ロックダウン期間に生まれたふたつのアート展 ギメ東洋美術館で塩田千春のリヴィング・インサイド。

Paris 2022.04.15

パリで東洋芸術を扱うギメ東洋美術館。そのコンテンポラリーアートの白紙依頼という企画の第14回目は、女性にして3人目となるベルリンをベースに国際的活動を続ける塩田千春である。彼女の作品は2015年のヴェネツィア・ビエンナーレでアートファンの心を捉え、パリではボン・マルシェでの展覧会が大勢の足をデパートに向かわせた。今回は館内3カ所でのインスタレーションで、メイン作品は丸天井のロトンドの『Living  Inside』だ。彼女の仕事の特徴をなす赤い糸が不思議なパワーをたたえ、これは圧巻!としか言いようがない。

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左: ギメ東洋美術館の『Living Inside』。Courtesy de l’artiste et de Templon, Paris – Brussels © Adagp, Paris, 2022, photo Thierry Ollivier 右: そのディテール。 photo:Mariko Omura

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自宅で過ごすロックダウン中に彼女が考え始めたのが、人形の家の家具を配したこのインスタレーションである。掘り出しもの探しに積極的で多数の品を有しているという彼女。インターネットで購入したのは日本より主にヨーロッパの家具やオブジェで、中にはメキシコの人形の家も交じっていたり。そうした中から300点近いミニチュアが配置されたのがロトンドの『Living Inside』で、4名が6日をかけて完成させたそうだ。上部は赤い糸が編まれて膜状に。上から下がる縦糸は外側が強く張ってあり、内側は緩み、場所によってはたわんでいる。繋がりのもろさを表現すべく、赤い糸は通常より細い糸が選ばれているそうだ。ミニチュアの食器戸棚にティーカップが糸でくくられていたり、家具と食器がひとつにまとめられていたり……その様子はよく言われる赤い糸で結ばれた運命の出会いというよりも、むしろ“がんじがらめ”という言葉を思い出させるほどしっかり結びつけられている。ベッド、花瓶、棚……目をこらすと、彼女の仕事でおなじみの船や椅子などを見つけられるが、近づこうとするとこちらが糸に絡め取られてしまう。何が私たちを結びつけ、何が私たちを分かつのか……。会場をぐるりと囲む壁の窓は2つを除いて、そのまま外の景色が見えるようにガラスは透明のまま。パリという大きな都市をこのインスタレーションに取りこんで、極めて小さな世界と対峙させることが目的だからだ。

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インスタレーションに向けた塩田千春のデッサンとミニュチュア家具。「Living Inside」Chiharu Shiota, 2021Courtesy Chiharu Shiota & Galerie Templon Paris – Brussels© photo Isabelle Arthuis 

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『Living Inside』。館内ロトンド内の100㎡近いインスタレーションだ。photos:Mariko Omura

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彼女の作品を鑑賞できる3カ所を見つけるのは、館内の床に描かれた赤い線を辿ってゆけばいいだけ。メインのロトンドを訪れた後、下のフロアの日本美術の部屋、そして図書室の展示を見逃すことなく回れる。その2部屋で展示されている作品は『State of Being』。1885年にパリにエミール・ギメが開設した美術館。日本を含め当時のアジアのコンテンポラリー芸術を集めていた彼の図書室に、塩田千春の作品を展示することは彼が始めたことが締めくくられるようで大きな意味があると美術館は喜んでいる。

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左: 蜘蛛の糸が絡むような『State of Being (Dress)』(2022)。黒い糸は世界の深み、闇の世界に結びつく作品で使われる。 中: エミール・ギメの図書室内。 右: 『Stage of Being(Drawings)』(2022)。photos:Mariko Omura

『Carte blanche à Chiharu Shiota』展
会期:開催中~2022年6月6日
Musée national des arts asiatiques  - Guimet
6, place d’Iéna 75116 Paris
開)10:00~18:00
休)火
料:11.50ユーロ
www.guimet.fr

editing: Mariko Omura

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