ヴィンテージリネンから生まれるモード【可愛いアップサイクリング】
Paris 2021.05.30
ボン・マルシェのメゾンフロアで限定販売が始まった「Maison Flore(メゾン・フロール)」のテーブルリネンやクッション。魅力あふれる品々をクリエイトしたのはフロール・ムーランだが、彼女のブランドのメインはメゾンの品よりモードアイテムである。ブティックもマレ地区に5月27日(予定)に開店するので、もう少し詳しくメゾン・フロールについて紹介しよう。
左:植物相を意味するフロールを名前にもつ創業者フロール・ムーラン。 右:ボン・マルシェで販売のプレイスマットには、ヴィンテージの縁取りレースやデッドストックの布を使用。photo:Mariko Omura(右)
小さな花を壁に飾ったチャーミングなブティック。オープンを待ち望んでいるのはオーナーのフロールだけでなく、オンラインショップで買い物をしていたファン、ブランドのインスタグラムのフォロワーも同様だ。小さなブティックの中にはアトリエが構えられ、彼女はそこで刺繍が施された昔のシーツやテーブルクロスなどをモードのアイテムにアップサイクリングする。これは北欧テイストのパリブランド「Eple&Melk」をデザインしていた彼女が、メゾン・フロールという名前で昨年始めた新たな冒険なのだ。
100%ヴィンテージ、100%パリでハンドメイドとうたうメゾン・フロール。ショーウィンドウのワンピースは450ユーロ。photos:Maison Flore(左)、Mariko Omura(中、右)
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マルセイユに生まれ育った彼女の曽祖母は刺繍職人だった。そして、そのサヴォワールフェールを伝承された祖母もまた、花嫁が持参するリネン一式(トゥルーソー)に刺繍を施す仕事を継いで……。
「その昔、娘の結婚が決まると母親たちは、嫁入り道具として持参するシーツ、寝巻き、テーブルクロスなどを町の刺繍職人のところに持ってゆき、イニシャルなどをオーダーしたのです。私の祖母も母に刺繍を教えたけれど、母の時代は花嫁がトゥルーソーを持参するという習慣は廃れてしまっていたので母は仕事を継ぎませんでした。祖母は私が生まれる前に亡くなったけれど、私、彼女が刺繍を施したシーツに包まれて眠っていたんですよ。私も母から刺繍だけでなく、編み物、洋裁を学びました」
とフロールは語る。祖母が残した手仕事の素晴らしい財産や、当時のレースなど。いまでは廃れてしまったテクニックが生かされた美しいシーツなどを見るうちに、フロールはいま、メゾン・フロールで行っているアップサイクリングを思い立ったという。古いテーブルクロスやシーツの刺繍を生かしつつ、汚れ、シミなどを避けて再利用可能な部分からフロールはデザインを考える。ワンピース、パンツ、ブラウス……これらアイテムがワードローブ一式を構成することから、フロールは “現代のトゥルーソー”と呼んでいる。
いまや貴重なサヴォワールフェールが生かされた刺繍を生かしたモードアイテムは、ハンドメイドの一点ものだ。photos:Maison Flore
左:祖母が残した50年代の縁取りレースを生かし、30年代のシーツを使ったブラウス。 右:アップサイクリングされるのを待つ古いシーツ類。いまや貴重なサヴォワールフェールが生かされた刺繍が魅力だ。photo:Maison Flore(左)、Mariko Omura(右)
麻、コットン、混紡のメティス。古いシーツの素材は、いまでは入手できないクオリティである。アップサイクリングの別の方法として、これらをイタリア、ドイツ、フランスからのデッドストックの布と組み合わせて使うこともある。たとえば、デッドストックのストライプの布のパンタロンに、刺繍部分を生かした白い麻のポケットをつける、というように。また、1点以上作れても、布に限りがあるので限られた枚数の生産となるが、デッドストックの布を用いたミニコレクションもフロールは提案している。
左:ミニ・コレクションから。忘れな草がプリントされた昔のシーツから生まれたショーツ。98ユーロ。無地は85ユーロ 右:パンツのポケットに昔の手刺繍を生かして。オリジナルボタンは1950年代から存続するアトリエに製作を依頼した。そのサヴォワールフェールを守りたいという意向からだ。photos:Maison Flore(左)、Mariko Omura(右)
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最近では、英国のイラストレーターWillemien Bardawilとのコラボレーションを行った。イラストをフロールが刺繍化するというものだ。その刺繍を古いシーツなどを用いたブラウスの襟、あるいは刺繍のポシェットにあしらったり……。ブティック内のアトリエでは、1900〜1950年のレースの襟とポエティックなプリントや色のデッドストックの布の組み合わせによるブラウスなどの特別オーダーも受け付ける。完成は3週間後だそうだ。また、ボン・マルシェで限定販売したようなテーブル関連のアップサイクリングリネンの製作も続けるだけでなく、カラフルな刺繍が施された小さな古いハンカチを活用して、という次のアイデアもある。メゾン・フロールは小さいながらも、アップサイクリングを超えた盛りだくさんの楽しみが待っているブティックだ。
左:ロンドンをベースに活動するイラストレーターWillemien Bardawil(左)のイラストをフロールが刺繍に。 右:ポピー・カラーは185ユーロ。
左:1900〜1950年代のレース襟。50ユーロ〜 右:襟とデッドストックの生地を好みで組み合わせて、自分だけの一着をオーダーできる。photos:Maison Flore
左:アトリエのカーテンもフロールのブラウス、マスクもデッドストックの生地から。 右:ブティックの一角、祖母の写真、祖母が残した縁取りレースをあしらったプレイスマットが。photos:Mariko Omura
45, rue Charlot
75003 Paris
営)14時〜19時
休)日、月、火、水
www.maisonfloreparis.com
Instagram: @maisonfloreparis
réalisation : MARIKO OMURA