Hot from PARIS いまパリで起きているコト 変わりゆくヴィンテージ市場に、いま求められるものとは?
Paris 2022.03.22
いまのパリで注目の出来事を、パリ支局長の髙田昌枝がリポート。今月は、ファッションからインテリアまで、さまざまな業界で始まっている自社製品のセカンドハンド販売について紹介します。
中古品の意味が変わる、自社の買い取り再販事業。
1月初め、最新ルックで華やぐレッドカーペットに、ゼンデイヤが30年前のヴァレンティノのドレスを纏って登場し話題になった。アメリカファッションデザイナー協議会(CFDA)でアイコン賞を受賞した彼女は、私服でもヴィンテージを取り入れておしゃれぶりを発揮している。値段も控えめ、レアで個性を演出できるとあってパリジェンヌのワードローブでも常連のヴィンテージだが、ここ数年でその市場は大きく変貌を遂げている。
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ナティクシス・ペイメンツ社がクレジットカード取引を主にした調査によると、フランスでは2021年の中古品売り上げが前年比51%の伸びを示したという。メディアでも、中古品の売り上げは今後10年間毎年10~15%伸びる、中古品がラグジュアリー産業の売り上げの2割を占める、などと予測されている。
長い間、蚤の市や専門店が主役だったセカンドハンド市場は、一般消費者が直接売り買いできるプラットフォームの登場で急激に拡大した。そしていま、これまで新作以外には目を向けなかった百貨店やブランド側がこぞって参入を始めている。昨年9月、プランタンとギャラリー・ラファイエットが一般からの買い取りと販売を行う売り場をオープン。イケアも本国スウェーデンで始めた自社中古品の専門店を、今年中にパリでも展開すると発表した。ハイブランドでは、グッチのヴォールトやヴァレンティノ ヴィンテージが、世界に向けてオンラインで自社ヴィンテージを販売。パリジェンヌ御用達ブランドでも、イサベル マランをはじめ、エーグル、バッシュ、ザ・クープルズ、サンドロ......と自社製品を買い取り、クリーンアップしてオンライン販売するブランドが増え続けている。その背景にあるのは、まだ着られる服にセカンドチャンスを与えて循環させる"サーキュラーエコノミー"の考え方だ。
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40, boulevard Haussmann 75009
01-42-82-34-56
営:10:00~20:00(月~土)11:00~20:00(日、祝)
無休
https://haussmann.galerieslafayette.com/espace-re-store
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www.ikea.com
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これまでヴィンテージを買う理由は、安さとおしゃれへのこだわりだった。だがいまは、エコロジーを理由にする人が4割を占めるという。製造過程での公害や人権問題、大量に廃棄される売れ残りなど、エシカルやサステイナブルの面で劣等生のレッテルを貼られてきたモード界。自社でセカンドハンド品を流通できることこそハイブランドの証――そんな時代が来るのかもしれない。
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www.isabelmarant-vintage.com
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https://aigle-second-souffle.com
*「フィガロジャポン」2022年4月号より抜粋
text: Masae Takata (Paris Office)