからとか。

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Alexis-Simon Belle作のマリー・レクザンスカの肖像画(1725年)。 Musée national des châteaux de Versailles et de Trianon. © Château de Versailles (dist. RMN - Grand Palais) / Christophe Fouin

王を妾たちに任せた彼女自身は、どのような暮らしを送っていたのだろうか。それを知ることができるのは、『マリー・レクザンスカのテイスト』と題した展覧会だ。

妃としての宮廷での義務はきちんと果たしつつ、子どもたちと暮らし、そして親しい友だちと趣味を分かち合い音楽、会話、ゲームなどを楽しんでいた彼女。毎日何時間も自室にこもって、祈り、瞑想、針仕事、そして絵を描いて時間を過ごす習慣があったという。

この展覧会は6部屋、6つのテーマで展開。 彼女自身が描いた作品も展示され、彼女の芸術的嗜好を堪能できる。

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展覧会の第1室。王との間に生まれた子どもたちの肖像画を展示。© Château de Versailles, Thomas Garnier

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第1室に展示されている1728年頃の若きルイ15世(1710〜1774)の肖像画。Versailles, musée national des châteaux de Versailles et de Trianon © RMN-GP (Château de Versailles) / Gérard Blot

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王妃のお気に入りの画家ジャン=バティスト・ウードリィが1749年に描いた5部作『五感』より、臭覚。会場では5作品を鑑賞できる。musée national des châteaux de Versailles et de Trianon. © RMN-GP (Château de Versailles) / Franck Raux

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マリー・レクザンスカ王妃が描いた作品『une ferme, d’après Jean-Baptiste Oudry』(1753年)。額縁も興味深い。

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王妃を含め5名が共作した中国風絵画を展示する第3室。© Château de Versailles, Thomas Garnier

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ポーランド王オーギュスト3世から1737年に王妃に贈られたマイセンの陶器。

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王立セーヴル磁器工場で1757〜1758年に製造されたピンクの花器。

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ルイ14世と秘密結婚したマントノン侯爵夫人。

サブタイトルに“権力のコリドール”とつけられた『マダム・ドゥ・マント ノン』展。牢屋で世を受け、フランス国王の妻として死したフランソワーズ・ドービニェ・スカロン(1635〜1719)の数奇な人生を、没後300周年の今年、6つのテーマで辿る展覧会である。

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1670年頃、スカロン夫人だった時代のフランソワーズ・ドービニェ。Niort, musée Bernard d’Agesci, 2016.0.11/G.113 ©Thomas Garnier

マントノン侯爵夫人について駆け足で紹介しよう。その名をフランソワーズといい、両親が投獄されていた牢屋で生まれた。17歳で両親を失った彼女は、25歳年上のポール・スカロンと結婚。作家である夫の文学サークルで彼女も才知のほどを示す。しかし25歳で早くも未亡人となり、その9年後、ルイ14世と寵姫モンテスパン夫人の間に生まれた子どもの養育係に。教育に優れた彼女は、彼らの5人の庶子の面倒を見ることになる。1674年、城と土地を入手した彼女は、その地の名をとって王からマントノン侯爵夫人に叙される。彼女が48歳の時、ルイ14世妃マリー・テレーズが亡くなり、王と秘密結婚。ヴェルサイユ宮殿内、王の部屋の近くに居殿を得る。1715年、王が亡くなる前日に彼女は宮殿を去り、サン=シールへ隠居。その地には彼女が1686年に開いた資産のない貴族の子女を教育する寄宿舎があった。4年後、84歳の人生を閉じる。

展覧会場はかつてマントノン侯爵夫人が暮らした場所。6つのテーマを展開する3部屋の壁が、彼女の時代と同じ布で覆われているのも見どころのひとつだ。

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壁を覆う布はマントノン侯爵夫人の時代と同じものの複製である。© EPV/ Thomas Garnier

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モンテスパン侯爵夫人とルイ14世の間の子どもふたりとフランソワーズ・スカロンの絵画をこの部屋で見ることができる。© EPV/ Thomas Garnier

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会場では、イザベル・ユペールがマントノン侯爵夫人を演じた映画『サン=シール』(2000年)の抜粋が上映されている。© EPV/ Thomas Garnier

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信仰心篤い彼女は王妃がなくなるまで、ルイ14世の愛を受け入れなかったそうだ。Françoise d’Aubigné, marquise de Maintenon, en sainte Françoise Romaine D’après Pierre Mignard (1612-1695)、Versailles, musée national des châteaux de Versailles et de Trianon, MV 4268 © Château de Versailles (dist. RMN-Grand Palais) / Jean-Marc Manaï

Château de Versailles
Place d'Armes, 78000 Versailles
開)9時〜18時30分
休)月
料金:18ユーロ
www.chateauversailles.fr

réalisation:MARIKO OMURA

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