モードのコレクターとしてのアライアを巡るふたつの展覧会/アライア財団
Paris 2023.12.31
アライアとマダム・グレが対話する。
財団の展示会場は、かつてアズディン・アライアがショーを行っていたガラス屋根が美しいスペース。©️Fondation Azzedine Alaïa
ガリエラ美術館ではアライアによる創作は1点も展示されていないが、マレ地区のアズディン・アライア財団での展覧会はアライアの服とグレの服で構成されている。ふたつの展覧会ともキュレーションを担当したのはオリヴィエ・サイヤールで、「アライア グレ」展は「モードを超えて」とサブタイトルされている。彫刻家になりたかったマダム・グレ(1903~1993年)と祖国チュニジアの美術学校で彫刻を学んだアズディン・アライア(1935~2017年)。2フロアを使って展示されているのは、情熱を傾ける彫刻の素材を石から布に変えたふたりによるクリエイションだ。黒、ブルー、パステルなど色調ごとにグルーピングされたドレスが会場のガラス屋根の下、神々しい美しさを放っている。
女性の身体の体を浮き彫りにするように施されたドレープやプリーツ。©️Fondation Azzedine Alaïa
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モード史において彼女はドレープの巨匠、彼はカットの巨匠であるがその仕事の共通点は多い。展示の服は作品解説プレートを見ないと、いつの時代のものかも不明なほど時代を超越したふたりのクリエイション。一見シンプルだが、そこには信じられないほどの緻密なディテール、計算を尽くした技巧が込められ、見事な構築美とエレガンスだ。ガリエラ・モード美術館で『Azeddine Alaïa Collectionneur』展が開催されているように、アズディン・アライアは生前クチュールピースなど約2万点を収集していた。そのうちマダム・グレのドレスは700点を占めている。彼女の仕事に対する敬愛ぶりがわかる数ではないだろうか。
なおマダム・グレの本名はジェルメーヌ・クレブス。1930年代に仕事を始め、メゾン・アリックスを共同で経営するが、1942年にひとりでメゾン・グレをラペ通り1番地に開設した。Grès(グレ)というのは、夫Sergeの名前のアナグラムである。
左: 手前の白と黒のドレスは1970年のグレのクチュールドレス。 右: グリーンのドレスはグレの1975年春夏オートクチュール、右はアライアの1991年春夏のオートクチュールから。photos:Mariko Omura
左: グレ。1960年オートクチュールのカクテルドレス。 右: アライア。2017年秋冬オートクチュールのニットドレス。©️Fondation Azzedine Alaïa
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上階での展示を鑑賞する際には、壁に開いた丸窓を覗くことを忘れないように。窓の向こうに広がるのは、アライアが亡くなるまで毎日休みなく仕事をしていたクリエイションスタジオだ。この展覧会を機に公開されるようになった。
左: 赤いモスリンジャージーのトップとスカートのセットはアライアの2004年秋冬プレタポルテ。上階ではグレの写真とともにドレスを展示。 右: 中央の大きなフード付きのドレスは『フィガロの結婚』のためのアライアによる舞台衣装。2013年の製作。photos:Mariko Omura
左: グレ。ドレープしたビュスティエのレモンイエローのドレスは1973年頃のオートクチュール。 右: 中に入れないものの亡きアライアの貴重な仕事現場が見学できる。photos:Mariko Omura
会期:開催中~2024年4月7日
Fondation Azzedine Alaïa
18, rue de la Verrerie
75004 Paris
開)11:00~19:00
無休
料金:10ユーロ
www.fondationazzedinealaia.org
editing: Mariko Omura