Hot from PARIS いまパリで起きているコト リセに制服導入? 中高生の通学ルック問題が熱い。
Paris 2023.11.14
パリでいま注目の出来事を、パリ支局長の髙田昌枝がリポート。
2020年9月、当時の教育大臣が、中高生の通学には「共和国的な服装が望ましい」と発言した。標的はショート丈でおへそを見せるクロップトトップ。ティーンの間でトレンドだったこのルックへのバッシングに、当事者の中高生ばかりか、フェミニストたちも「21世紀のいま、服装を選ぶ自由を制約するなんて」と大反発した。当時、IFOP(フランス世論研究所)が女子高校生の適切な服装について行った調査では、高校でクロップトトップを禁止すべきと答えた人は55%。禁止賛成はシニア層やイスラム教徒に多く、25歳以下の回答では、逆に許容すべしという回答が59%に上っている。3年経ったいまも学校からクロップトトップはなくならないが、依然批判の対象であることに変わりはない。
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ところが、長らく批判を独占してきたクロップトトップに代わって、今年は新しい禁止項目が話題をさらった。それはアラブ諸国の一部で着用されている、身体をすっぽり覆うアバヤ。政教分離主義を掲げるフランスの公立学校では宗教性を誇示する服装が禁止されており、頭を覆うスカーフも校内では着用できない。今年、新・国民教育大臣ガブリエル・アタルがこのアバヤを「宗教的な服装」と位置付けて禁止を示唆すると、伝統服か宗教服かを巡って大きな論議が起きた。とうとう新学期の9月4日に禁止が通達され、7日には国務院も仮処分の請求を却下した。とはいえ、アバヤを着用して入校を拒否された子どもの親が学校職員を恫喝、脅迫するなどの事件も起こって、まだ論議はくすぶっている。
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それに関連して脚光を浴びているのが制服だ。制服導入を提案するアタル教育大臣に続いて、マクロン大統領が「Tシャツとジーンズのような標準的な服装規定」を示唆。過去に制服で学生時代を過ごしたマクロン夫人が「社会格差が見えにくいのが利点」と擁護発言をすると、「服装の自由」を掲げる反対論が再燃した。そんな中、地方自治体単位で公立校への制服テスト導入が募られると、リヨンを中心とするオーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地方が立候補を表明。私立、公立合わせて5つのリセで来年度早々に制服導入の予定と「フィガロ」紙が報じている。アイテムは?ロゴは?生産は地元で?など、詳細は検討中だという。
露出しすぎ、だらしない、宗教性の有無からブランド品による社会格差の可視化まで、服装規定の基準づくりは線引きが難しい。制服導入は、服装問題の適切な解決策なのか? 右派政党は賛成派、左派政党は批判的で、政治色も濃い。中高の制服生活が当たり前の日本人にとって、モードの国のティーンの通学服論争は想像以上の広がりを持つ問題なのだ。
*「フィガロジャポン」2023年12月号より抜粋
text: Masae Takata (Paris Office)