夏の太陽が輝く、エクス・アン・プロヴァンスを訪ねて オテル・ドゥ・コーモンの「ラウル・デュフィ」展で色彩に浸る!

Paris 2022.08.04

気温が上がる日中は街を歩き回らずに美術館で涼をとりながら、アート鑑賞というのも時間を無駄にしない観光の方法だろう。エクス・アン・プロヴァンスにはまずグラネ美術館がある。観光ルートのひとつである17世紀に開発されたマザラン地区の一角を占めるかつてのマルタ宮殿が建物で、地元出身の画家フランソワ・マリウス・グラネの作品が遺族によって寄贈された美術館だ。彼が影響を与えた画家のひとりポール・セザンヌを含め美術館はピカソ、モンドリアンなど近代絵画を多く所蔵している。

18世紀が優雅に香る旧コーモン邸へ

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左:目抜き通りのクール・ミラボーからも遠くない場所にあるオテル・ドゥ・コーモン。 中:この右手がカフェの入口、お向かいはブティック。 右:企画展が開催される2階への階段もとても優美だ。photos:Mariko Omura

同じくマザラン地区のもうひとつの美術館は「Hôtel de Caumont(オテル・ドゥ・コーモン)」。1715年に建築された個人邸宅内に生まれたアートセンターで、グラネ美術館はどちらかというと厳しさがあるが、こちらには優雅で洗練された雰囲気が漂っている。18世紀末にこの建物を相続したのが、いま、建物に名前を残すことになるコーモン公爵夫人ポーリーヌ。1850年に亡くなった彼女から相続した従兄弟はすぐに館を手放し……第二次世界大戦中は抵抗運動者たちをかくまうアパルトマンとなっていたそうだ。2010年にCulturespacesが市から入手して改装を行い、2015年にアートセンターとしてオープンした。館内にはコーモン侯爵夫人ポーリーヌの日常生活を垣間見ることができる部屋の再現が常設されている。

1階の「Café Caumont(カフェ・コーモン)」もとてもチャーミング。18世紀の貴族のサロンを彷彿させるサロンあるいはテラスで、ランチやティータイムに。テラス席の下方に広がる素晴らしいフランス式庭園も含め、美術館入場券なしでも利用できるのも魅力だ。

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©️culturespaces S. Lloyds

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美術館とは独立しているので、食事やティータイムに利用できるカフェ。営業は毎日10時〜19時。©️culturespaces S. Lloyde

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色彩に情熱を傾けたラウル・デュフィ

アートセンターでは現在、パリの近代美術館とのコラボレーションによる『ラウル・デュフィ、色彩への情熱』展を開催中している。ノルマンディーのル・アーヴルに生まれたラウル・デュフィ(1877~1953年)の作品を彼のキャリアとスタイルの変化を追いながら、南仏そしてポール・セザンヌとの関係にフォーカスが置かれた企画だ。展示作品は約90点と多すぎず少なすぎず。色彩の魔術師と呼ばれたデュフィの世界に楽しく親しめる。

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左:1898年に描かれた自画像。 右:その30年後に描いた『ニースの桟橋』(1928年)/ Musée d’Art Moderne de la Ville de Paris

印象派や野獣派の影響を受けていたデュフィが初めて南仏を訪れたのは1908年。31歳の時で画家のジョルジュ・ブラックと一緒だった。「近代絵画の父」と呼ばれたセザンヌが1906年に亡くなり、その翌年にパリで開催されたセザンヌの回顧展に来た多くの画家たちが感銘を受けたという。デュフィとブラックはセザンヌが作品を描いた地であるマルセイユの村レスタックへ赴き、それぞれ作品を制作した。デュフィはその後1910年代の終わりまで、セザンヌの作品を研究し続けるのだ。彼がデッサンからはみ出して踊るような色彩、シンプルなフォルム、クラシックな遠近法の拒否といった自身のスタイルを見つけるのは1920年代の初期である。展覧会では海、水浴者などデュフィの作品でおなじみのテーマの油彩や水彩画、デッサン、陶器などを展示。その締めくくりは1937年にパリ電気供給会社からの依頼でパリ万国博覧会の電気館のために描いた有名な『電気の精』の部屋である。といってもあの巨大な壁がパリの近代美術館から移動というのではない。21世紀のテクノロジーを活用し、3方の壁を使ってデジタル映像でイマーシブアートとして来場者を壁画の中へと誘いこむのだ。

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左:1908年『エスタックのカフェまたはアペリティフ』/Musée d’Art Moderne de la Ville de Paris 右:1913年のプロヴァンスの風景。©️ESpiller

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左:『家と庭』(1914年) 右:『カモメとレガッタ競技』(1930年)/Musée d’Art Moderne de la Ville de Paris

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左:デュフィがセザンヌに影響されていた時代に描いた『水浴女』(1913年)/Musée d’Art Moderne de la Ville de Paris 右;静物(1940年)、風景(1948年)、裸婦 (1933年)とテーマは異なれど、おなじみのデュフィ・スタイルで描かれている。©️ESpiller

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左:1938年作のブルーの器/Musée d’Art Moderne de la Ville de Paris 右:絵画だけでなく陶器も展示。主に1930年代の制作だ。©️Espalier

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『電気の精』の部屋。パリの近代美術館では自分で歩いて巨大な作品を鑑賞するが、ここでは部屋の中央の椅子に座りながら壁画の世界に浸ることができる。©️ESpiller

『Raoul Dufy / L’ivresse de la couleur』展
開催中~9月18日
Musée Hotel de Caumont Centre d’Art
3, rue Joseph Cabassol 13100 Aix-en-Provence
開)10:00~19:00
無休
料:14.5ユーロ
www.caumont-centredart.com

editing: Mariko Omura

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