Hot from PARIS いまパリで起きているコト

パリの風物詩、デモとストで権利を主張する大切さを学ぶ。

Paris

パリでいま注目の出来事を、パリ支局長の髙田昌枝がリポート。年金制度改革に反対し、激しい抗議活動が続くフランス。デモやストライキに限らず、意見を声に出し、権利を主張することを当たり前としているフランス人の姿勢は、幼少時から絵本を通じても育まれているようだ。


鉄道やメトロがストップし、午後にはレピュブリック広場、バスティーユ広場、ナシヨン広場を結ぶ大通りがデモ隊と警察の出動で麻痺──そんなストライキとデモの組み合わせは、パリの風物詩といっても過言ではない。毎年恒例のメーデーや3月8日の国際女性デーから、過去の同性婚反対や生活水準の低下を訴えた3年前の黄色いベスト運動まで、デモはさまざまな主張を掲げて毎週のように行われている。工場閉鎖反対、賃上げ要求などを訴える従業員ストは、フランス全国で年に平均114日。日本では1980年代初頭を最後に姿を消した、交通ストももちろん健在だ。とはいえ、昨今のパリジャンは自転車通勤やテレワークで難なく対応しているけれど。

2023年は、国会で審議の始まった年金改革案に反対する大規模な交通ストとデモで幕を開けた。破綻を迎えている年金制度の改革は、歴代の政府が何度も試みてきたもの。過去を振り返れば、95年には3週間続いたデモと交通ストが改革案を撤廃させ、20年も第一次マクロン政府が社会運動とコロナ禍のあおりで改革を棚上げした。今回は、年金受給年齢を62歳から64歳に引き上げる法案に反対して主要労働組合が旗を振り、左派連合も大反発してデモとストが続いた。結局、3月17日に政府が憲法第49.3条を発令。年金改正法を無投票で強行採択したため、デモの趣旨は年金法改正反対から政権批判へと変化。今度は「Macron, démission(マクロン、辞任せよ)」が合言葉となり、まだまだデモは終わりそうにない。

 2月11日に行われた年金制度改革反対デモ。労働組合のほか、学生の参加も目立った。労働組合側の統計では250万人以上が参加したという。©MARTIN CHANG/SIPA/amanaimages

ニュースでデモの映像を見ていて、ふと、数年前に見た光景を思い出した。それは、保育士に率いられた幼児のグループが、ハロウィンの日に空き缶を叩きながら「On veut des bonbons!(キャンディちょうだい)」と一斉に声を上げて近所の市場を行進していた姿。この国では、小中学校の教員がストに参加し、週末に行われるデモには子連れの参加者も多い。社会運動は幼い頃から身近な存在なのだ。労働条件改善を訴える羊や鶏がストを行い、主張が受け入れられてハッピーエンド、という絵本も出版されるフランスでは、声を上げて意見を述べ、権利を主張するのが当たり前。フランス人は、幼い頃からその大切さを知っている。

赤ずきんちゃん、三匹の子豚など、おとぎ話の登場人物が「いつもと違う役を演じさせろ!」とストライキするストーリーの絵本『La Grosse Grève』(Gautier-Languereau刊)
狭い鶏小屋に詰め込まれた鶏が、暮らしの改善を訴えて卵を産まないストライキに突入。『Quand les Poules Font la Grève』(Glénat Jeunesse刊)
寒い冬に自分たちだけが毛を刈られることに反対して羊がデモ。『La Grève des Moutons 』(Père Castor刊)。

*「フィガロジャポン」2023年5月号より抜粋

text: Masae Takata (Paris Office)

この記事の元URL: https://madamefigaro.jp/paris/230423-hot-from-paris.html