Hot from PARIS いまパリで起きているコト パリでSUVを減らす計画が進行中。パリジャンの反応は?

Paris 2024.04.12

昨年、レンタル式電動キックボードに「NON!」を表明したパリ市の住民投票が日本でも大きく報道された。この時に脚光を浴びたパリ市民の声が、今年に入って再び、大きな話題を呼んでいる。

テーマはSUV(スポーツ用多目的車)。駆動性とアウトドアやファミリーに適した収納力を持つSUVはフランスでも大人気だが、今回の投票は、SUVをパリから減らす戦略として路上駐車の特別料金を設定する法案の是非を問うものだ。というのも、市によれば「自動車の売上40%を占めるSUVは、大気汚染や安全性、公共スペースの公正な分配に多数の問題を投げかけている」から。一般車の3倍という特別料金の対象となるのは、サイズも重量も大きい1.6t以上のガソリン車とハイブリッド車、2t以上の電気自動車。投票時に提示されたのは、市の中心部の路上駐車料金を1時間18ユーロ(約2,934円)とする料金規定だ。

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路上駐車スペースが減っていく中、サイズの大きいSUVは車2台分のスペースをとっているのかも。

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2月4日に行われた投票の結果は、賛成票が54.55%。しかし、パリの有権者約137万5,000人に対して投票率は5.68%だった。たった5%強の投票結果を法案施行の盾にするのはどうなのか? 市が意図的にSUV排除のための情報を与えているのでは? 税金集めのためでは? などの批判の声も上がった。また、富裕層が多いといわれるパリ西部で反対が過半数を超えた一方で、環境問題にも敏感なボボ層が多いといわれる10、11、18〜20区では70%以上が賛成票を投じたのも象徴的で、同じ市内でも温度差が大きい。

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市のインスタグラムより。2月4日の投票を呼びかけるポスターは「SUVをもっと多く? 少なく?」のスローガン。
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富裕層が多いといわれる西パリとボボが多い東パリで、投票結果がくっきり。

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10年ほど前から、パリ市は市内の路上駐車スペースを意図的に減らし、さらに近年では専用レーンを導入して自転車を奨励し、市内の制限速度を基本的に時速30kmとするなどして大気汚染対策を進めてきた。市によれば2004年以来、交通セクターによる温室効果ガスの排出量は60%減少したという。今回のSUVに対する特別駐車料金は、今年9月1日から適用される予定。今後も自動車専用の環状線の制限速度を現行の時速70kmから50kmに減速し、観光バスを街から締め出すなど、市は30年に向けて次々と対策を打ち出している。投票権を持たない周辺住民にとって車はパリに来るための交通と仕事の手段だけに、不満の声は高まるばかり。だが、パリジャンたちはメトロやバス、自転車で移動するのが当たり前。車を持たない暮らしが、パリのスタンダードになっていくのかもしれない。

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右岸の東西を貫くリヴォリ通りからは自家用車が締め出され、自転車に開放された。キックボードや電動式一輪車も行き交う。
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中心地の1区から11区の路上駐車料金は、現在1時間6ユーロ。市民投票の際に提示された料金表では、普通車は据え置き、SUVは3倍の18ユーロに。

●1ユーロ=約164円(2024年4月現在)

*「フィガロジャポン」2024年5月号より抜粋

text: Masae Takata (Paris Office) 

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