Hot from PARIS いまパリで起きているコト パリの食品ロス対策、パンもアップサイクルが新しい。

Paris 2024.01.06

パリでいま注目の出来事を、パリ支局長の髙田昌枝がリポート。


フランス人にとって日本の冷やご飯に匹敵するのは、硬くなったパンだろう。夕食で残ったパンは、トーストして翌朝のタルティーヌにしたり、オーブンでこんがり焼いてクルトンやパン粉に姿を変えて料理に使われてきた。ご存じのように、フレンチトーストはフランス語でパンペルデュ、失われたパンという意味で、定番のリサイクルレシピだ。こんなふうに家庭ではおばあちゃんのレシピで再利用できるパンだけれど、食品ロスの世界では劣等生。フランスで1年間に生産されるパンのうち10%近くに当たる15万tが売れ残るといわれ、製造者側からユニークな対策が始まっている。

売れ残ったパンを酵母代わりに使ってビール造りを始めたのは、幼なじみのシャルロット・ドゥゾンブルとアマンディーヌ・ドゥラフォン。オーガニックパン屋さんと提携したアーティザナルなビール造りが好評だ。5年前に立ち上げたココミエットは、すでに12tのパンをアップサイクル、18万6500Lのビールを送り出した。

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グルノーブル近郊でビール造りを始めたシャルロット(左)とアマンディーヌ(右)。成功を手に、パリ近郊に進出。
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現在はオーガニックビール6種を提供中。

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ボルドーのエンジニアが6年前に開発した機械、Crumbler(クランブラー)もパンのアップサイクルにひと役買っている。残ったパンをこの機械で粉に変え、クッキー種やパン種に混ぜるアンチガスピ(ロス対策)レシピを提案するパン屋さんは、いまや450軒以上。人気パティシエ、クリストフ・ミシャラクの店でもクランブラーが活躍中。軽くグリルした前夜のパンから得た粉だけを使ったパン・マランは、中はしっとり、皮はクリスピーで香ばしい。アップサイクルでしか得られない風味が自慢の人気アイテムだ。  

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クリストフ・ミシャラクのパン専門店は10区に。
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グリルした前日のパンの粉が原料なだけに、生地はダークな色味。「Pain Malin」1㎏10ユーロ
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フランスのテレビ局M6のリポーターに、クランブラーでのアップサイクルを説明するミシャラク(右)。
La Boulangerie de Christophe Michalak
60, rue du Faubourg Poissonnière 75010
www.boulangerie-michalak.com

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さらにこの夏、高感度のパリジャンが多く住む11区にセカンドハンドのブーランジュリー、ドゥマンが誕生した。東パリで評判のパン屋さんと提携し、売れ残ったパンを買い取る。日持ちのする田舎パンのタイプはそのまま破格で提供する一方、食パンに具を挟んでホットサンドに仕立てたり、ヴィエノワズリにハチミツをかけて再びオーブンに入れたり、さまざまなアイデアで前夜のパンをグレードアップする。7月に10店舗だった協力店は、10月末には17店舗に増加している。

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一日中客足が絶えないドゥマン。20時までの営業だが、売り切れで早じまいすることも多い。
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クロワッサンを潰してハチミツをかけて焼いた「Smash」1.50ユーロ
Demain
133, rue Saint Maur 75011
Instagram:@demainboulangerie 

400㎡以上のスーパーで売れ残り食品の廃棄が禁止され、寄付が推奨されてから5年。コロナ禍で減速していた食品ロス対策が急激に進化するいま、主食であるパンのアップサイクルはさらに広がりそうだ。

●1ユーロ=約159円(2023年12月現在)

*「フィガロジャポン」2024年1月号より抜粋

text: Masae Takata (Paris Office) 

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