ドリス ヴァン ノッテンの新しいギャルリー・ブティック。
Paris 2023.07.14
マラケ河岸9番地にドリス ヴァン ノッテンの新しいブティックが7月4日にオープンした。レディスとメンズのブティックの間にあり、「Galerie Quai Malaquais(ギャルリー ケ・マラケ)」という名称でフレグランス、ビューティ、小物を扱っている。1625年に建築を遡る建物の1階にあり、18世紀初頭にトランスシルヴァニアのプリンスがここに暮らしていたことからトランスシルヴァニア邸と呼ばれている館だ。このプリンスは住まいを遊戯場に変身させ、貴族も含め大勢をここに集めていた。アベ・プレヴォーの小説『マノン・レスコー』で主人公がカードゲームで稼ぐ館のインスピレーション源となり、ケネス・マクミランがバレエ化した『マノン』の第2幕でその雰囲気を知ることができる。その後はここはBreheret画廊が占め、有名になる前のピカソやシャガールなどの作品を展示していたという芸術的な歴史があることから、ドリスはここをギャラリーと名付けた。
左: ボナパルト通りとマラケ河岸のコーナーを占めるギャルリー。 右: ウィンドウを飾る香水。香りのみならず、「あり得ない組み合わせ」のボトルの魅力も抗いがたい。photos:Mariko Omura
入って右手にフレグランス、左手にリップスティック、中央にファッション小物の売り場というギャルリーは、デザインもあらゆるディテールもドリス自身がキュレーションを行い、彼のこだわりがぎっしり詰まった美しい空間である。彼をインスパイアしたのはフレグランスのコンセプトの「ありえない組み合わせ」。配置されている家具も時代さまざまで折衷様式にまとめられた中で、とりわけ目を奪うのは奥の壁を飾る17世紀のフランドルのタペストリーの美しさだ。そのモチーフはパーゴラ(つる棚)のある風景で、花を育て愛するドリスらしい選択。その手前には19世紀のギュスタヴィアン・スタイルの大きなデスクが配置されている。買い物を楽しみながら、いまと昔が混在するドリスの世界に浸りたい。
フレグランスとリップスティックの売り場が向かい合わせのギャルリー内。白い種々の大理石を職人が手作業で組み合わせた床、1970年代のさまざまな種類のヴェニーニ・ガラスで構成されたシャンデリアなどインテリアも見どころたっぷり。
左: バロック調の風景が描かれた17世紀のタペストリーと19世紀のビューロー。 右: テキスタイル、ファブリックはシトリン・イエロー。
左: ドリス ヴァン ノッテンの メゾンのアーカイブのテキスタイルにインスパイアされた香水、口紅のケース。ドリスの美意識を所有できる喜びが潜んでいる。 右: 黒でまとめられたキャビネ・ドゥ・キュリオジテ風の小さな空間が隠されている。アーカイブのバッグやジュエリーを販売するスペースで、いまは前シーズンから2018年まで遡った品から。
9 Quai Malaquais 75006 Paris
営)11:00〜19:00
休)日
www.driesvannoten.com/pages/quai-malaquais
editing: Mariko Omura