シャネルのハイジュエリーコレクション、ロシアの魅力。

Paris 2019.07.26

7月2日、シャネルのオートクチュールコレクションが開催されたグラン・パレは巨大な図書館に変身した。同時期、グラン・パレの別の会場はシャネルのハイジュエリーコレクション発表のためロシア帝国の栄華が輝くスペースに姿を変えていた。最新コレクションのタイトルは「ル パリ リュス ドゥ シャネル」。ガブリエル・シャネル自身は一度も旅したことがないが、彼女の人生とクリエイションに大きな関わりをロシアは持っている。1917年の革命以前のロシア帝国、そして革命後ロシアからの亡命者が集まった “パリのロシア”。この両者が彼女にとってのロシアである。

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グラン・パレ内、ル パリ リュス ドゥ シャネルの会場。ここはバレエ・リュスの舞台裏がイメージ。

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ディミトリ大公や、ロシア出身の友人らとの写真を、ジュエリー、エルネスト・ボーがロシアをテーマにクリエイトした香水「レ ゼクスクルジフ キュイール ドゥ ルシー」などとともに展示。

ガブリエルを取り巻き、彼女と深く関わったロシア人たち。例えば、初の香水シャネルN°5を生み出したエルネスト・ボーはロシア宮廷の調香師だった。短くも美しく燃えた愛の相手、ディミトリ・パヴロヴィッチ大公。最後のロシア皇帝ニコライ2世の従兄弟の彼は、彼女にロシア宮廷のモチーフやフォルムを紹介する。そもそも彼女にスラヴの魅力を説いたのは友人のミシア・セールで、彼女はポーランド人であるが、彫刻家の父の不倫の愛ゆえにサンクトペテルブルクで誕生し、母親は彼女を生んだ直後に死亡した。親友のこのドラマティックな人生の始まりもまた、ガブリエルがロシアへの夢や憧れを含ませる要素のひとつだったかもしれない。そのミシアに紹介されたバレエ・リュスのディアギレフを “最も魅力的な男友達” と気に入ったガブリエルは、ミシアに内緒で彼の公演を密かに後援。そしてバレエ・リュスを介して出会った作曲家ストラヴィンスキーにも、彼女は大きな愛情を注いだ。

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ディミトリ大公とテーマ “ブレ マリア” のブローチ。

ロシア革命を逃れて、パリ8区のダリュ通りにあるアレクサンドル・ネフスキー正教会の周辺に集まった宮廷人、貴族、芸術家といった人々は、パリでさまざまな職についた。この時代、クチュールメゾンやモード写真でロシア人モデルが活躍したのもそれゆえである。ディミトリ大公の姉マリア・パヴロヴナ大公妃はガブリエルの援助で開いた刺繍のアトリエ “キトミール” で、自らロシア刺繍をクチュールドレスなどに施していた。

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ブレ マリア” のティアラ。ピンクスピネル、マンダリンガーネット、トルマリン、ダイヤモンドの愛らしい花々。

ロングチュニック、スモック、ルバシカ風のゆったりしたブラウス、毛皮裏のコート……1920年代、ロシア的な表情がガブリエルによるクチュールドレスに見られるようになり、そして彼女のアパルトマン内部にも、ロシア的要素を見ることができた。それはロシア帝国の国章に通じるモチーフである双頭の鷲が彫られた大きな鏡だ。

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テーマ エーグル カンボン” のネックレス。双頭の鷲の下に15.25カラットのエメラルド・カットのダイヤを中央においたペンダントはブローチとしても使用できる。

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サラファンというロシアの民族衣装がテーマのネックレス。襟のようなフォルムにジュエリーがレース模様を描くよう。モチーフはカメリアだ。

この「ル パリ リュス ドゥ シャネル」はファインジュエリー クリエイション スタジオのディレクター、パトリス・ルゲローによる夢のように豪華で美しいコレクションだ。ガブリエルが夢見たロシアをインスピレーション源に、フォークロール、ルバシカ、エーグル カンボンといったテーマによる合計63点。シャネルの工房が誇る繊細な職人技術が生み出すジュエリーは、透明感と輝きにあふれている。ネックレスに変身するヘッドピース、3つのクリップとしても使えるメダルのネックレスといった驚きを隠したジュエリーも魅力的。ガブリエル・シャネルの起伏に富んだ人生は、尽きることのないインスピレーションの宝庫である。

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テーマ フォークロール” のカフ・ブレスレット。エナメルのベースの上で、ブルーサファイア、ピンクサファイア、マンダリンガーネット、ツァボライトガーネットのカラフルな石が民族ダンスを踊っているよう。

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テーマ ルバシカ” のネックレス。ダイヤモンドのカメリアの花が並び、中央には9.5カラットのアッシャーカット ファンシービビッドイエローダイヤモンドがボタンのようにあしらわれている。

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テーマ メダイユ ソレイユ” のネックレス。3つのブローチとしても使える。

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サラファン” のヘッドピースに変形するネックレス。

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テーマ ブレ ガブリエル” のイヤリング。ブレとは麦を意味し、ガブリエル・シャネルのロシアへ情熱のエピローグの象徴としてテーマに選ばれている。1967年モスクワの赤の広場でシャネルのショーが開催された。モデルたちはパリで待っていたガブリエルへのお礼として、束ねた麦を持ち帰ったのだ。その贈られたブーケを彼女は身近に飾っていたというエピソードがある。

réalisation:MARIKO OMURA

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