ア・ターブル! パリジェンヌシェフ、カミーユの美味なるビストロノミー。

Paris 2023.10.20

地下鉄駅Durocで下車し、セーブル通りからレストラン「A Table!(ア・ターブル)」のあるジェネラル・ベルトラン通りに入ると、ガラスで覆われたレストランの一部が目に入る。屋根を覆うキャンバスに描かれたレストラン名のAとTを組み合わせたモノグラムが、日本人には「本」と書いてあるように一瞬見えてしまう。これが目印!

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本と読めるATのモノグラム。料理を味わう前から日本人が親しみを感じてしまうレストランでは? photos:Mariko Omura

壁の鏡の効果で広く見えるけれど、 30席程度のこぢんまりとした縦長の店内。その奥に、若きシェフのカミーユ・ゲランがガラス越しのキッチンの中で腕をふるう姿が見える。彼女は地方出身の料理人が多い中で珍しくパリ生まれである。子どもの頃からおいしいもの好きの彼女は、食は情熱を傾けるものであり、職業とは考えていなかったそうだ。フェランディ校で料理を学び、その後パリのリッツ・ホテルやモントリオールのリッツ・カールトンといった店で働いている。ア・ターブルの前は12区のDouzeでエグセクティブシェフを務めていた。

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若きシェフ、カミーユ・ゲラン。photo:Johanna Alma

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シンプルなインテリアのこぢんまりとしたレストランだ。photos:Johanna Alma

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彼女が開いたのはビストロノミー・レストラン。インスピレーション源は子ども時代の思い出の味、興味を持っている日本やオリエントの味……彼女ならではのアイデアに満ちたクリエイションは意外性にあふれているけれど、穏やかで調和がとれたおいしい料理である。なんとなく和がひそんだ味に聞いてみれば醤油が隠し味だったり、魚料理に昆布を合わせたり。メニューにもPonzu、Sobaといった単語が並んでいる。カミーユもダシ、タマリ、ウマミが日本語のままで料理用語となっている世代の料理人なのだ。この2~3年にレストランを開く多くのシェフたち同様に、彼女も近距離の素材や生産者から直接仕入れた素材を可能な限り廃棄物を出さずに調理している。

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ある日のランチメニューから。左: 前菜。手前はスモークビーツ、アンチョビ、乳化したスカンポの酢、フォカッチャのクルトン。思いがけない組み合わせのビーツとアンチョビがおいしい。後ろは温泉卵、ペルシヤード・シャンピニオン、ワレモコウ、パンのムイエット。 右: メイン。手前はタラ、ポン酢の酢飯、スモークパプリカ味カリフラワー、昆布と白ワインのソース。後ろは、カボチャのローストとファラフェル風ガレット。ヨーグルトソース。この日のデザートは、シナモン風味のりんごのコンポート。photos:Mariko Omura

ディナーは49ユーロのお任せメニューのみ。内容はシェアする前菜が3種、メインは3種(魚、肉、野菜)からチョイス、デザート、そしてシェアするガトーの6皿という構成だ。ランチは2皿(前菜とメインあるいはメインとデザート)が29ユーロ、3皿(前菜、メイン、デザート)が34ユーロ。前菜もメインもそれぞれ2種からのチョイスがあり、そしてチーズかデザートを選ぶ。

店名のア・ターブル!! これは食事の準備が整った時に、“ご飯ですよ!”と食卓へと誘うことばである。7区といってもパリの中心地の華やぎや雑踏から外れた場所で、パリをよく知らない観光客には“人里離れた”といった印象を受ける住宅地のレストランだけど、カミーユの料理をいちど味わったら、そんなことも気にならずア・ターブル!と声をかけられたかのように、レストランへと足が向くはずだ。

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ディナーのメインは3種からのチョイス。ブレットとゴルゴンゾーラのカネロニ(上)はベジタリアン。肉はサイダー味のプルドビーフ(中)、魚料理(下)。photos:Johanna Alma

A table
2 8, rue du Générale Bertrand
75007 Paris
営)12:00~14:00(L.O.)(月~金)  19:00~21:30(L.O.)(水〜金)
休)土、日
@atable_paris7

editing: Mariko Omura

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