Hot from PARIS いまパリで起きているコト BWA授賞式を通して考える、フランス女性の起業事情。
Paris 2023.06.03
パリでいま注目の出来事を、パリ支局長の髙田昌枝がリポート。女性の起業が増え続けているフランスで、彼女たちが直面する問題や、起業後の実情とは?
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テレビで、資金調達をテーマにしたリアリティショーを発見した。現在シーズン4を予定する「Qui veut être mon associé?(誰が出資する?)」は、創業間もない企業に出資するエンジェル投資家を前に、出演者が事業のプレゼンテーション、ピッチを行い、投資と経営アドバイスなどの支援を勝ち取るもの。3シーズンを通して70社余りが資金調達を実現した仏版「マネーの虎」は極めて真面目な内容で、21時からのゴールデン枠。MBAを取得して起業する30代も多いフランスで、ピッチと投資はお茶の間になじむコンテンツなのだ。
女性の起業も増えている。統計によれば、フランスで2022年に設立された約62万社のうち、女性によるものは33.5%。18年の27.3%以来、割合が増え続けている。ただし服飾系や社会福祉事業など、依然として"女性的な業種"が多くを占めるのは否めない。
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4月20日に、「マダムフィガロ」が女性起業家を支援しコミュニティを形成する、Business with Attitude(BWA)の第7回授賞式が開催された。120もの応募者から選ばれた受賞者は、エンジニアのオード・ギュオ。「持続的な方法で、増え続ける人類の食糧を確保する」ために、魚や家畜の餌となる昆虫プロテインに着目し、アブの養殖システムを立ち上げた。「工業分野でも、女性が社会貢献できることを訴えたい」と語った力強いピッチ。農業資源を基にした工業、アグロインダストリーで成果を上げ、4億6,000万ユーロの資金調達を得て海外進出するオードは、女性起業家のステレオタイプを打破する新たなロールモデルである。
女性にとって、起業の大問題は資金調達だという。「ここ2年で、女性のベンチャー企業に出資した投資会社はたった2%! それは女性にビジョンがないからではなく、投資家の89%を占める男性が自分に似たプロフィールに投資するから」と語ったのは、女性起業家の資金調達を支援する団体SISTA創始者のタチアナ・ジャマ。「でも、私たちが女性に投資するのは援助ではなく、自分たちの業績アップになるからです」
女性の経営する企業は倒産が少なく、成長率も高いというデータもある。それを支えるのは、着実に増えるロールモデルの存在と、コミュニティの連帯力なのだ。
*「フィガロジャポン」2023年7月号より抜粋
text: Masae Takata (Paris Office)