もちもちシャーベット、軽いアイスクリーム。バルティスで夏の新体験。
Paris 2022.08.14
5月末にマレにオープンした「Bältis(バルティス)」のシャーベットはやみつきになる味。テクスチャーもまるで求肥のように柔らかく、シャーベットというジャンルに当てはまらない。これは知らないほうが幸せか、やみつきになっても知っているほうが幸せか……後者でしょう、やはり。
左:テラス席あるいは店内でイートインも可能。 右:創業者のジャン・ミッシェル(左)とナディムはいとこ同士。店名はフェニキアの女神にちなんでいる。©Pierre Lucet-Penato
バルティスのアトリエ・ブティックで待っているのは、レバノン出身でいとこ同士のジャン・ミッシェルとナディムが、フランスのアイスクリームのMOFのジャン=トマ・シュネデールとともに1年半がかりで開発した、ビオでアルチザナルな7種の味のシャーベットと9種の味のアイスクリームである。オープンして2週間ぐらいした頃から口コミで、開店時間前から行列ができる店となった。アイスクリームが見えなくなるほどたっぷりとピスタチオをまぶす「Achta(アシュタ)」はレバノン・アイスの代表選手で、店のおすすめのひとつであり、またビジュアル効果も高く、インスタグラムなどで紹介される人気者。リコッタチーズのように煮た牛乳、オーキッドの根、乳香樹の液、オレンジの花のミックスの独特な味わいだ。でも、バルティスはまずシャーベットから話を始めなければ。
レバノン・アイスクリームのスター、Achta(アシュタ)。小さなピスタチオ片をまぶしたタイプ(写真上段、6.5ユーロ〜)、小麦、バター、砂糖で作った雪の結晶のようなレバノンの綿あめをのせたタイプ(写真下段、6.5ユーロ〜)、そして“鳥の巣”に盛ったひと口サイズの3つの楽しみ方がある。©Pierre Lucet-Penato
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なんとなくヨーロッパ生まれのイメージがあるけれど、シャーベットの起源は9世紀頃のレバノンに遡るのだという。山の雪を使って、それにフルーツジュースあるいは花の水分を混ぜて……アラブ語で飲み物を意味する“シャラッブ”と呼ばれていたそうだ。ベイルート生まれのシャーベットはその後、ダマスカスあるいはカイロを経由してイタリアに渡り、そこで誰もが知るいまの“シャーベット”に改良されたという歴史がある。このストーリーがオーナーたちの夢をおおいにかき立てたのだ。
バルティスのシャーベットはモチモチとした食感で、驚くほど口あたりが柔らか。一般的なしゃりしゃりしたシャーベットに比べて、そのテクスチャーゆえに溶けにくい。杏のシャーベットはまるで冷たくしたフルーツそのものを食べているようなジューシーで深い味わいで、ローズウォーターやオレンジの花のは遠方の異国の地を旅するような味で……。ここまで洗練されたシャーベットはバルティスだけのお楽しみだ。
シャーベットはローズウォーター、オレンジの花、アプリコット、レモン、マンゴ、ミュール、いちごの8種。(4.00ユーロ〜)。©Pierre Lucet-Penato
アイスクリームは砂糖を少なめにし、そのかわり素材がぎっしり。あまりクリーミーすぎないので、くどさがなく軽い。チョコレートのアイスクリームはまるでムースのようだ。アイスクリームの9つの味はアシュタ、ハラヴァ(白ごまとピスタチオ)、ピスタチオなどレバノンならではの味がメインだが、クラシックなバニラ、そしてフランス人には不可欠の塩バターキャラメルもある。なおアイスクリームはカップ、あるいはグルテンフリーのコーンのどちらかで。
左:シャーベットもアイスクリームもバルティスでは店の後方に構えたアトリエで手作りしている。 中:カップかグルテンフリーのコーンで。 右:白ごま、ピスタチオ、カフェ、アーモンド、チョコレート、チョコレート・インテンス、バニラ、塩キャラメルから選んで。使用している素材はすべてビオである。©Pierre Lucet-Penato
左:かりっとしたパティスリーも同時に味わえるのは“鳥の巣”に盛ったひと口サイズ。 中:ドライフルーツとレバノンのお酒ARAK(アニス風味の蒸留酒)をかけたチョコレートアイスクリームもバルティスのスペシャリティだ。 右:アシュタは1ホールのパティスリー風のテイクアウトもできる。©Pierre Lucet-Penato
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レバノンのパティスリーも味わってほしいとオーナーたちが提案するのは、お菓子に使われる小さな“鳥の巣”に盛ったひと口シャーベットやアイスクリーム。飲み物もカルダモン味のトルコ風レバノン・カフェや、ミュール(桑の実)の飲み物、カフェ・ブランと呼ばれるオレンジの花のホットドリンクなどパリにいながらベイルートを旅してるような気に……。奥が製造アトリエとなっているブティックは、レバノンの人々に幼少期を思い出させるというスイートなインテリア。デザインしたのはレバノンを舞台に世界的に活躍する室内建築家のマルク・バルーだ。場所は地下鉄サンポール駅とバスティーユ駅の間で、ヴォージュ広場からも遠くない。昔からこの地に暮らす地元民、観光客がやってくる良い立地とか。バルティスを試してみないことには、パリの夏は終わらないのである。
左:ピンク色の温かみのあるインテリア。 右:ロゴを始めグラフィックアイデンティティはFoodingの共同創設者だったアンナ・ポロンスキーに任された。photos:(左)©Pierre Lucet-Penato(右)Mariko Omura
レバノンから届くビスキュイ。チャーミングなコーヒーカップで、ティータイムを店内で楽しめる。©Pierre Lucet-Penato
27, rue Saint-Antoine 75004 Paris
営)13:00~22:00(月~木) 13:00~23:00(金、土) 12:00~22:00(日)
無休
Instagram: @baltisparis
editing: Mariko Omura