パリコレAW22-23、モード界の新味、珍味 アトラインは「スタジオ考古学」で、アップアップサイクリング。

Paris 2022.03.19

2016年秋冬コレクションで、ドレープが印象的な最初のクリエイションを発表した「Atlein(アトライン)」。デザインするアントナン・トロンはサーファーで、そのブランド名も大西洋(アトランティック・オーシャン)からとったものだ。デビューコレクションからサステイナブルを意識した服作りを続けている彼が3月6日に発表した2022-23年秋冬コレクションは、自分のデザインスタジオのストックをリサイクルするという“スタジオ考古学”。残った生地の再利用、アーカイブプリントの漂白、過去のシーズンの衣服の再加工……いまのモード界ではアップサイクリングは珍しいことではないけれど、これは捨てられる運命にあった品とは信じられないほど新しく美しいものへと豹変させたワンランク上の“アップアップ”サイクリングである。

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ショー会場にて。スタジオ考古学コレクションのインスタレーション。photo: Mariko Omura

2022年春夏コレクションで始めた以前のコレクションのストックの服をリサイクルするというアイデアを、彼は今回も続行した。たとえば2021年秋冬コレクションからスネーク&フラワープリントの服のフラワープリントの部分を職人たちはブリーチし、そこに黒く重ね染めを行って鉱物のような効果を生み出して新しい表情の服へと変身させる、というように。また“スタジオの考古学”というように、今回は服作りに関わる素材だけでなく、“発掘”はデザインスタジオ全体で行われた。その結果、廃棄物から新しいものを生み出す最たる例……それはエスプレッソマシーンの使用済みカプセルの再利用である。平らに潰した複数のカプセルにリサイクルのジュエリーパーツを組み合わせて彼が創り上げたのは、70年代のパコ ラバンヌを思わせるメタリックなミニドレスとベアトップだった。

さて今回はジュエリーも見逃せない。黒いドレープが美しいファーストルックから、シルバーのチェーンを複数重ねたネックレスとベルトが存在を誇示していたが、途中、不思議なフォルムの透明なイヤリングが……。サーフボードの製造に使われるエポキシ樹脂が用いられているそうだ。もちろんジュエリーはリサイクル素材を用いたハンドメイドである。ジュエリーデザイナーのAngele Cottetとのコラボレーションによるそうだ。

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左: 使用済みのコーヒーカプセルを再利用したメタルドレス。 右: 過去の服の加工は前シーズンからの継続である。

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ハンドメイドのジュエリーたち。透明な素材はサーフボード製造に使われるエポキシ樹脂を加工したものだ。

アップサイクリングのコレクションといっても、アトラインのアイデンティティはしっかりと守られている。ブランドのスタート時から大きな特徴をなしているドレープは、今回もさまざまな素材に施されていた。海にインスパイアされた「リーフ」のようにシルキーなクチュールドレス的ピースもあれば、サーファーの仲間たちが集めたカイトサーフにもドレープを施すというように。また空色×オレンジ、クラインブルー×赤といったコントラストの強いカラーコンビネーションも健在で、プレゼンテーションに鮮やかさをプラス。会場にはアップサイクリングの素材を纏ったマネキンのインスタレーションがなされ、モデルたちはその中へ消えてゆきマネキンと区別がつかなくなるという演出も素晴らしかった。

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アトラインの仕事の中核をなすドレープワーク。ジャージーやシルクなどソフトな素材だけでなく、カイトサーフのハードな素材まで。

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ハードとソフトな素材、エレガンスとストリートといったコントラストがモダンだ。

春夏コレクションはロンドンのセルフリッジでポップアップを開催したアトライン。彼はマリーヌ・セールが受賞した2017年度LVMHプライズでは8名のファイナリストのひとりで、2018年にはフランスの権威あるモード賞であるANDAM大賞を受賞している。サーファーとして身体、エネルギー、ムーブメントに焦点を当ててデザインをし、環境への影響を最小限に抑えることを目的とした服作りによって、創造と生産の前向きなシステムを確立したいと彼は考えている。アップサイクリングの未来と大きな可能性を証明した彼のコレクションが商業的にもいい数字を出すことを期待しよう。

Atlein(アトライン)
www.atlein.com
Instagram:@atleinparis

editing: Mariko Omura

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