<アールヌーヴォー再び その2> 創業から2世紀、蘇るアールヌーヴォーのジュエラー、ヴェヴェール。

Paris 2023.08.17

アールヌーヴォーのジュエラーのひとつとして、「Vever(ヴェヴェール)」が挙げられる。その過去のジュエリーの多くは装飾術館のジュエリー部門に寄贈され、常設展で一部を鑑賞でき、またオルセー美術館、プティ・パレでも展示されている。9月30日まで「レコール ジュエリーと宝飾芸術の学校」にて開催中の『アールヌーヴォーにみるジュエリーの変容、1880~1914年』展でも、ヴェヴェールのジュエリーが数点紹介されているようにアールヌーヴォーの時代のスターメゾンだったのだ。

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左: メゾン・ヴェヴェール(ポール&アンリ・ヴェヴェール)が1900年にパリ万博に出品したペンダント『Sylvia』(1900年)。パリ装飾美術館のジュエリー・ギャラリーに展示されている。 右: トンボの羽と女性の横顔のブローチ(1900年頃)。レコール ジュエリーと宝飾芸術の学校の展覧会では、このモチーフのペンダントトップが展示されている。photos:(左)Jean Tholance、(右)Vever

1821年にフランス東部のメスにて創業したメゾンで、パリに拠点を移したのはその50年後である。19世紀末に3代目がメゾンを引き継ぎ、兄のポールが経営面を見て、弟アンリがクリエイションを担当するという二人三脚でアールヌーヴォー・スタイルのジュエラーとして国際的名声を築いたのだ。彼らは1889年のパリ万博を含め、5つのグランプリを受賞している。その後もファミリーが経営を続けたが、1988年にメゾンはクローズしてしまう。

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左: ラペ通り14番地のヴェヴェールのブティック。1915年頃。photo Bibliothèque Nationale de France 右: 顧客のひとりだったベル・エポック期の人気女優&ダンサー、ラ・ベル・オテロ。

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創業200年目にあたる2021年、7代目のクレールとダミアン・ヴェヴェールがメゾンを再興。今年6月から8月上旬にかけて、ラペ通りのショールーム内でアンリ・ヴェヴェールの仕事にアクセントを置き、メゾンの歴史を語るミニ展覧会を開催した。展示されたアールヌーヴォーのジュエリーの数々はベル・エポック期の名作である。アヴァンギャルドなジュエラーだったアンリ・ヴェヴェールは、オパールや動物の角、亀の甲羅、象牙、エナメルなどをクリエイションに取り入れていた。もっとも、親交のあったルネ・ラリックに比べると宝飾界で通常使われる貴石など伝統から離れることはなかったそうだが。手仕事、サヴォワールフェールが多く語られるいまの時代。展覧会の来場者たちはヴェヴェールの創造性と技術の卓越が込められた展示ジュエリーのひとつひとつに、感嘆の声を惜しまなかった。なお、展覧会ではルネ・ラリックが1898年にアンリの娘に贈ったマーガレットの装身具、カミーユがメゾンを再興したいという気持ちに駆り立てたという、彼女が16歳の時に祖母から贈られたダイヤモンド付のバレッタも展示されていた。

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左: ダイヤモンドとエナメルの蝶のペンダント(1900年)。 右: ムーンストーンとエナメル、イエローゴールドによるツバメのペンダント。photos:(左)Gazette Drouot、(右)Vever

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1898年にアンリ・ヴェヴェールの娘にラリックが贈ったマーガレットの装身具。photo:Vever

新生ヴェヴェールのジュエリーは、アンリ・ヴェヴェールの作品のメインテーマとなっていた自然、女性、妖精、雨や火の女神などを再解釈している。昨年、彼のジャポニズムに対する情熱を反映した銀杏の花に捧げるコレクションを発表。エナメル技術などフランスに伝わる古いサヴォワールフェールを現在の素材に組み合わせ、大胆でコンテンポラリーなクリエイションを新生ヴェヴェールは提案してゆくのだ。新しいコレクションはラペ通り9番地のショールームだけでなく、プランタンデパートのコーナーで販売されている。

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メゾン・ヴェヴェールのヘリテージを21世紀に。銀杏にインスパイアされた「Gingko」コレクション。

Vever
9, rue de la Paix
75001 Paris
www.vever.com
@veverjewelry

editing: Mariko Omura

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