レースの街カレの美術館で見る、イヴ・サンローランの透明な挑発。

Paris 2023.09.09

レース産業で栄えたカレの街に、19世紀末に建てられたレース工場跡にオープンしたレースの美術館。6月に始まり、11月12日まで『イヴ・サンローラン:トランスペアランシー』展が開催中だ。東京では国立美術館で9月20日から『イヴ・サンローラン』展が始まる。これはクチュリエの没後初の回顧展で彼の40年の活動を11章で展開する内容だが、その中のひとつの章となりそうなテーマが、このカレ市での展覧会だ。パリのイヴ・サンローラン美術館とのコラボレーションによる。透ける素材の効果、大胆なカットなどにより、イヴ・サンローランが女性の身体の見せ方についていかにコードを覆したか。この展覧会はそれをデッサン、写真なども含め、彼の代表的な作品にフォーカスをおいて選ばれた60点の服で見せるものだ。

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展覧会はレースの4シルエットからスタート。photo:Charles Delcourt

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1996年春夏クチュールコレクションより。モデルは当時のトップモデルのひとり、カレン・マルダー。© Yves Saint Laurent © Claus Ohm – DR

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1990年秋冬クチュールコレクションより。レースおよびカットで大胆に肌を見せているドレス。© Yves Saint Laurent © Droit Réservé

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「裸体ほど美しいものはない。女性の最高に美しい装いとなるのは、彼女が愛する男性の腕である。しかしこの幸福に恵まれない女性たちのために、私がいるのだ」。こう語ったイヴ・サンローラン。1961年にクチュールメゾンを創設した彼は、1966年の夏にミニドレスのシリーズを、その2年後に胸が透けて見える“シースルー・ブラウス”を発表した。これはバミューダパンツとスモーキングジャケットとの組み合わせで、続いて、腰回りにオーストリッチの羽を飾っただけのシースルードレス……そして1970年秋冬クチュールコレクションのために、正面から見るととても大人しいけれど、背中はシャンティイ・レースでその透け目からお尻の割れ目が見えるという大胆なドレスを彼はデザインしたのだ。展覧会のエントランススペースにはこのドレス、そしてジャンルー・シーフが撮影して後世の人々の記憶にもドレスの大胆さとクチュリエの名前が刻み込まれることになる写真が配置され、来場者を迎える。その後会場では「露出された身体」「誇示された身体」「飾られた身体」の大きな3テーマをクチュールピース、クロッキー、彼の言葉、写真、ショーのビデオなどで紹介。彼のクリエイションによって女性たちの身体が解放され、女性の精神的独立が応援され、20世紀後半から21世紀へと向かっていったことが透けて見える展覧会だ。

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1970年秋冬クチュールコレクションより。ジャンルー・シーフが撮影。© Yves Saint Laurent © Estate Jeanloup Sieff

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1968年春夏クチュールコレクションより。© Yves Saint Laurent © Peter Caine(Sydney)

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1968年秋冬コレクションより。© Yves Saint Laurent © Peter Caine(Sydney)

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展示より。彼が好んだ透ける素材はオーガンジー、モスリン、レース、シガリーヌなど。photo:Charles Delcourt

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展示より。透ける素材を用いず、カットで肌を露出されたクチュールピース。photo:Mariko Omura

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彼が活躍していた時代のひとつの特徴として、雑誌のページ一面に自社のファブリックやレースが使われたクチュールピースの写真を掲載し、織物メーカーが広告を出していたことが挙げられる。これによって素材の注文が入ることになるからだ。レース業界の繁栄にイヴ・サンローランのオートクチュールコレクションがどれほど貢献したことだろう。

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サンローランのオートクチュールに欠かせなかったレース。クチュールピースは一点ごとにデッサンとともに端切れと業者名がメゾンのスタジオの記録に残されているので、どのメーカーのレースか容易に辿ることができる。photos:(上)Charles Delcourt、(下)Mariko Omura

『Yves Saint-Laurent:Transparences』展
開催中〜2023年11月12日まで
Cité de la dentelle et de la mode
135, quai du Commerce
62100 Calais
開)10:00~18:00
休)火
料:7ユーロ
www.cite-dentelle.fr

editing: Mariko Omura

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