まだ間に合う! フォンダシオン ルイ・ヴィトンの『マーク・ロスコ』展は4月2日まで。
Paris 2024.02.28
昨年10月18日にフォンダシオン ルイ・ヴィトンで開催が始まった『マーク・ロスコ』展。フランスでの彼の回顧展は1999年以来ということもあり話題を呼んでいる。世界各地から集められたマーク・ロスコ(1903~1970年)の作品115点を展示する展覧会で、この会場あってこその見せ方が素晴らしくリピーターも少なくない。4月2日まで続くので、まだの人はぜひ!
フォンダシオン ルイ・ヴィトンで4月2日まで開催中の『マーク・ロスコ』展。photos:Mariko Omura (右)© 1998 Kate Rothko Prizel & Christopher Rothko - Adagp, Paris, 2023
展示は年代順で1930年代に制作された初期の作品から始まる。日常生活からのテーマでニューヨークの地下鉄はじめ都会の中の光景といった、マーク・ロスコの名に結びつくカラーフィールド・ペインティングと異なる具象絵画にまずは驚かされる。30年代後半に彼は具象を放棄し、インスピレーションを神話やシューレアリスムに求めた絵画を制作するように。地下の2つ目のギャラリーに入ると、我々が知るロトコの抽象絵画へといたる1946年からの初期の作品を見ることができる。大きな縦長のフォルムに2分割、あるいは3分割構成で長方形の色が重なるようになり、彼が作品にタイトルをつけずナンバー形式をとるようになったのは1949年だ。
地下のギャラリー1より。街の情景を描いていた1930年代後半。photo:Mariko Omura © 1998 Kate Rothko Prizel & Christopher Rothko - Adagp, Paris, 2023
左: マーク・ロスコ『セルフポートレート』(1936年)。現在息子が所蔵している。 右: マーク・ロスコ『ポートレート』(1939年)。色の分割が背景に見られる。photos:Mariko Omura © 1998 Kate Rothko Prizel & Christopher Rothko - Adagp, Paris, 2023
マーク・ロスコ『Slow Swirl at the edge of the Sea』(1944年)©️1998 Kate Rothko Prizel & Christopher Rothko - Adagp, Paris 2023
ギャラリー2より。"古典的"と呼ばれる作品の初期。1940年代後半から1950年代。photo:Mariko Omura © 1998 Kate Rothko Prizel & Christopher Rothko - Adagp, Paris, 2023
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地上階のギャラリー4から11まで、広い会場内で1950年代から1970年で自殺を選ぶまでに彼が描いたカラーフィールド・ペインティングと来場者たちはじっくりと対峙できる展示方法がとられている。1956年から彼が使う色は暗めとなり、より瞑想的作品へと向かう。最後のギャラリー11では、ピンク、赤、オレンジといった鮮やかな色も彼は亡くなるまで忘れていなかったことを証明する作品を展示。
ギャラリー4。左から右へ、マーク・ロスコ作「No.13 White, Red and Yellow』(1958年)、『No.9/ No.5/ No.18』(1952年)、『Green on Blue(Earth -Green and White』(1956年)、『Untitled』(1955年)©️1998 Kate Rothko Prizel & Christopher Rothko - Adagp, Paris 2023
展覧会を締めくくるギャラリー11。photo:Mariko Omura © 1998 Kate Rothko Prizel & Christopher Rothko - Adagp, Paris, 2023
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見逃せない特別感があるのは、たとえばギャラリー5の『シーグラム壁画の壁画』だろうか。ミース・ファン・デル・ローエが建築監督したシーグラム・ビル内の「フォーシーズンズ・レストラン」のために1958年に依頼された壁画である。場所と一体化する作品創りに興奮したものの、自身のプロジェクトのエスプリにはそぐわない場所であると理解した彼は、1959年に契約を廃棄して作品を自分の手元に残すことにした。1969年、テート・ギャラリーにそれらを寄贈。テート・ギャラリーに生まれた「ロスコ・ルーム」同様に、ギャラリー内に9点をまとめて展示。作品に囲まれて、彼が願ったイメージに思いを馳せてみよう。
真紅の色合い。ギャラリー5の『シーグラムの壁画』。photo:Mariko Omura © 1998 Kate Rothko Prizel & Christopher Rothko - Adagp, Paris, 2023
小さなギャラリー7では、1960年という早い時期にロスコとのコラボレーションで常設展示室を捧げたフィリップ・コレクションの3点を鑑賞できる。作品が床に近い位置に掛けられ、和らげられた照明で、そしてじっくりと絵を鑑賞できるようにと中央にベンチを置くこと。これが彼の希望だったそうだ。時間があるなら、ぜひベンチに腰掛けてみよう。
ギャラリー7「フィリップ・コレクション」photo:Mariko Omura © 1998 Kate Rothko Prizel & Christopher Rothko - Adagp, Paris, 2023
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「ブラック&グレー、ジャコメッティ」と題されているのはギャラリー10だ。1969年から1970年に掛けて黒とグレーのシリーズを手掛けたロスコ。フォンダシオン内の天井の高いこの会場で、そのうちのいくつかの作品がアルベルト・ジャコメッティ彫刻作品を囲むように展示されている。上が黒、下がグレー。1作品を除いてどれも黒とグレーを閉じ込めるように白い粘着テープで囲まれている。なぜジャコメッティの作品が会場に配置されているのか? 1969年に新しいパリ本部のためにとユネスコから注文があったものの彼が諦めた作品は、ジャコメッティの作品とともに展示されるはずだったことから、そのイメージに近い環境がフォンダシオン内に作り出されたのだ。
ギャラリー10「Black and Gray, Giacometti」 © 1998 Kate Rothko Prizel & Christopher Rothko - Adagp, Paris, 2023
なおアメリカのヒューストンにある有名な「ロスコの礼拝堂」については、不規則な八角形の模型が展示されている。この内部で鑑賞できるのは14点の黒系の作品だ。このチャペルはテキサスに移住したコレクターのフランス夫妻ドミニクとジョン・デ・メニルによる。1960年に彼らはニューヨークでロスコのアトリエでシーグラム壁画を見て、建築予定のチャペルのための購入を彼らは申し出た。しかしロスコは新しい作品を描くことを希望し、1964年にblackformsのシリーズをスタート。将来のチャペルと同じサイズの3面の壁を新しいアトリエに作らせたロスコは、建築家のフィリップ・ジョンソンに四角ではなく八角形に図面を書き換えるように提案し、そして作品14点についての展示場所も指定した。1967年にプロジェクトを降りたジョンソンからユージェヌ・オーブレに建築家が代わり、ロスコが了承したオーブレの設計図でチャペルは完成する。しかし彼はそれを待たずに亡くなってしまった。
ロスコの礼拝堂。photos:Mariko Omura
会期:開催中~2024年4月2日
Fondation Louis Vuitton
8, avenue du Mahatma Gandhi 75116 Paris
開)10:00〜20:00(月、水、木、土、日) 10:00〜21:00(金)
休)火
料金:16ユーロ
www.fondationlouisvuitton.fr
editing: Mariko Omura