Hot from PARIS いまパリで起きているコト 「世界の中心の、パリの村」ことヴェルボワ地区って?
Paris 2021.11.10
いまのパリで注目の出来事を、パリ支局長の髙田昌枝がリポート。今月は、個性的な店が次々オープンし、若い起業家やクリエイターが集まる場となった3区のヴェルボワ地区にフォーカスします。
アートディレクターの登用で、実店舗の楽しさを発信する地区へ。
レピュブリック広場に隣接する、3区の北の端のヴェルボワ地区が、いま、脚光を浴びている。過去、ある資産家がデザイナーと建築家を起用してトレンドエリア計画を立ち上げるも頓挫した苦い経験を持ち、周囲の急速な商業化に取り残されていたエリア。そのポテンシャルに目をつけた投資会社パトリシアが30軒ほどの店舗を購入したのは5年前のことだが、パンデミック真っ只中の昨年以来、トレンド感満載のアドレスが次々オープンしているのだ。レコードとアート本の店、リュプチュールに続き、アップサイクルを取り入れたA.P.C.の新店、年末にはパティスリーの巨匠フィリップ・コンティチーニの店が登場。2021年に入っても、メゾン キツネの焙煎カフェ、アレクサンドラ・セネスの一点物の店、キロメートル・パリ、と開店が続いている。



---fadeinpager---
「アート、デザイン、食や音楽の目の肥えた愛好家を引きつけるクリエイションを集めようと、当初から考えていた」と語るのは、同社のマネージングディレクター、シャルル=ニコラ・テリエール。
「いまのパリのアール・ドゥ・ヴィーヴルを体現する場所を目指しました」
2年前、アートディレクターを登用したことで、プロジェクトは加速した。「これまでにないタイプのエリアづくりには新たなコミュニケーションが必要」と考えた同社は、モードやデザインの世界で多彩に活動するトマ・エルベールに白羽の矢を立てた。彼は自らのネットワークを駆使し、トレンドセッターを巻き込んで個性のある店を呼び込んだ。タウン誌とサイトでは店主たちを主役として登場させ、イベントを仕掛けて、ヴェルボワ地区を「世界の中心の、パリの村」としてアピールする。

「いま、世界のどの街でも同じ店が軒を連ねている。ここでは、名の知れたブランドも他店にはない何かを提案します。ここにしかない体験ができるはず」と彼は言う。
来年以降も、職人技で知られるメゾン・ボネの新しい眼鏡店や、マタリ・クラセがデザインを手がけるホテルが登場予定。トレンドセッターと若い起業家やクリエイターが手を携えて盛り上げる"ヴェルボワ村"は、パリのいまを象徴するスポットに成長しそうだ。


*「フィガロジャポン」2021年12月号より抜粋
text: Masae Takata (Paris Office)