Hot from PARIS いまパリで起きているコト 大福に海苔巻き、パリジャン流の和軽食が人気の訳。
Paris 2023.01.22
パリでいま注目の出来事を、パリ支局長の髙田昌枝がリポート。大福にサンドイッチ、手巻き寿司......日本の味を再解釈したメニューが大流行している。日本人にとっても新感覚のパリ流和軽食、ぜひ試してみたい!
和食好きのパリジャンから、唯一聞こえてくる不満は、おいしい和スイーツがないことだった。フレンチに難なく溶け込んだ抹茶やユズをよそに、羊羹や和菓子の人気はいまひとつ。そこに3年前に彗星のごとく登場したのが、いまや和のマカロンとも形容されるMOCHIだった。日本で大福に出合ったマチルダ・モットは、2019年にメゾン・デュ・モチの第1号店をオープン。小さめサイズのMOCHIは、あんこはもちろん、ショコラやピスタチオ、季節のフルーツを使った月替わり、とバリエも豊富なうえ、素材のもち米はグルテンフリーと人気は衰え知らず。先頃3号店も扉を開けたばかりだ。
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一方、ランチタイムの新星はSANDOだ。サンドウィッチといえばバゲットが定番のフランスで、パサパサの薄いパンに具を挟んだ三角タイプのサンドウィッチは、スーパーの冷蔵庫に並ぶ味気ないものと決まっていた。日本風のふんわりした食パンにたっぷりと具を挟んだSANDOは、別カテゴリーとして認識され、いまでは情報サイトでも「SANDOのベストアドレス」記事が花盛り。最新アドレスのヤクザ・カツサンドでは、人気食材店ジュレスが焼き上げる白い食パンや炭入り食パンに、肉や魚のカツと野菜をはさんだSANDOを提供。味もボリュームも満点だ。
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漫画とアニメで育ったZ世代のパリジャンにとって、SANDOやMOCHIのような日本の日常の味は、どこかで見たことのある身近な存在なのだろう。パンデミックを経てデリバリーやテイクアウトがすっかりスタンダードになったいま、紙包みや紙箱に収まったサンドは、プラ容器を嫌うパリジャンの気持ちにもマッチしている。とはいえ、パリのセンスとフィルターを通した味は、日本人にとってはちょっとした変化球。日本人が異国の味を取り入れて独自の洋食や中華料理、カレーライスを作ったように、パリジャンも日本の味を再現するのではなく、自分たちの和食を発信し始めたのかもしれない。
そんなパリジャン和食の最新ニュースはHANDOだろう。仕掛け人は、ポール & ジョーのメンズを手がけるアドリアン・アルブー。酢飯のイメージとはちょっぴり違う柔らかめのご飯に、ペースト状のタタキになった白身魚やエビ、マグロ、あるいはアボカドなどをのせ、カウンター席の目の前で海苔を巻く。ワサビ、ガリ、醤油入りの小皿とともに供され、手で持ってかじりつくというスタイルにもやや戸惑いは感じるが、寿司はこうあらねば、という先入観さえ取り去れば、HANDOもまた、なかなか乙な味なのだ。
1ユーロ=約141円(2022年12月現在)
*「フィガロジャポン」2023年2月号より抜粋
text: Masae Takata (Paris Office)