ブロンズの動物が寓話を語る、ガブリエル・グレイスのスカルプチャー・ジュエリー。
Paris 2024.03.10
イソップやラ・フォンテーヌでおなじみの寓話。動物が主人公で教訓が込められた物語である。この世に240もあるという寓話の中から選んだ18作をテーマにしたジュエリー・コレクション「Fables Etcetera(ファーブル・エトセトラ)」をパリ・ファッションウィークで発表したのはGabrielle Greiss(ガブリエル・グレイス)だ。これはマルテイーヌ・シットボン、ソニア・リキエル、クロエといったフレンチブランドの仕事をしていた彼女による、ブロンズを素材にした初のクリエイション。発表会場に彼女が選んだのは9区にひっそりとあるキャビネ・ドゥ・キュリオジテ風のギャラリー・ドゥ・ピエール・マリーだ。
ガブリエル・グレイスによるジュエリーのファーストコレクション「Fables Etcetera」。photos: Camille Vivier
ミステリアスな雰囲気のギャラリーの壁に18のフレームが並び、各フレームがひとつずつ寓話を物語るという趣向。パピエ・マシェのフレームはニューヨークをベースにするアーティストThomas Engelhartによるもので、ガブリエルは寓話ごとにジュエリーを5セット創り、そのうち1セットをフレームとともにアートピース的に販売する。狐とコウノトリ、カラスと狐、ウサギとカメそしてカタツムリ、ライオンとネズミ、猫とネズミ、狼と子羊、2頭のヤギ......フレームの中でブロンズの動物たちがワンシーンを物語っている寓話は日本でも耳にしたことのあるものがほとんどだ。動物の形を彫る、表情を見つけるといった作業をガブリエルはおおいに楽しんで、コレクションを準備したという。輝いて見える動物の目には宝石がはめ込まれているのかと思いきや、ジュエラー的仕事ではなく彫刻家寄りの仕事を目指す彼女は石を用いずブロンズを彫って目に生き生きとした表現をもたらしている。
発表会場は9区のGalerie de Pierre Marieというどことなく秘密クラブ的空間。右手の壁には偶然にもピエール・マリーが描いた動物が。
Thomas Engelhartによるフレームの中で、動物たちが寓話を語っている。コレクション中、よく姿を現す動物はライオン、猿、狐など。牛はいまの時代にはあまり扱いたくないとガブリエルは語る。
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「Fables Etcetera」より。2頭のヤギのネックレス。橋の左右からやってきた2頭のヤギは譲り合うことを知らず、2頭とも川に落ちてしまったというイソップの寓話から。チェーンのデザインも複数ある。素材がブロンズなので重くなりすぎぬよう、動物によっては裏側を軽くするべくブロンズをくり抜いている。
左: 「ネズミの恩返し」。ネズミが救って恩を返すライオンはここでは爪で表現されている。 右: ブロンズの仕上げを違えた、ヒバリのブレスレットと指輪。
左: 自分の影に怯える野ウサギ。ポーズと顔の表情が素晴らしい。 右: ウサギとカメの寓話。ガブリエルはそこにカタツムリも加えた。
左: ピアス。一羽は耳からチェーンでぶら下げるペンダントタイプ。もう一羽は耳たぶにつけるスタッズピアスだ。 右: カラスの口から落ちるチーズを待つ狐。物語を1本のネックレスに。
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子どもに語って聞かせるものの、どこかダークな面が潜んでいる寓話。18のフレームの中には、物語の中に潜む自然界の持つ怖さが感じられるものもあった。スカルプチャー・ジュエリーと呼びたいガブリエルのファーストコレクションは、20世紀半ばにブロンズの詩人と呼ばれたリン・ヴォートランや動植物の世界をテーマにしたジュエリーをクリエイトしたクロード・ラランヌといったアーティストの仕事を思い出させる、パワフルかつポエティックなジュエリー。次のコレクションを早くも心待ちにしてしまう。
ファーストコレクションのビジュアルを撮影したのは、写真家のカミーユ・ヴィヴィエ。ルー・ドワイヨンの息子やスタイリストのカミーユ・ビドー・ワディントンの息子とそのガールフレンドなど個性的なキャラクターの持ち主が、モデルとしてこのファーブル・エトセトラの世界観にひと役買っている。photos: Camille Vivier
左: カミーユ・ヴィヴィエによる写真が発表期間中、ギャルリー・ドゥ・ピエール・マリーのウィンドウに飾られた。 右: ガブリエル・グレイス。photo: Camille Vivier
Instagram: @gabrielle.greiss
editing: Mariko Omura