サステイナブルな暮らしの名手が大切にするもの ヴィンテージ陶器を修復する、パリの金継ぎ師の美しい愛用品。

Paris 2023.01.20

環境に優しい考え方が根付くパリ。ブランシュ・パティーヌでは、フランス国内で集めた19世紀の陶器の傷跡を日本の金継ぎ技術で修復して展開している。古いものを修復する金継ぎに魅せられたオーナーに、長く大事に慈しんできた愛用品を教えてもらった。

セシル・ヴィアルージュ(金継ぎ師)

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Cécile Viarouge パリ生まれ。美術品オークションの会社に勤めた後、独学で金継ぎの技術を磨き、2015年にブランシュ・パティーヌを創設。フランス製のアンティーク陶器を修繕する。

幼い頃からペインティングに夢中だったというセシルは、いつからかアンティーク陶器の柔らかな色使いや素朴なモチーフに魅せられていった。フランス国内で集めた19世紀の陶器を扱うブランシュ・パティーヌを立ち上げ、2017年にアポイントメント制のショップをパリ11区にオープン。同時に書物や動画で金継ぎについて学び、独学で技術を培った。

「傷跡をなかったことにするのではなく、美しい“景色”として、その歴史ごと愛でる金継ぎの哲学に惚れ込んだ」と話す。フランスの乾燥した環境下で、湿度に細心の注意を払いながら、漆と継ぎ金などの金属粉で装飾を施して仕上げる日本の伝統に倣っている。

第2次世界大戦以降に生産されなくなった貴重なフランス製の陶器を専門とする彼女は、金継ぎによって経年変化を個性に変え、新たな息吹を吹き込む。「修繕を施し、ものを長く使い続けるだけでなく、物語とともに芸術的価値を上げていく。金継ぎを学んでから、すべてのものに対する美意識が磨かれていった気がしているの」と語る。

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壁一面に並べられたアンティークの陶器。自らの足でフランス国内を回り、古美術品に分類される希少な陶器を扱っている。

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金継ぎ道具を収納するボックスは、祖父が軍隊に所属していた時に使用したカンティーン。

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金継ぎを施した陶器。左上は250ユーロ、右下は300ユーロ。湿気の多い夏以外は、金継ぎの作業は自宅兼アトリエで行う。修繕までに最低1カ月半を要し、「焦る心を落ち着かせることが大切」と話す。必要な材料や道具を日本から取り寄せるこだわりぶり。

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祖母から譲り受けたリング。戦車の形から着想を得た、1940年代に流行したタンクと呼ばれるデザイン。

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祖父母が愛用していた、バカラのデキャンタをオブジェとして飾っている。

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旅行好きだった祖母が中国で購入した陶磁器のティーポット。

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祖父の愛読書だった詩集。「おもむろに読みたくなる時があるの。ページをめくる度に、ロマンティックだった祖父の記憶が鮮明に蘇る」と回想するセシル。

Blanche patine / ブランシュ・パティーヌ
29, rue des Vinaigriers 75010
tel:06-74-02-04-70
M)JACQUES BONSERGENT
※アポイント制
www.blanchepatine.com

*「フィガロジャポン」2023年2月号より抜粋
●1ユーロ=143円(2022年12月現在)

photography: Mari Shimmura text: Elie Inoue

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